デジタル庁は2月17日、新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」を総括する報告書を公開した。感染対策に一定の効果があったと結論付ける一方、プライバシーを優先するあまり、サービスの有効性検証や改善に必要なデータが得られず、PDCAを回せない設計となっていた点などを指摘した。
総括報告書はデジタル庁と厚生労働省の連携チームが共同で作成した。2020年の開発からリリース、「接触しても通知が届かない」などの不具合修正、2022年11月の機能停止までの経緯や、利用者アンケートの結果、専門家の意見なども盛り込んでいる。
COCOAを導入した目的について報告書では「コロナ感染者との近接接触をユーザーに通知することで、人々の行動変容を促し、社会全体で感染リスクを低下させること」と説明。
その上で、利用者にアンケートをとった結果、接触通知が届いた人の約75%が「他人との接触を避ける行動をとった」と回答したという。そのため「(コロナ対策において)他人との接触を避ける一定の効果がCOCOAにはあった」と報告書では結論付けた。なお、実際に958万件の接触通知が行われたという。
一方で問題点も浮き彫りとなった。COCOAはアジャイルでの開発を目指した一方、プライバシーに配慮するあまり、PDCAを回すために必要な各種データを収集する設計がなされていなかった。例えば前述の接触通知の効果についても、利用者に別途アンケートを実施することで、初めて明らかになった。
このほか、迅速な導入を優先するあまり、開発保守運用体制が不十分だった点、国が適切な開発能力をもつCode for Japanなどのボランティア組織に発注できないなどの調達の仕組み、接触場所や時間帯がわからない仕様、COCOAのダウンロードや陽性登録が国民の義務でなかった点などについて、今後に向けての議論の余地があるとした。
報告書では、COCOAの経験を次のパンデミックに活かすために「平時でもCOCOAのようなデジタル技術を感染症対策に活用することが重要」などとまとめた。
COCOAの累計のダウンロード数は最終的に4128万7054件、陽性登録数は369万408件だった。
開発と保守運用にかかった費用は累計で約12億7000万円だった。これをダウンロード件数で割るとダウンロード1件あたり約31円であり、英国やドイツなどの諸外国と比較してもコストパフォーマンスは高かったとする専門家の意見も紹介した。
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