日本電信電話(NTT)は11月15日、国産の手術支援ロボット「hinotori」を手がけるメディカロイドと共同で、手術支援ロボットとIOWNオールフォトニクス・ネットワーク(APN)を接続し、物理的に離れた環境を1つの環境のように統合することを目指す実証実験を開始したと発表した。
手術支援ロボットによる遠隔手術は、人口減少や外科医師数の減少、医療の均てん化といった社会課題の解決だけでなく、地域医療支援と若手外科医の教育・育成による医療レベルの向上にも寄与することが期待されているという。
一方で、遠隔手術ロボットの操作はネットワークの遅延やゆらぎの影響を大きく受けるため、執刀医がストレスなく、通常のロボット手術と変わらない形で遠隔手術を行えることが重要になる。また、手術中は意思疎通を図るコミュニケーションが重要になるが、長時間ヘッドホン等のデバイスの装着はストレスとなることから、デバイスを装着することなく空間環境全体の映像や音などの情報を高品質かつリアルタイムに伝送できること、さらにはバイタルデータなどの個人に関わる情報を安全かつ正確に伝送する高度なセキュリティ対策といった課題がある。
今回両社が実施する共同実証では、東京都武蔵野市のNTT武蔵野研究開発センタに大容量・低遅延・遅延ゆらぎほぼゼロの特徴を持つ、伝送距離100km以上のIOWN APN実証環境を構築した。
また、NTTが2月に発表した8K/120pに対応した超低遅延映像伝送技術を活用した非圧縮映像、コミュニケーションの阻害要因となる音のみを除去するノイズキャンセリングなどを組み合わせ、同一環境で手術しているかのような手術環境の共有に関する実証を行なうほか、量子計算機でも攻撃が困難な暗号鍵交換技術やセキュア光トランスポートネットワーク技術を利用したセキュリティ確保など、遠隔手術実現の障壁となっている各課題に対し、解決に向けた実証を行なう。
NTTは今後、本研究および技術を適用した遠隔手術支援のフィールド実証を共同で進め、遠隔医療の更なる拡大による医療の質の向上、質の高い医療へのアクセシビリティの確保に貢献するとしている。また、基盤となるIOWN APN技術の「遠隔での低遅延」「遅延ゆらぎのないリアルタイム制御」という特性を活かし、各産業分野での課題解決に活用するとしている。
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