パナソニックグループは、米ラスベガスで開催しているCES 2023のプレスカンファレンスにおいて、同社の環境への取り組みや、リチウムイオン電池をはじめとする車載関連事業の現状を説明。北米市場向けAVおよび家電の新製品などを発表した。
プレスカンファレンスのオープニング映像では、気候変動問題によって、日常が変化し、重大な局面にあることを、Team Panasonicと呼ばれるトップアスリートたちによる演出で表現。水泳のMichael Phelps選手は、海辺のプールで泳いでいると、温暖化の影響で海面が上がり、海が荒れてきていることに気がつき、フィギュアスケートのNathan Chen選手は、凍った氷の上でスケートを楽しんでいると、温暖化の影響で氷にひびが入っていることに気がつく。そして、テニスの大坂なおみ選手は、テニスをしていると、干ばつの影響で、コートの地面にひびが入ってきていることに気がつくといった内容だ。
その様子をもとに、パナソニックグループが取り組むRE100化ソリューションなどの「削減貢献」への挑戦を語り、力をあわせて行動することで、その未来は変えられることを訴えた。
プレスカンファレンスのステージに登壇したNathan Chen氏は、「オリンピックであれ、人生であれ、チャンピオンになるためには目標を設定し、その目標を達成するために全力を尽くす必要がある。気候危機に関しては、科学者たちは地球温暖化を摂氏1.5度以下に抑える目標を設定しているが、現在のところ、地球の気温上昇は摂氏2.5度に達する可能性が高いと科学は示唆している。だからこそ、パナソニックと協力してこの緊急の問題に取り組む。いま行動し、協力しなければ、愛するものすべてが危険にさらされる可能性がある」と警鐘を鳴らした。
パナソニックグループは、2022年1月のCES 2022において、長期環境ビジョンである「Panasonic GREEN IMPACT」を発表。それを受けて、同年4月には、Panasonic GREEN IMPACTの取り組みを3つのインパクトに分類するとともに、2050年には、現在の世界のCO2総排出量の1%にあたる3億トン以上の削減貢献インパクトを目指す方針を打ち出した。
今回のCES 2023のプレスカンファレンスでは、この1年に渡るPanasonic GREEN IMPACTの進捗状況を紹介。さらに、製造業としての責務と位置づける「削減貢献」(Avoided Emissions)のコンセプトを強調して、地球温暖化問題の解決に向けて社会をリードしていく姿を示した。
パナソニックホールディングス グループCEOの楠見雄規氏は、ビデオを通じて、「いま、最も重要なことは、気候変動の影響に対抗する行動を起こすことである。それにより、子どもたちの未来を損なう被害を防ぎ、将来の世代に、豊かで充実した生活を回復することが約束できる」と述べ、そこにパナソニックグループが果たす役割が大きいことを強調した。
また、登壇したパナソニックホールディングス グループCTOの小川立夫氏は、「大気から3億トンの二酸化炭素が削減することは野心的な目標だが、達成可能な目標である。そのためには、バリューチェーン全体で排出量を削減する必要がある。これを『OWN IMPACT』と呼んでいる。さらに、2024年までに、全世界で37のゼロCO 2工場を展開し、自社のバリューチェーンからの排出量を16.3メガトン削減することを目指し、サーキュラーエコノミーをベースとしたビジネスモデルや製品の数を、従来の5から13に倍増することも目指す。これを『GREEN IMPACT PLAN 2024』と呼んでいる」と説明。また、Panasonic North America CEOのMegan Lee氏は、北米での取り組みとして、2019年から、Redwood Materialsと協力して、ネバダ州にある車載用バッテリー工場の廃材をリサイクルする活動を行ってきたことに触れながら、「2024年からは、新しいEVバッテリーの製造に、リサイクル銅箔を使用し、2025年からはカンザス州の新たなEVバッテリー工場でリサイクル正極活物質を使用することになる。これはカーボンフットプリントの削減にも大きく貢献する」と述べた。
ここでは、滋賀県草津市にあるパナソニックの生産拠点において、ひとつの工場を動かすのに必要な電力を、約100台の純水素5kW燃料電池ユニットと、1820枚の太陽光パネル、1MWの蓄電池を組み合わせた自家発電によって、100%賄うプロジェクトを推進していることにも触れた。小川CTOは、「2023年中には、工場やオフィス、商業施設でも稼働できるシステムとして提供し、2024年は本格的にビジネス展開を開始する」と語った。
