二つ折りケータイにデジカメ--レトロに憧れるZ世代が渇望するものとは

Jada Jones (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2023年02月17日 07時30分

 最近、Z世代の間でレトロなガジェットが流行っているという。スマートフォンを放り出し、古いデジタルカメラ二つ折りケータイなどの単機能デバイスを使う若者が増えているというのだ。物心つく頃にはPCやスマホの画面に囲まれていた世代が、最新テクノロジーの代わりに、2000年代初頭の機器を好んで使っているのは、どういうわけなのだろう。

携帯を見つめる人物
提供:Getty Images

 Z世代は、新しいテクノロジーを拒絶しているわけではない。その多くは今も毎年のようにスマートフォンを買い替えている。今のレトロブームは、加工された現実やソーシャルメディア漬けの毎日から抜け出し、猫背でディスプレイにかじりついている時間の一部を取り戻そうとする試みのように見える。

 そんなZ世代が今、2000年代初頭に人気を集めたデジタルガジェットを買い求めている。例えば2009年に発売されたニコンの1200万画素デジタルカメラ「Coolpix」、2006年に話題をさらったMotorolaの携帯「RAZR V3」のピンクバージョンなどだ。Z世代は今もスマートフォンを使ってはいるが、夜遊びに出かける時はスマホを家に残し、数時間の間、二つ折りケータイだけを持ち歩く。

 これはこの世代の若者が、たとえ一時的にでもインターネットから自分を切り離す方法なのだ。

 Z世代にとって、スマートフォンはドーパミンの分泌を促し、退屈から逃れ、社会的交流から身を隠す手軽な方法となっている。ソーシャルメディアをチェックし、ダウンロードしたゲームで遊び、他人と視線を合わせないために時間を調べるふりをする。スマートフォンはZ世代に安心感を与えてくれる存在だ

 初期のソーシャルメディアは、遠く離れた場所にいる友人や家族と連絡を取るためのツールだった。しかし多くの人にとって、現在のソーシャルメディアは誤情報があふれ、荒らしがのさばり、他人の加工された完璧な人生を見せつけられる場となっている。

 戦争、悲惨な自然災害、大規模な社会不安など、常に悪いニュースにさらされてきたZ世代は、世界に前向きな変化をもたらすことを自分の責務だと感じていることも多い。署名運動を始め、クラウドファンディングを盛り上げ、社会問題や政治問題への意識を喚起することは、この世代の本質的な特徴と言える。

 しかし、来る日も来る日も大量の情報や要求に対応していると、次第に神経がすり減ってくる。場合によっては、心の健康を損なうかもしれない。一部の若者がスマートフォンを手放し、一休みしたいと考えても不思議ではないが、この休みも長くは続かない。

 スマートフォンには、ディスプレイに次々と表示される通知をミュートする機能がある。「おやすみモード」や「フォーカスモード」と呼ばれるものだ。しかし、こうした設定は「オフラインになれない」というZ世代が抱える根本的な悩みを緩和してはくれない。

 Z世代の中でも、特に1997〜2003年頃に生まれた人々は、レトロなガジェットを使うことで、この問題に対処しようとしている。この年齢層の若者は、親が使っていた二つ折りケータイやビデオカメラといった2000年代初頭の電子機器を懐かしい思い出として記憶している。

 この若者たちはテクノロジーとともに成長した世代であり、自分の成長がデバイスの進化と重なっている。その多くは15歳頃に初めて自分の「iPhone」――「iPhone 3G」を手に入れた。その前は「LG Optimus Slider」や「BlackBerry Curve」を使っていた人が多い。

 一方、若いZ世代のほとんどは10歳頃にはスマートフォンを与えられている。スマホの時代に生まれ、ソーシャルメディアのアルゴリズムに取り込まれながら育ったこの世代には、最近のiPhoneの記憶しかなく、iPhoneなしの生活など想像もつかない。

 同じZ世代でも20代と10代とでは、テクノロジーとの付き合い方もまったく違うようだ。デジタルの重荷から逃れる手段として、昔のテクノロジーに目を向けているのは主に年かさのZ世代だ。

 We Are Socialのリサーチ・インサイト部門を率いるPaul Greenwood氏は、年かさのZ世代は絶妙なタイミングでこの時代を生きているという。同氏はBBCの取材に対し、若者は20代になると「自分の青春時代を象徴する文化」を懐かしむようになると語った。

 筆者は先ごろ、ソニーの有名な音楽プレーヤー「ウォークマン」の最新型に関する記事を書き、Z世代はこの新製品に関心を持つかもしれないと指摘した。このデバイスは、今の若者たちのレトロな美意識にかなうからだ。

 さらに60~80年代に子ども時代を送った人々も、この新型ウォークマンに懐かしさを覚え、興味を持つかもしれないと書いたものの、この記事への反応を見る限り、高い年齢層の読者は現代風にアレンジされた、しかもはるかに高額なものを購入するほど当時のウォークマンを懐かしくは思っていないようだ。

 筆者が指摘したZ世代がデジタルウォークマンに興味を持つ理由は、高い年齢層の読者の共感を得られなかった。こうした読者たちは、ソーシャルメディアをチェックせずにスマートフォンで音楽だけ聴くことは難しくないと言う。スマートフォンの通信機能を使って、音楽ストリーミングサービスを利用することも楽しんでいるようだった。

 インターネットを生活から排除したいという欲求は、Z世代に特有のものなのかもしれない。この世代を悩ませているメディアの過剰摂取をX世代に分かってもらうためには、Z世代にとってのスマートフォンとソーシャルは、X世代にとってのテレビと24時間放送のニュースのようなものだと言えばいいだろうか。いや、もっと有害だ。

 Z世代にあてはまらない読者は、ドゥームスクローリング(スマートフォンなどで悲観的な情報を延々と読んでしまう行為)がもたらす影響をそれほど深刻に捉えていないのかもしれないし、ネット上に存在するあらゆる情報にアクセスできることが、いかに精神に大きなダメージを与えるかを理解していないのかもしれない。スマートフォンとソーシャルメディアの普及によって、驚くほど多くのZ世代が孤独や社会的孤立ネットいじめ睡眠障害、スマホ依存を経験していることに気付いていないのかもしれない。

 何はともあれ、一部のZ世代がテクノロジーの使いすぎは有害だと認識しているのは称賛に値する。多くの若者が、スマートフォンを片時も手放さないといって叱られているが、この習慣は率直に言って、危険ですらある。

 Z世代にエールを。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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