スペイン南海岸の半島にある英領ジブラルタルの海岸線では、第2次世界大戦で使われていた弾薬補給用の桟橋に設置された青い金属製のフローターが波に浮かび、穏やかな上下運動を再生可能エネルギーに変えている。このフローターを開発したのは、イスラエルに本社を置き、桟橋や防波堤などの人工構造物をクリーンエネルギー源に転換することを目指すEco Wave Power Global(EWPG)だ。
EWPGの開発チームによると、これらのフローターは、それぞれが設置された場所の波の状態に合わせて入念に設計されているという。例えば、波が小さいと小さなフローターが多数必要になり、上下に動かしやすくなるが、波が大きければ大きなフローターを動かせるため、必要なフローターの数は少なくなる。
その仕組みはこうだ。
フローターの動きにより、陸上に設置された青い大きな輸送用コンテナに内蔵されたアキュムレーター(蓄圧器)内部で、流体圧力が発生する。波の上昇によって生じたその流体圧力が油圧モーターを回転させる。それが発電機を動かし、インバーターを経由して送電網に電気を送る。
嵐で波が高くなりすぎると、フローターは自動で直立し、静止することで自らを保護する。悪天候が過ぎ去ると再び下降して水面に浮かんだ状態になる。
EWPGによると、フローターから送電網までのシステム全体のエネルギー変換効率は約50%だという。つまり、取り込んだ波のエネルギーの約50%を電気に変換できているということだ。ちなみに、この数字は一般的な太陽光発電の15〜20%、風力発電の20〜40%、石炭火力発電の33%より高い。
同社は現在、数カ所で定期的に電力を供給しており、今後さらに設置場所を増やしていく計画だ。2016年にジブラルタルで系統連系した発電所を初めて開設した後、現在はイスラエルのテルアビブにあるヤッファ港で2カ所目が完成しつつある。3カ所目はロサンゼルスで2023年初めに稼働する予定だ。
フローター1基あたりの発電量は、その地域の波の状態によって異なる。EWPGの共同創設者で最高経営責任者(CEO)を務めるInna Braverman氏によると、ヤッファ港のフローターは1基あたりの発電量が最大10kWhで、約10世帯分のエネルギーを賄えるという。
Braverman氏によると、EWPGは環境調査を繰り返し実施しており、環境への悪影響はなく、システム内で油圧を発生させる流体は生分解性であることを確認しているという。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス