サステナビリティ(持続可能性)はTravis Senterさんにとって、それがIT業界の流行語になるずっと前から最重要課題だった。
Senterさんの家族はこの60年間、アーカンソー州北東部の2万エーカー(約81平方km)の土地でトウモロコシ、綿、大豆、米を栽培してきた。家族は毎年、より少ないものでより多くのことを行えるよう努力を重ねていると、Senterさんは述べた。その目的は、土地を改良し続け、今後何世代にもわたって栽培が続けられるようにすることだという。
「誰もがサステナビリティについて、あたかも新しいことであるかのように語る」と、SenterさんはCESでのインタビューで述べた。「私たちはそれをずっとやってきた。農家なら誰でも同じことをやっている。やらなければ生き残れない」
サステナビリティは間違いなく、2023年のCESにおける流行語の1つで、ITの最大手から小さなスタートアップまですべての企業が、自社製品にサステナビリティに関連するメリットがあることを宣伝していた。パキスタンの洪水やカリフォルニア州の山火事など、異常気象による災害頻度が増加したことで、気候危機の影響に対する認識は高まっている。その結果、CESの開催期間中、参加企業はサステナビリティを支持する姿勢を示し、基調講演で再生プラスチックの利用に触れたり、家庭のエネルギー効率化につながるシステムを披露したりした。
企業各社は早速、自社の取り組みを発表している。環境保護を目的とした共同開発で提携しているサムスンとPatagoniaは、シャンプーなどの消費材に含まれるマイクロプラスチックをフィルターして放出を削減する洗濯機を開発したと発表した。
一方、Schneider Electricは、同社のスマートホームエネルギーエコシステムを初披露し、その全体を統合するアプリでCES 2023 Innovation Awardを受賞した。このシステムは、消費者がエネルギーコストを削減して、最大限に効率化できるように設計されている。
知名度が高くない企業も、CESの報道陣向けイベントで、大企業に劣らぬ注目を集めた。例えば、ポータブルバッテリーを製造するJackeryは、太陽光発電機や風力発電機を披露し、4製品で同Innovation Awardsを受賞した。
米エネルギー省は、今回初めてCESでブースを出展した。同省のJennifer Granholm長官は、2035年までに国内電力で100%のクリーン電源を達成し、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにするという、Biden政権の目標について語った。
同長官は、満席の聴衆に対し、2022年に約1650億ドル(約21兆円)の被害をもたらした深刻な気象現象の原因となっている気候変動に対処し、米国のエネルギー供給が「石油独裁国家」やエネルギー資源を武器として利用する国家に依存しないために、これらの目標の達成が不可欠だと述べた。
「これは、国家安全保障の問題だ」とGranholm長官は述べた。「これは、より強力な国家としてのクリーンなエネルギー確保と、エネルギー独立性の問題である」
また同長官は、クリーンエネルギーに関連して、米国企業が活用できる数十億ドル規模の経済的機会と、無数の米国人の支援につながる新規雇用の可能性が存在することも指摘した。
最も著名な農業機械メーカーの1社であるJohn Deereは、CESで最も大きな存在感を示した企業の1社だ。従来型の農業装置を長年にわたって提供してきたことで知られる同社は近年、農家の効率改善を目指してハイテク化を進めている。
CESに出展されたのは、同社の「See & Spray」技術を搭載する大型作物噴霧器である。この技術は、カメラシステムと、作物と雑草を識別する画像認識機能を使って取り除きたい雑草のみに除草剤を噴霧し、化学薬品の使用を減らす。
同社は、「ExactShot」という新しい種まきシステムも披露した。同社によると、肥料の使用量を60%以上削減できるため、農家のコストを抑え、土壌に浸透する過剰な化学薬品の量を削減するという。
これらの改良は、環境と農家の収益性に極めて大きな効果をもたらす可能性があると、John Deereの会長兼最高経営責任者(CEO)であるJohn May氏は、米CNETとのインタビューで語った。
May氏は「これは、当社顧客と環境の双方にとってメリットのある価値提案だ」と、CESの基調講演でも述べた。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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