未来の話のようだが、宇宙空間を舞台にした投資が活況を呈している。大手企業や科学研究機関は、無料インターネット接続の開発、GPSシステムの強化、気候変動の監視、さらには現実離れした一般相対性理論におけるアインシュタイン方程式の分析など、時には奇抜なさまざまな理由で人工衛星を軌道に送り出そうと積極的に競い合っている。
しかし、人類が技術的に進歩を続ける一方で、専門家らはある大きな問題について懸念を深めている。それは、人類による汚染が宇宙という新たな領域にまで広がってしまったということだ。米航空宇宙局(NASA)によると、2021年の時点で、地球の重力圏内には軌道上のデブリ(いわゆる「宇宙ゴミ」)が2万7000個以上あったという。それ以降、SpaceXだけでもさらに数百基の衛星を軌道上に送り込んでいる。
通常、装置の利用が終了すると、地球の軌道上にあったものが軌道から外れて最終的に大気圏で燃え尽きるまで、科学者らは待つしかない。しかし、この自然のプロセスには非常に長い時間がかかる。
そこで、欧州宇宙機関(ESA)は宇宙への壮大な夢に向けてよりクリーンな未来を切り開くために、アルミニウムでコーティングした革新的なセイル(帆)のプロトタイプ開発を強化すると発表した。この装置を衛星と一緒に軌道に乗せることで、衛星をいつでも軌道から外せるようになる。
このコンセプトは「Drag Augmentation Deorbiting System」(ADEO)と呼ばれる制動セイルで、2022年12月末には、この種のものとしては最小のセイルが、最後のデモミッションを成功させている。
簡単に言うと、ESAは3.5平方mのセイルを、10cm四方のびっくり箱のようなものに収まるまで折りたたんだ。それから、この部品を「ION Satellite Carrier」と呼ばれる民間開発の宇宙船に取り付けた。IONは、2021年6月30日にSpaceXのロケット「Falcon 9」で打ち上げられた。
そして2022年12月にセイルが展開され、X字型に配置された4本のカーボン補強アームに固定された銀色のポリアミド膜が現れた。これにより抗力が増し、衛星の軌道高度の低下が加速するため、地球の大気圏で燃え尽きる最終的な破壊が早まる。
プロジェクトを監督したESAの構造エンジニアTiziana Cardone氏は、プレスリリースで次のように述べている。「『Drag Augmentation Deorbiting System Nano』(ADEO-N)セイルにより、衛星は約1年3カ月で確実に大気圏に再突入する。本来なら、再突入まで4年から5年かかるだろう」
ESAは、衛星が軌道を外れて大気圏に突入するのをそっと支援するこの銀色のセイルを「天使の羽」と表現している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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