LIFULL「未来志向のサービスを作る」未来デザイン推進室R&Dグループとは

 LIFULLには少し先の未来を見据えた住まい探しに取り組む部署、LIFULL 未来デザイン推進室 リサーチ&デザイングループがある。ARやVRを駆使した、新たな物件探しの方法を生み出したり、駅近や間取りではなく、ウェルビーイングの観点から住む場所を探し出したりと、従来とは異なる観点から物件探しをサポートする。

 この部署がなぜ生まれ、LIFULLの中でどんな役割をはたしているのかをLIFULL 未来デザイン推進室 リサーチ&デザイングループ長の山崎晴貴氏と研究員の細谷宏昌氏に聞いた。

LIFULL 未来デザイン推進室 リサーチ&デザイングループ長の山崎晴貴氏(左)と研究員の細谷宏昌氏(右)
LIFULL 未来デザイン推進室 リサーチ&デザイングループ長の山崎晴貴氏(左)と研究員の細谷宏昌氏(右)

未来デザイン推進室リサーチ&デザイングループの役割

――未来デザイン推進室 リサーチ&デザイングループが設立された経緯を教えてください。

山崎氏:元になっているのは、ネクスト(現LIFULL)時代に吸収合併した東京大学発のAIベンチャーであるリッテルです。当時からAI研究に特化していたほか、不動産領域におけるVRの活用を視野に入れていたりと先進的で、それを母体にしつつ、現在はさらに活動範囲を社会課題にまで広げて取り組んでいます。

――不動産会社の中にはなかなかない組織だと思いますが、社内的な立ち位置というのは。

細谷氏:プレゼンスの向上などが主な目的になりますね。

山崎氏:LIFULLという会社自体が未来志向の面白い取り組みをする会社と感じてもらえたらと思っています。そういったきっかけを作ることで、LIFULLと一緒に何かやりたいと思ってくれる人や企業が増えたらうれしいです。ですから自分たちが取り組んでいる仕事を、社内外に広く知ってもらうために発信していくのが役割ですね。

 私たちは、少し先の未来がどうなったらいいのかを考えて仕事をしています。そういう意味では夢があるというか、先取り感がある仕事になっていますね。

細谷氏:例えば、ARはテクノロジーとして注目されていますが、部屋探しに使うという発想はまだそれほど身近ではない。でも私たちは「Finding Serendipity」というARプラットフォームのパブリックテストを開始しています。このように先んじて取り組んでおけば、スマートグラスが一般化し、ARが日常的に使われる時代が当たり前になったときに、より早く、精度の高いARサービスを提供できる。このあたりが事業的には一番のメリットかなと感じています。

――少し先のテクノロジーを取り入れながら、この1年間ですでに3つのサービスを公開されていますね。

山崎氏:2022年は、先程お話した、ARを使ったFinding Serendipityのほか、Androidアプリ「空飛ぶホームズくんBETA」(空飛ぶホームズくん)と「VALUES MAP」の3つのプロジェクトを成果として出せました。空飛ぶホームズくんがVR、VALUES MAPがウェルビーイングをテーマにしています。

 空飛ぶホームズくんは、3Dの街を自由に飛び回り、シームレスにバーチャル内見ができるVRサービスで、バーチャル内見の3Dモデルは、平面の間取り図から3Dの部屋を生成する技術を使い、自動生成しています。

 研究自体は4~5年前からスタートしていて、開発の背景にはいつでもどこからでもバーチャルで部屋探しができる未来を作りたいという思いがあります。遠い場所への転勤や海外からの部屋探し、身体的に移動が難しい方など、気軽に内見ができないという人も多いと思います。バーチャル上で内見が簡単に済ませられる選択肢があれば役に立ちますよね。それを現時点で実現できたのが、空飛ぶホームズくんです。

 空飛ぶホームズくんに似た領域になりますが、2022年12月にリリースしたのがFinding Serendipityです。これは、ユーザーが残した街の魅力やその時の感情を蓄積し、風景と重ねて表示することで、ひとりでは見つけられなかった偶然を見つけられるARプラットフォームで、日常の街歩きから理想の住まい探しまでをシームレスにつなぐ、AR時代の新しい「住まい探し」として位置づけています。

