UR、築60年の団地を最新IoT住宅に--居住可能でデータ取得の実証実験へ

 UR都市機構と東洋大学情報連携学部(INIAD)は10月31日、IoTやAI等を活用したモデル住戸「Open Smart UR」を報道機関向けに公開した。カメラやセンサーなどを複数備え、実際に生活することで、データを取得し、新たなサービスにつなげる。

モデルルームを作った旧赤羽台団地エリアにある登録有形文化財の保存住棟(中層階段室型住棟)
モデルルームを作った旧赤羽台団地エリアにある登録有形文化財の保存住棟(中層階段室型住棟)

 モデル住戸は、東京都北区にある旧赤羽台団地エリアに用意。登録有形文化財の保存住棟(中層階段室型住棟)において、1、3階に2部屋ずつ、計4部屋を整備した。旧赤羽台団地内の築60年の建物をリノベーションしており、間取りを大きく変更した「カスタマイズモデル」と一般的なUR賃貸住宅にスマート技術を取り入れた「ベーシックモデル」の2タイプをそろえる。

 Open Smart URは、INIADとUR都市機構が団地でのIoT、AI活用の共同研究をテーマに取り組んでいるもの。代表はINIAD学部長/東京大学名誉教授の坂村健氏が務める。「Open Smart UR研究会」も発足し、現在、不動産会社や建設会社など67社が名を連ねる。

 カスタマイズモデルは、子育て世代を想定した「101号室」と高齢者夫婦向けの「102号室」を用意。39平方メートルというコンパクトな住居内に100以上のセンサーを備え、住民の移動や動きを認識できるほか、体温や温度ムラなども検知。水道流量、ガスメーター、電力計なども装備する。

各種センサーなどは天井付近に設置していた
各種センサーなどは天井付近に設置していた

 各種操作は、AIスピーカーを使った音声認識やタブレットなどからでき「スイッチなどはほとんどない状態」(坂村氏)とスマートな操作を徹底する。リビングにはコンピュータ制御で椅子からベッドに変わる「変身家具」を設置。就寝モードを選ぶと照明などが暗くなるほか、間仕切りが電動で動きベッドスペースが出てくる仕掛けだ。

間仕切りを動かすことで、ベッドになるほか、ワークスペースも確保できる
間仕切りを動かすことで、ベッドになるほか、ワークスペースも確保できる

 「壁に収納できるベッドなど欧米では採用されている住宅もあるが、日本ではあまり見かけない。今回は39平方メートルという限られたスペースに家具を配置するのに、変身家具がとても有効だった。しかし手動で動かすのはとても大変。コンピュータ制御することで、簡単に使えるようにした」(坂村氏)と工夫を凝らす。

 バスルームの照明オン、オフや水道は手をかざすだけで操作できるなど、タッチレスを徹底。子育て世代には洗面所、子ども部屋、リビングを回廊状に配置し、子どもが動ける空間を確保。高齢者夫婦向けには塗り壁を採用するなど、造りにもこだわる。

キッチンなどの水道は手をかざすと水が出てくるタイプ
キッチンなどの水道は手をかざすと水が出てくるタイプ

 玄関にはドアを二重で配置し、2枚目のドアは全面を宅配ボックスへと変更。大きな荷物も受け取れるほか、地域の商店などと連携し、クリーニングなどもここで受け渡しができるように考えているという。

 ベーシックモデルは、水回りを中心にリノベーションした「301号室」と水回りを変えず、和室などの造りをいかしたままリノベーションした「302号室」をラインアップ。いずれも、URが持つ賃貸物件で多くリノベーションされているモデルをイメージしたとのことで、それらの物件にIoTを入れることを想定して作られたという。301号室には42個、302号室には36個のセンサーを備える。

一般的なUR賃貸住宅にスマート技術を取り入れた「ベーシックモデル」
一般的なUR賃貸住宅にスマート技術を取り入れた「ベーシックモデル」
タブレットからも操作できる
タブレットからも操作できる

 全室、生活モニタリング住戸と位置付け、実際に人が暮らし、データ取得を目的にしているとのこと。今後は、12月5〜23日に企業、行政、学校関係者などを対象に内覧会を実施するほか、2023年1月中旬には一般のユーザーにも見学会を実施する予定。さらに約1年間は実際に暮らしてもらうことを想定しており、関係者などから住民を募る。なお、1組につき1〜2週間の居住を想定しており、家賃などは無料としている。

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