「Starlink for RV」レビュー--十分な速度と安定性、設定も驚くほど簡単

Greg Nichols (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 編集部2022年11月11日 07時30分

 数カ月ほど前から、マリーナの近辺で空をじっと見上げる長方形の物体を見かけるようになった。船着き場では、「もう手に入れた?」とささやき合う声が聞こえる。人々の興奮が伝わってくるようだ。

 SpaceXの衛星通信サービス「Starlink」の提供が始まってしばらくたつが、目下、船や冒険を愛する人々の注目を集めているのが「Starlink for RV」だ。このサービスは、海や山で週末やバカンスを過ごす人々が抱えている多くの問題を解決してくれる。

 海岸やキャンプ場はWi-Fi環境が悪いことで有名だ。電波塔が少ない上に、集合住宅に遮られてスマートフォンが使えないことも多い。有線ブロードバンド環境があるマリーナも減った。(RV車と同様に)船は移動を前提としているが、ほとんどのインターネットプランは違う。

 Starlinkは、すでに海上専用プラン「マリタイム」を提供している。しかし、ハードウェアの初期費用が1万ドル(約147万円)もする上に、使用料として毎月5000ドル(約73万5000円)がかかる。この価格設定を見る限り、マリタイムのターゲット顧客は高級ヨットや貸切ボートのオーナーであって、庶民ではない。

 マリタイムプランの契約者は、赤道以北で陸をはるかに離れた海上でもインターネットを利用できる。これは不穏な国際情勢下でも豪華ヨットを手放さずに済んでいるロシアのオリガルヒなど、富裕層にとっては朗報だろう。

 それ以外のユーザーのために、SpaceXは米国、カナダ、メキシコの沿岸部と内陸部を広くカバーしたRVプランを用意している。ハードウェアの初期費用は599ドル(約8万8000円)、月額使用料は135ドル(約2万円)と価格も良心的だ。サービス対象地域内なら、どこに行ってもインターネットを利用できる。

 筆者はロサンゼルスのヨットハーバー、マリナ・デル・レイに浮かぶ船――第2次世界大戦時代に作られた帆船「リンディ号」で暮らしている。この辺りはネットワーク環境が貧弱で、ボートの愛好家たちはそれぞれに工夫しながらインターネットに接続してきた。立地や周囲の建物のせいでLTE通信も安定しない。電波ブースターが効果を発揮することもあるが、絶対ではない。

 筆者の船がある辺りは人が多く、ネットワーク回線は常にひっ迫しているようだ。屋内ではWi-Fiが利用できるが、遅い上に安定しない。かといって船着き場に有線環境はない。唯一の選択肢として、小さなISPがこの地域で最も背の高い建物の1つに設置された電波塔から見通し(LOS)内通信を提供しているが、月額130ドル(約1万9000円)もする上に、回線速度はダウンロードが6~10Mbps、アップロードは1Mbpsも出ないことが多い。

 高すぎると思う人もいるだろう。私もその一人だ。毎月、請求書を見てはうんざりする。となれば、同等の価格でより高速な接続サービスを利用できるというStarlink for RVを試さない理由はない。

仕様

キャプション

仕組み

 SpaceXが地球低軌道に打ち上げた通信衛星はすでに数千基に上り、その数は今も増え続けている。利用者は地上に設置したアンテナで信号を送受信し、衛星から送られた信号はStarlinkのWi-Fiルーターに送られる。

 StarlinkのRVプランは5月にリリースされた。このプランの問題は、住宅用プランと違って住所を必要としない一方で、住宅用プランよりもサービスの優先順位が低いことだ。つまり、ピーク時には他のプランの利用者が優先的に接続される。また、ポータビリティ料金が毎月25ドル(約3600円)かかり、月額料金は総額135ドルとなる。筆者の場合、599ドルのハードウェア代に加えて、カリフォルニア州にあるマリナ・デル・レイまでの送料が約50ドル(約7000円)かかった。

 長期契約の縛りはなく、サービス内容に満足できない場合は、1カ月以内ならハードウェアの初期費用分は返金される。現在、RVプランの契約者に送られるのは第2世代のモーター付きアンテナだ。より高額なマリタイムプランの契約者には最新の高性能アンテナが出荷されている。このアンテナにはモーターがなく、水平に設置される。

第2世代のモーター付きアンテナ
第2世代のアンテナは想像しているよりも大きいかもしれない
提供:Greg Nichols/ZDNET

サービス対象地域

 下のマップは、この記事を書いている時点でのRVプランのサービス対象地域だ(最新情報はこちらを参照)。最も恩恵を受けるのは米国、カナダ、メキシコに住み、この地域内での旅行を計画している人だろう。南米では対象地域が限られるが、チリ、ブラジル南部、コロンビアのメデジンでは利用可能だ。オーストラリアや欧州西部もかなりカバーされている。

 旅行者の視点から見ると、(RVは車載タイプなので当然だが)カバー範囲はかなり広い。筆者は船上で暮らしているので、サンタクルーズ島やサンタカタリナ島などのチャンネル諸島を含む、南カリフォルニアの沿岸部が広くカバーされていることはうれしい。この地域はスマートフォンの電波が届かないことが多いので、界隈のボート乗りにとっては画期的なサービスだ。

Starlink RVのサービス対象地域
Starlink RVのサービス対象地域
提供:Greg Nichols/ZDNET

セットアップ

 Starlink for RVのインパクトは、接続キットを開けた瞬間から体験できる。セットアップが簡単なのだ。しかも、驚くほど。

 接続キットに入っているのは、金属製のX型スタンド、十分な長さのケーブルがついた長方形のアンテナ、Wi-Fiルーター、電源コード、そしてセットアップ方法が簡潔に図解されたカードだ。プラスチック製の梱包材の間に必要なものが無駄なくきっちりと入っている。その他には分厚い説明書も、たくさんの取付け金具やネジの袋も、コードやアダプターの類もない。

 付属の台座にアンテナをはめ、空との間に障害物がない場所に設置する。ケーブルのルーター側には密閉性を高めるガスケットがついており、ルーターをしっかり差し込めばハードウェアのセットアップは完了だ。まずはルーターの位置を決め、アンテナの設置手順をしっかり覚えたい。アンテナの常設ポールがあればなおいいが、まだない。

 アンテナは100-240VのACコンセントを必要とする点に注意しよう。つまり、RV車を蓄電池なしで走らせる予定なら、インバーターか発電機が必要になる。消費電力については後述する「速度と安定性」を参照してほしい。

 Starlink for RVはアプリから操作する。LTEサービスが使えるうちに、すべての設定を済ませておきたい。まずはStarlink Wi-Fiネットワークに接続する。後はアプリに従ってセットアップや設定を進めるだけだ。アプリが空をマッピングし、障害物がないかを教えてくれる。最初のセットアップは10分ほどかかったが、その後はハードウェアさえ揃っていれば5分程度でアンテナを起動できた。

Starlink for RVのアプリの画面
提供:Screenshot by Greg Nichols/ZDNET

 残念だったのは、持ち運び用のケースがないことだ。船内に大きな段ボール箱を置いておくスペースはない。これはRVやキャンピングカーでも同じだろう。Starlink for RVは持ち運ぶことを前提としているのだから、機材を保護する専用のケースがあってもよかったと思う。当面はダッフルバッグで間に合わせるが、長期的にはもっといい方法を考えるつもりだ。

船上でStarlink for RVを設置する著者
船上でさえStarlink for RVの設置は簡単だった
提供:Greg Nichols/ZDNET

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