LINEは11月21日、報道関係者向けに説明会を実施。LINEの取締役CFO、Zホールディングスで専務執行役員 CGIO(Chief Global Investment Officer)、Global Business CPOを務める黄仁埈(ファン・インジュン)氏がコミュニケーションサービス「LINE」やFintech、コマース事業などの海外における現況、展望などを説明した。
LINEは現在、「CLOSING THE DISTANECE(世界中の人と人、人と情報・サービスを縮めること)」をミッションとして、ニュースやフードデリバリー、決済といったユーザーの生活を支えるさまざまなサービスを展開している。
オフィスは日本や韓国のほか、中国や香港、米国など9拠点で展開。グループ全体の社員数は9200人以上で、3300人以上のエンジニアを抱えているという。
グローバルでの月間アクティブユーザー数(MAU)は約1億9400万人で、9300万人の日本を筆頭に5300万人のタイ、2200万人の台湾、800万人のインドネシアと続く。ファン氏は「日本、台湾、タイで圧倒的なシェアを獲得できているが、その理由は3つある」とした。
1つ目は、日本とアジアのコミュニケーション文化が似ていること。「感情表現を直接的に表現することが少なく、曖昧さを残すことが多い。テキストでは伝えきれない感情や気持ちを代弁するノンバーバルコミュニケーション文化の傾向がある」とし、ボディーランゲージの代わりとなるスタンプの活用が受け入れられていると解説した。
2点目には、ユーザーがユーザーを呼ぶ「ネットワーク効果」と、その広がりを見極めた適切かつ大規模なマーケティングの実施を挙げた。
3点目の理由としては、現地に根ざした「ハイパーローカライゼーション」があるとし、「世界共通に確立化されたグローバルサービスではなく、その地域の多様な文化、関心を尊重して徹底的なローカライズを実施している。世界で一律的に同じようなサービスを展開しているグローバルビックテックとは逆の考え方」(ファン氏)と説明。立ち上げ期以降は出身者が現地法人の代表を務めるなど、現地をよく知る経営陣による運営などが特徴になると語った。
台湾とタイの具体的な展開例も紹介。LINE台湾はMAU2200万人で市場シェア第1位を獲得しており、「展開している地域の中では最も浸透率が高い。過去1年間の平均ダウンロードスタンプ数は18個で、日本の約2倍になる」(ファン氏)というコミュニケーションのほか、コマースやポイントサービスといったさまざまなサービスを展開しているという。
また、台湾独自のサービス「LINE Fact Checker」を紹介。LINE公式アカウントに真偽を確かめたい文章やサイトのURLを投稿すると4つの主要なファクトチェック組織が調査し、「フェイク」「一部真実」「真実」の3種類で判定する無料サービスを提供しているという。
LINEタイも、市場シェアは第1位。人口約6600万人に対してMAUは5300万人で、約8割がユーザーと台湾に次いで高い割合になっているという。コミュニケーションサービスのほか、日本のニュースサービスにあたる、さまざまな記事や短い動画を発信するタイで第1位のモバイルコンテンツポータル「LINE TODAY」などを提供していると紹介する。
ハイパーローカライゼーションの事例として、デリバリー、配車といった「LINE MAN」を紹介。「首都となるバンコクなどでは特に、交通渋滞が日常化している。外出して用事を済ませるハードルが高いことに加え、バイク配達が主流、屋台などの飲食店が多い」(ファン氏)などの特徴を捉え、フードデリバリーや日用品、速達郵便やタクシーなどを提供するサービスだ。
「現地のニーズに徹底的に寄り添い、現地で企画、開発、運営する、ハイパーローカライゼーションを体現する。2020年9月に飲食店検索プラットフォーム『Wongnai』を吸収合併してフードデリバリーを強化した。2020年1月から2022年8月の月間平均注文数は15倍以上に成長した」という。9月にはタイ77州全てに及ぶ70万以上のレストランと提携したほか、シリーズB投資ラウンドで2億6500万米ドルを資金調達。企業価値が10億米ドルを突破してユニコーン企業と評価され、現在はIPOを目指しているという。
今後の強化方針として、(1)銀行、(2)決済サービス「LINE Pay」、(3)コマースのほか、(4)「LINEフレンズ」などのコンテンツを扱うIP、(5)グローバルでは「DOSI」の名前で提供するNFTプラットフォームなどで展開するWeb3の5つを紹介した。
1つ目に挙げた銀行では、現地の金融企業とパートナーシップを組んで事業を展開。2020年10月にはタイで国内初のソーシャルバンキングサービス「LINE BK」を開始し、2022年9月でユーザー数が500万を超えたという。そのほか台湾、インドネシアでサービスを提供している。
ファン氏は、“手のひらの中の銀行”がスローガンと説明し、「銀行に行くのではなく、スマホの中に銀行があるという世界観。台湾では先月(10月)、損害保険代理業の許可を取得して自動車やバイク保険への参入を発表した。2021年5月に開業したインドネシアでは銀行口座を持たない“アンバンク(unbanked)層”が多い、1万9000以上の島で形成される地理的事情などから、モバイルで完結できる期待がとても高い。9月に約46万ユーザーを突破した」と説明した。
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