続いてのテーマは、パナソニックグループが取り組む車載関連事業である。
Panasonic Energy of North America プレジデントのAllan Swan氏は、「今後数年間でEVの採用が大幅に増加すると予測されており、2030年までに、米国の自動車販売の半分以上がEVになるだろう。ここで課題となるのが、EVに最も重要な部品となるバッテリーの供給力である。これは、100年前から電池の研究を行っているパナソニックグループにとって、変化を起こす大きなチャンスになる」と前置きし、「2022年11月から、カンザスシティの郊外で新たな生産施設を着工している。この設備によって、生産能力は60%増加し、急増する需要に対応できる。また、すでに稼働しているネバダ州の工場では、自動化が進展しており、毎秒66個の電池が生産され、1日550万個以上を生産している。これまでに生産されたバッテリーの総数は70億個を超えている。これは年間50万台のEVの生産につながっている。だが、米国で登録されている自動車は約2億9000万台に達しており、ごく一部にすぎない規模である」と述べた。
また、移動する車内空間を快適にするために、EVに最適化した省電力型のEVオーディオシステム、空気をリフレッシュするためのポータブル型ナノイーX、Amazonとの連携による音声アシスタントの進化の3点を紹介した。
なかでも、Amazonとの連携は、パナソニックが提供する車載インフォテインメント (IVI) システム「SkipGen」のアップデートにおいて、AmazonのAlexaと、AppleのSiriの音声エクスペリエンスをひとつのシステムに組み合わせ、どちらのウェイクワードでも、AlexaとSiriの両方の音声アシスタントに同時にアクセスできるようにするものだ。
Amazon Smart Vehicles チーフエバンジェリストのArianne Walker氏は、「iPhoneの機能やCarPlayを利用するときには、Hey Siri と呼びかけ、スマートホームや車両制御などには、Alexaと呼びかけている。意識して使い分けたり、考えながら使用したりしている。Amazonの優先事項は、お客様に選択肢と柔軟性を提供することである。パナソニックとの協力は、単一のデバイスで、複数の音声APIを同時にサポートする業界初の取り組みであり、音声の相互運用性は、複数の音声サービスへの同時アクセスを提供することになり、アンビエントインテリジェンスを拡張するというAmazonの幅広いビジョンの重要な柱になる」と語った。
最後に登壇したPanasonic Consumer Electronics Company マーケテイング&エクスペリエンス担当ディレクターのMichelle Esgar氏は、北米市場向けのコンシューマー製品について説明した。
パナソニックが発表した「MultiShape」は、シェーバーやトリマー、歯ブラシなどをモジュール化し、アタッチメントにより入れ替えて使用。1本の充電式電池、1個のモーター、1個のアダプターで、さまざまなグルーミングが利用できる。「新たな設計により、資源は約60%節約でき、埋め立て地に向かう廃棄物を減らすことができる」とした。また、MultiShapeではリサイクルプログラムを用意し、これによって購入時の割引が受けられるようにするほか、Molton Brownと共同で開発したLimited Editionキットをラインアップ。カーボンニュートラルな設備で製造されたプレミアムバス製品を組みあわせたという。
さらに、フラッグシップとなる有機ELテレビの「MZ2000」シリーズは、超低レイテンシーの実現とHDMI 2.1のサポートなど、ゲーマーにとって最適なテレビになっていること、テクニクスブランドのワイヤレスヘッドフォンの新製品を2023年春に発売すること、Lumixの新製品として、25.2メガピクセルの新型Live MOSセンサーや、信号処理速度を2倍にした次世代Venus Engineを搭載した「Lumix S5 Mark II」および「Lumix S5 Mark II X」を発売することなどを紹介。加えて、HIV支援団体である「RED」に対して、パナソニックが2022年に25万ドルを寄付し、新たに2万3000ドルを寄付することを今回の会見のなかで発表。REDブランドの限定品として、MultiShapeおよび「Technics SL-100」ターンテーブルを販売することも明らかにした。
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