米国でAI弁護士が登場か--司法支援のニーズに対応、申し立てへ助言与える - (page 2)

David Lumb (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2023年01月19日 07時30分

AIに頼る

 DoNotPayが最新のAI実験を開始したのは2021年、企業が「GPT-3」に早期アクセスできるようになったときのことだ。GPT-3は、スタートアップ企業OpenAIが「ChatGPT」の開発に利用したのと同じAIツールであり、ChatGPTは、質問に答え、エッセイを書き、さらにはコンピュータープログラムまで記述できることで話題になった。2022年12月、Browder氏は自身のアイデアをTwitterで公表した。Appleの「AirPods」を着けて交通裁判所に出廷してもらったら、AIがマイクを通じて状況を聴き取り、AirPodsを介して回答例をフィードするというツイートだ。

 宣伝行為だという非難に加えて、他にも課題があることをBrowder氏は承知している。多くの州と地域では、弁護士の資格がなければ法律顧問にはなれないと定められているのだ。カリフォルニア大学アーバイン校のロースクール教授Emily Taylor Poppe氏も、DoNotPayのAIにとってこの点が障害になりそうだとしている。

 「AIはリアルタイムで情報を提供し、そこでは特定の事実に関連法を適用することになるので、法律的な助言を提供する行為とみなされるのを避けることは難しい」とPoppe氏は説明する。基本的に、AIは、弁護士免許を持たずに活動している弁護士とみなされることになる。

 AIツールには、プライバシーの問題もある。技術的な理由から、プログラムは聴き取った内容を解釈するために音声を録音しなければならないが、それは多くの法廷で禁止されている行為だ。また弁護士には、依頼人に関する秘密情報を開示してはならないという倫理に従う義務もある。情報の共有を前提としているチャットボットが、この規定に従えるだろうか。

 注意してツールを開発すれば、こういった懸念材料の多くは解消できる、とPerlman氏は話している。同氏によると、うまくいけば、AIのテクノロジーは弁護士が日常的に抱えている山のような書類作業も軽減するという。

 最終的に、チャットボットは今あるGoogleなどの検索ツールと同じくらい有益なものになる可能性がある、というのがPerlman氏の考えだ。法律に関する蔵書を物理的にかき分けて、本棚に蓄えられている情報を見つけ出す手間を省いてくれるからである。

 「弁護士が、テクノロジーを使わずに司法サービスを提供しようとするのでは、もはや不十分で、社会の司法需要に応えられなくなる」とPerlman氏は言う。AIは最終的に、害より利益の方が大きいと考えているのだ。

 DoNotPayが参加する2つのケースは、こうした議論のかなりの部分に影響を与えそうだ。その法的手続きがどこで開かれるかについて、Browder氏から回答は得られなかった。安全上の理由からということだった。

 DoNotPayも被告人も、AIを使うことについて、あるいは音声を録音することについて、判事をはじめとする法廷関係者には伝えないとしており、その点も倫理上の懸念を招いている。12月にBrowder氏がTwitterで交通違反切符を切られた人を募ったときに、これ自体が反感を呼ぶ結果になった。だが、もし発覚しても、DoNotPayが選んだ法廷は比較的寛容だろう、とBrowder氏は語っている。

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AIの支持者は、AIには法的支援を民主化する大きな可能性があると主張している。
提供:Getty Images

法律の未来

 交通違反切符に関するこの裁判が終わったら、DoNotPayはAIテクノロジーの推進を目的としたプレゼンテーション動画を作成する予定だ。最終的には、法廷でAIが認められるよう、法律と政策を変えることを目指す。

 一方、州と法律関連組織は、すでにこの問題の議論を進めているところだ。2020年には、カリフォルニア州で司法サービスの利用拡大を模索する専門委員会は、他の改革とあわせて、選出された無免許の弁護士が依頼人を代弁するのを許可するよう提言している。米法曹協会は、AIツールを使用する判事に対して、ツール自体に組み込まれているバイアスに注意するよう通達した。また、文化の保全を目的とする国際組織UNESCOでは、AIが法律制度で果たしうる役割について、基本を取り上げた無料のオンラインコースを公開している。

 AIチャットボットは、今後数年でごく一般的になるので、法廷でもいずれ許可せざるを得なくなる、というのがBrowder氏の意見だ。AIは耳元でささやくのではなく、堂々と法廷に参加するようになるかもしれない。

 「6カ月前には、AIがこれほど細かく応答できるとは想像もできなかった。どんな法律についても、これが実生活でどうなるのか、誰も想像していなかったのだ」(Browder氏)

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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