NTTは11月8日、2022年度第2四半期決算を発表。売上高は2021年同期比6.8%増の6兆2862億円、営業利益は2021年同期比1.3%減の9965億円と、増収減益の決算となった。
同日に実施された決算説明会において、代表取締役社長である島田明氏が説明した内容によると、NTTデータや傘下のNTT Limitedが引き続き国内外でのデジタル化需要を取り込み好調に業績を伸ばすなどして、売上高は過去最高を記録したとのこと。一方でNTT東日本やNTT西日本などの地域通信事業が、想定を上回る電気代の高騰を受け業績の足を引っ張る形となり、減益要因へとつながったようだ。
島田氏によると、2022年度第2四半期で電気代高騰の影響はグループ全体で300億円に達し「4割くらい上がっている」とのことで、うちNTTドコモが占める割合が100億円になるとのこと。年間では600億円くらいの影響が出ることを予想しており、2022年度第2四半期はコスト削減でその影響を吸収したいとしているが「この傾向が何年も続くと、私たちのビジネスで吸収する限界も想定される」と島田氏は話している。
また今回の説明会では、ドコモの同社の2022年度第2四半期決算も公表。こちらは売上高が2021年同期比0.7%増の2兆8998億円、営業利益が0.1%増の5765億円と、増収増益の決算となっている。
その内訳を見ると、政府による料金引き下げ要請の影響によるモバイル通信サービス収入の大幅減が依然大きく影響しているが、一方で成長領域と位置付けている法人事業やスマートライフ領域が順調に伸びたのに加え、コスト効率化を進めたことにより、5億円ではあるが増益の達成に至ったようだ。
説明会に登壇したNTTドコモ 代表取締役社長の井伊基之氏によると、成長領域の1つである法人事業に関しては、従来NTTコミュニケーションズが提供してきたソリューション事業に加え、5GやIoTなどのドコモが持つモバイルソリューションやアプリケーションを組み合わせ、ワンストップで価値を提供する「統合ソリューション」を成長のドライバーと位置付け強化をしていく方針だという。
またスマートライフ事業に関しては、好調を続ける金融・決済関連事業に加え、「dポイント」を軸としたマーケティングソリューションが成長に寄与しており、2021年同期比で20%の成長を見せているとのこと。今後は決済に続く新しい金融サービスの開拓を積極化するのに加え、10月1日に設立した「NTT QONOQ」でXR事業を強化、個人・法人共にXR関連のサービス強化を進めていきたいとしている。
そしてもう1つ、今回の決算で井伊氏が明らかにしたのが「Web3」に関する取り組みの強化である。井伊氏はブロックチェーンやウォレットの提供、暗号資産の交換、トークンの発行などWeb3関連のサービスを統合的に提供し、基盤となるサービス「Web3 Enabler」を提供してWeb3の利用促進に向けた取り組みを進めていきたいと説明。既に提携しているAstar Networkに加え、新たにアクセンチュアとも提携するなど、多様な企業と連携して事業を進めていきたいとしている。
その上で井伊氏は、Web3の事業に関して「グローバルでの展開が前提。日本初でデファクト(スタンダード)を目指したい」と強い意欲を示すとともに、新会社を設立して今後5~6年のうちに5000~6000億円規模の大規模投資をしていくことも明らかにしている。それだけの投資が必要な理由について井伊氏は「スタート時にはシステム開発や雇用、買収などでどうしても初期投資がかかるし、トークンの発行などは金融業のようなものなので運転資金が出てくると思っている」と説明、「最初から小さくいくと誰も一緒にやる人が出てこない。私たちとしては本気で取り組むことを金額で示した」と話している。
主軸のコンシューマ通信事業に関しては、5Gの契約数が2021年同期比で2.3倍の1602億円に達し、「スマートフォン利用者の3割が5Gに移行済み」と井伊氏は説明。年度末までには50%に達するまで普及率を上げたいとしている。
また井伊氏は、中容量の「ahamo」や、大容量の「ギガホ プレミア」「5Gギガホ プレミア」などのプラン契約の伸びが好調で、2021年同期比30%増の1000万契約を突破したとも説明。その影響でARPUも大きく伸びており、「そろそろARPUが下げ止まる。4000円を底に、本年度中に下げ止まることを希望しているし、その予兆が出てきた」と話している。
中、大容量プランの契約が伸びている要因として井伊氏は映像のニーズが増えていることを挙げており、そのけん引役は「YouTube」だとも説明。データ通信量の推移を見ても、無料で視聴できるYouTubeの利用者層が広がっている様子が見られるそうで、「ahamoも好調だが、ギガホのユーザーがダイブ増えてそれが引っ張っている」と、大容量プランの契約が想定以上に伸びたとしている。
中、大容量だけでなく、小容量の領域を担う「OCNモバイルONE」などエコノミーMVNOも契約は好調と井伊氏は説明する。ただ楽天モバイルが0円で利用できる仕組みを終了したことで「OCN(モバイルONE)よりahamoに瞬間風速的にシフトした」と話すものの、キャンペーン施策により実質0円で利用できる期間が終了した10月時点では「あまり影響出ているようには見えない」と、既に楽天モバイルの影響は少なくなっている様子を示した。
その楽天モバイルに関連して総務省で進められているプラチナバンドの再割り当てに関する議論で、決算説明会の直前に総務省が「移行期間は5年以上」「移行費用負担は既存事業者側」という方針案を示している。その内容について井伊氏は、直前の情報ということもあり「いま初めて知った。答えは準備していない」と答えたが、一方で議論の内容を受け止め「事業者側がどう対応するかが次の課題と思っている」と説明、総務省が示した案を現実的な形で実現できるかどうかの議論が続くとの認識を示している。
同じく総務省で議論が進められている、通信障害などが発生した際の非常時ローミングに関しても言及。島田氏は総務省での議論を見守るとしながらも「スペックをあまり高めるほど時間がかかると思う」と話し、段階を区切って解決していく必要があるとした。
ただ島田氏は、通信障害時の対応が「ローミングだけで解決する訳ではない」とも話しており、KDDI 代表取締役社長の高橋誠氏や、ソフトバンク 社長執行役員兼CEOの宮川潤一らと、然るべき対応ができるよう協力しようという話をしたことも明らかにしている。
井伊氏はデュアルSIMを活用したコンシューマ向けのサービス提供に関して「直ちに新メニューを出さないといけないとは考えていないが、ひょっとしてそういう流れがあるかもしれない」と話すにとどめている。しかしながら法人向けに関してはBCP(事業継続計画)の観点から、「デュアルSIMに対応したサービスの提供をデファクト的に進めていく」とも話している。
また、いわゆる「1円スマホ」に関する問題についても島田氏、井伊氏共に言及。島田氏は「転売ヤーによる転売が最大の問題。あまり世の中にとっていいものではないと思っている」と話す一方、井伊氏は独占禁止法の観点から販売代理店の値引きまでは制御ができず、「販売店に利益を捨ててまで値引きしないようには言えるが、『いくらで売れ』とは言えないのが実状」と話す。
ただ井伊氏も「新品を中古より安く売るのは信じられない」と話し、大幅値引きには否定的な立場を取っているが、「他社がやればやり返すというのが業界の商習慣」とし、やはり1社で解決するのは難しいとも説明。その解決策として端末と回線をセットで販売する手法の復活に言及しており、端末と回線のセットで大幅値引きを展開していた以前の状況に戻すのではなく、一定のルールを決めた上でセット販売を復活させることにより、転売ヤーの問題を解消していく必要があるとの考えを示した。
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