サムスンの折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold4」の登場からまだ数カ月しかたっていないにもかかわらず、次世代機に関する記事が出始めている。韓国メディアのThe Elecによると、次の「Galaxy Z Fold5」にはサムスンのスタイラスペン「Sペン」を収納できるスロットが搭載される可能性があるという。実現すれば、メモパッドとしてさらに便利に使えるようになる。この小さいが重要な変更は、Galaxy Z Fold4の欠点の1つを解消するだけでなく、「Z Fold」シリーズを、廃盤となった「Galaxy Note」シリーズの後継と位置づけることになるかもしれない。
Galaxy Noteは2011年に登場し、今日の大画面スマートフォンの基礎を築いた。サムスンは同じことを折りたたみスマホでも成し遂げようとしている。同社のモバイルエクスペリエンス事業担当プレジデント兼責任者のTM Roh氏は、8月のイベントの基調講演でGalaxy Z Fold4と「Galaxy Z Flip4」を発表するにあたり、「わずか3年前には、このカテゴリーは存在すらしなかった」と語り、こう続けた。「このカテゴリーは今、サムスンのリーダーシップによってスマートフォンの主流に躍り出ようとしている」
The Elecの記事は、Galaxy Z Fold5にSペンスロットが搭載されると断言してはいないが、その可能性が真剣に検討されていると報じている。記事によれば、サムスンは折りたたみスマホの普及のために乗り越えなければならない重要な課題として、Sペンスロットの導入、軽量化、折りたたみ部分のシワの解消を挙げているという。2022年の世界のスマートフォン出荷台数に占める折りたたみスマホの割合はわずか1.1%との見通し(IDC調べ)を考えると、こうした課題に取り組むことは極めて重要だ。同記事によれば、サムスンはZ Fold4にSペン用ホルダーを搭載することも検討していたが、実現しなかったという。米CNETは同社に記事に対するコメントを求めたが、すぐに回答は得られなかった。
Galaxy Z Fold4とZ Fold3はどちらもSペンに対応しているが、Sペンは別売であり、本体にも装着できない。Sペンの格納場所を作ると本体の厚みが増してしまうため、実現は難しいかもしれない。しかし「Apple Pencil」を磁石で「iPad」にくっつけられるように、少なくともSペンをZ Fold 4に磁石でくっつけられるようにしてほしかった。
The Elecの記事にもあるように、これはZ Fold5でぜひとも解決してほしい点だ。利便性の問題だけではない。SペンとGalaxy Z Foldを一体化することで、折りたたみスマホの存在意義が明確になるからだ。この2年間でZ Foldと「Z Flip」シリーズは大きく進化したが、折りたたみスマホにしか解決できない問題はまだ見つかっていない。Sペンとの一体化などの一見小さな変更が、ひいてはZ Foldシリーズのターゲットユーザーや用途の明確化に大きな役割を果たす可能性がある。サムスンがZ Foldを生産性向上のためのツールと位置付けていることを考えれば、なおさらだ。
それだけではない。Galaxy Z Foldはますます、廃盤となったGalaxy Noteを彷彿とさせる存在になりつつある。機能的には、Galaxy Noteを置き換えたのは「Galaxy S22 Ultra」だ。このハイエンドスマートフォンは、Galaxy Noteシリーズの特徴だったSペンを内蔵し、サムスンの折りたたみ式ではないスマートフォンの中では最も大きい画面を有する。しかし、サムスンのラインアップにおける位置付けを考えると、Galaxy Noteの後継はZ Foldだ。
Galaxy Noteは、「Galaxy S」シリーズのような万人向けの端末ではない。むしろ、大画面や手書きメモ機能など、一般的なスマートフォンでは得られない付加機能のためなら喜んでプレミアム価格を払う人々のための選択肢だった。
Z Foldも同じだ。高額ではあるが、他のほとんどのスマートフォンにはできないことができる。この2つの機種は、スマートフォンとタブレットの体験を融合させるというサムスンの野心を象徴している。2011年に登場したGalaxy Noteには「ファブレット」という異名が付いた。当時のスマートフォンとしては異様に大きい、5.3インチの大画面を搭載していたからだ。ある意味、Z Foldはこのコンセプトを現代風に解釈した機種と言える。
Galaxy Noteが成功した理由の1つに発売のタイミングがある。当時はスマートフォンの普及により、アプリエコノミーが盛り上がっていた。人々はニュースのチェック、ゲーム、決済、タクシーの手配など、あらゆる場面でスマホに依存するようになった。スマホを使う時間が増えれば、大画面を求めるようになるのは当然だ。Galaxy Noteは、後にGalaxy Sシリーズに吸収されたことが示しているように、サムスンの高機能スマートフォンの方向性を切り開いた。
Z Foldが、Galaxy Noteと同じインパクトをもたらすかどうかはまだ分からない。サムスンはZ FoldとZ Flipの折りたたみスクリーンを有効活用するために、端末の下半分を小さなトラックパッドにするなど、折りたたみスマホに特化したソフトウェア機能を提供し始めている。しかし、こうした機能は「折りたたみスマホの存在意義は何か」という問いに十分には答えていない。
確かなのは、Galaxy Noteが残した穴を折りたたみスマホが埋めることをサムスンが期待していることだ。第2四半期の決算説明会では、折りたたみスマホの売上がGalaxy Noteシリーズを超えることを期待しているという発言も飛び出した。
サムスンが次世代の大型折りたたみスマホをこれまでと同じアプローチで開発するかどうかも不明だ。同社は「CES 2022」で新しい折りたたみスマホのコンセプト機を披露し、この種のスマートフォンの未来について、さまざまなアイデアを温めていることをほのめかした。8月、Roh氏は米CNETの取材に応じ、今後の折りたたみスマホのデザインについて、「(CESで)披露したものに加えて、いくつかの案がある」と語った。
しかし、サムスンが思い描いている未来を実現するためには、まず現在の折りたたみスマホを洗練させていかねばならない。今のところ、それはZ FoldとZ Flipに、たとえわずかな変更のように見えても、その存在価値を際立たせる改良を加えていくことを意味する。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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