細谷氏:開発のきっかけは、スマートグラスが普及した未来でどのように街歩きをサポートし、住まい探しにつなげていけるかということ。パブリックテストではスマートフォンを使用していますが、企画の原点はスマートグラスでの使用を前提にしています。

 街歩きの途中で出会った出来事を画像や動画、その時に感じた感情をスタンプや音楽でその場所にアンカーとして、位置情報、撮影角度と共に記録できることが特徴で、初めてその街に訪れる人でも、アンカーを頼りに楽しい場所、気になる場所を訪れられます。

 こうした街の情報は暮らしている人、訪れたことがある人にしかわからない部分なので、ガイドブックで探しても、ウェブで検索しても見つからない。街歩き中にその街が気に入れば、周辺の物件を簡単に検索できるなど、住まい情報の提供を提供することで、新しい家探しの形になればと思っています。

 あらかじめ、猫足バスタブや防音室付き、アイランドキッチンなど趣味や好みを登録しておくと、合致した物件の近くに来た際には、メイン画面に通知が来るような設定もできますし、LIFULLの特許技術である3D間取りシステムを使って、部屋の大きさをARで並べて比較ができるなどの機能も備えています。

――一方、VALUES MAPは家探しとは少し違った文脈のサービスに見えます。

細谷氏:ウェルビーイングをキーに考えたサービスになります。例えば、表参道や銀座はウェルビーイングが高い人が集まる街という印象がある。ただ、自分がそこに引っ越したときに幸せになるかどうかはわかりませんよね。現時点では自分にとってウェルビーイングな街を探せるツールがないんです。そこが開発のポイントになりました。

 VALUES MAPでは、人が持つ価値観を、世界価値観調査で用いられている「シュワルツの価値観理論」に基づき10種類の「VALUES」として分類、キャラクター化。自分と同じVALUESたちがどのように街で暮らしているのかを見て、街を見つけられるようにしています。

 多くの人にとって住む街を選ぶのは、交通の利便性や店舗や病院などの施設が整っているかなどを基準にしていると思いますが、ウェルビーイングが高い街という選び方もできると良いのかなと。幸せに暮らせる街を探せるツールとして提供しています。

最先端のテクノロジーが「当たり前になったら」と考えて作る

――今までにない価値観で部屋探しができるツールですが、お客様の反応はいかがですか。

山崎氏:いずれもプロトタイプとして提供しているので、限られたお客様からの反応になってしまいますが、良い印象をいただいている感じはしますね。物理的に街に紐づいた情報を持っているので、駅からの距離や間取り、築年数など、物件に対するスペック以外での家探しをサポートできます。

――かなり先進的な取り組みですが、グループ内の体制は。

山崎氏:リサーチ&デザイングループには3名が所属していて、実際の開発は外部パートナーと共同で行っています。各プロジェクトは、ゼロベースで作っているわけではなくて、今ある最先端のテクノロジーが「当たり前になったら」と考えて作っていくケースが多いですね。

細谷氏:基本は仮説から想像を膨らませていくような感じです。ただ、スマートグラスやVRなど、ハードウェアはすでに登場しているものなので、ありえるかもしれない未来予測くらいの位置づけのものが多いかもしれないですね。もう一つ目指しているのは、日常的に使うサービスになること。不動産情報だけですと、引っ越しする時など接触のタイミングが限られてしまうので、日々使ってもらえるような仕掛けを取り入れたいと思っています。

――今後の展開を教えて下さい。

山崎氏:2022年は3つのプロジェクトを形にできたので、できるだけ多くの方に見ていただいて、協業できるような事例をさがしていきたいですね。形にできたことで、共感を得られやすいかなとは思っています。

細谷氏:Finding Serendipityは地域に人を呼び込めるツールだと思っているので、住民を増やす施策として鉄道会社などと組めると面白いですね。また、VALUES MAPは、ほかでは持っていないデータなので、行政サービスなどと連携すると新たな展開が生まれそうだなと思っています。私たちだけでできることは少ないので、外部パートナーの方と協力してやっていけるそういう体制をつくってきたいと思っています。

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