―Eco-Porkが提供するプラットフォームではどんなことができるのか、教えてください。
神林氏 養豚は、1kgで生まれた子豚を、半年後にはおよそ120kgにする、いわばボディビルディングのようなものです。世界で年間15~18億頭の豚を生産していると言われるなか、そのボディビルの仕方はほとんど最適化されていませんが、そこに専門人材がトレーナーのように付いて育てることで、無駄な餌を食べることなく、生産量を50%も上げることができます。
つまり、方法によっては育ちが良くなるうえ、地球への負荷も減ることがわかっているんです。ただ、世界の18億頭すべてにトレーナーを付けることはできませんから、代わりにAIトレーナーをつけて、畜産自働化パッケージにしよう、というのがわれわれの考え方です。
畜産自働化パッケージでは、豚の生育状況、餌、水、飼育環境の監視が可能です。そのためのシステムやツールとして、養豚経営・生産管理を効率化するクラウドシステム「Poker」のほか、豚舎の温湿度や二酸化炭素濃度を検知する「Porker SENSE」などのセンサー、餌、水、環境を遠隔でモニタリングするIoT機器といったものを用意しています。
また、AIで豚の状況を自動で把握する監視用カメラとして「固定式ABC(AI Buta/Biological Camera)」や、自動で天井を移動しながら撮影する「ロボット式ABC」があります。これらの監視カメラでは、豚1頭ごとに全身960箇所の特徴量を取得して3D測定し、豚の姿勢や行動を検出して、豚の体重を小数点以下まで正確に計測できるほか、体調もリアルタイムに把握できます。得た情報はPokerに連携し、体重の伸びの予測をしながら生産管理できるようになっています。
―これまでのところの実績としてはいかがですか。
神林氏 構想は5年、開発は1年半~2年かけてきた事業になりますが、実際に農林水産省様、JA様、トヨタ自動車様らと実証実験を行い、Pokerの導入だけで生産量が8~14%アップし、36万円の導入費用に対して7980万円の売上増につながるという成果を確認しています。さらにABCなどのIoT機器とAIによる実証実験も2022年と2023年の2年間かけて行っているところです。
すでにタイやベトナムなどからも引き合いをいただき、プロジェクトを進めています。2022年の世界の植物工場市場が1.7兆円とされていますが、畜産は野菜の1.5~2倍ほどの市場規模があるとされていますので、Eco-Porkとしてはデータ活用型の畜産プラットフォーム市場を2.5兆円規模にして、豚にとっても人にとっても地球にとっても最適な状況をつくっていきたいと思っています。
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