松竹の「MR歌舞伎」を体験--見どころをHoloLens 2に字幕表示、音楽やエフェクトも

 松竹は複合現実技術の1つであるMR(Mixed Reality)を用いて歌舞伎を鑑賞するコンテンツを開発し、大阪松竹座で行われている10月歌舞伎公演で実証実験を行った。観劇中にマイクロソフトのMRヘッドセット「Microsoft HoloLens 2」を装着し、舞台の進行にあわせて登場人物紹介や見どころを字幕で表示したり、音楽、エフェクトを追加したりすることで、これまで歌舞伎を観る機会がなかった幅広い層でも楽しめるようにするのが狙いだ。

提供:松竹
提供:松竹

 今回、実証実験が行われた公演「日本怪談(Jホラー)歌舞伎 貞子×皿屋敷『時超輪廻古井処(ときをこえりんねのふるいど)』」は、歌舞伎「播州皿屋敷」とリングシリーズ「貞子」がコラボする異色作で、古井戸を通して現代と過去が時空を超えて交錯する新作歌舞伎である。片岡愛之介氏と今井翼氏が出演する舞台は、早変わりをはじめとする伝統的な歌舞伎の演出にプロジェクションマッピングを加えるなど、作品そのものが挑戦的な内容であった。

実証実験が行われた大阪松竹座
実証実験が行われた大阪松竹座
実証実験の演目は歌舞伎と現代劇を融合させた新作
実証実験の演目は歌舞伎と現代劇を融合させた新作

 本実証実験は令和4年度日本博イノベーション型プロジェクト補助対象事業として、10月3〜25日の上演期間中、10月17〜24日にかけて実施され、メディア関係者、一般応募者、外国人の方たちがそれぞれモニターとして参加した。全3幕で構成されるうち、1幕目は通常のスタイルで観劇し、2幕目の前にHoloLensを装着し、3幕目までそのまま観劇する。着席前に別室でHoloLensの操作説明が行われたが、筆者が参加した会に参加した10人はほぼ全員がスムーズに装着できており、観劇中も問題なく操作できていたようだ。

観劇前の説明会
観劇前の説明会
幕間の装着も問題なくできていた
幕間の装着も問題なくできていた

 コンテンツの多くはテキストベースで、登場人物の紹介や内容の解説、歌舞伎独自の演出について説明が表示される。音声ガイドと字幕ガイド(G-marc)を制作するイヤホンガイドが字幕を担当したこともあり、文字量やタイミングは適切でわかりやすく、観劇のじゃまにならない位置に、日英併記もしくは切り替えて表示された。また、義太夫狂言と呼ばれるストーリーに節をつけて語る竹本は、声の抑揚にあわせてエフェクトを付けるといった演出の工夫もあった。

表示画面のイメージ(提供:松竹)
表示画面のイメージ(提供:松竹)
竹本は演奏者がいる位置にテロップを演出しながら表現されていた
竹本は演奏者がいる位置にテロップを演出しながら表現されていた

提供:松竹


 観劇中は特にデバイスを操作する必要はなく、音声も最初の設定のまま使うようになっていた。歌舞伎は素人なのでガイドのおかげでいろいろなことがわかり、退屈することなくあっという間に観賞が終わったという印象だ。2幕から3幕まで約2時間近く装着し続けるので、本体が熱くなるのではないかと心配していたがそうした問題は全く、舞台に集中できていたためか心配していたVR酔いも無かった。

 ただし、舞台は生ものなので、セリフの長さや演者の立ち位置が毎回変わるためか、ビジュアル効果を表示するCGがややズレているように見えるところもあった。実はそうした調整が最も難しいポイントで、初日直前ぎりぎりまで調整を重ねたという。表示のタイミングを手動にすることでクリアしているが、脚本そのものが変更される時もあり、ライブでは当たり前のそうした問題にどう対応していくかが、今後の課題なのかもしれない。

 今回の実証実験を担当する松竹 事業開発本部 イノベーション推進部 新事業共創室 マネージャーの富田剛史氏は、「これまでもネットやアプリ、AR、NFTなど新しく登場するデジタル技術と歌舞伎のコラボに取り組んできたが、いよいよ通常の歌舞伎舞台にも取り入れられるようになってきた」と言う。インバウンドの拡大やバリアフリーにつながるだけでも歌舞伎を知る機会が増え、そこからまた新しいアイデアが生まれることも期待できる。

 「400年以上ライブエンターテインメントを続けてきた歌舞伎の演出技術がベースにあるので、新しく登場するデジタル技術を組み合わせてもブレることはない。デバイスの性能が上がれば演出できることも拡がり、今は課題となっている表示のタイミングを自動化したり、観客にあわせて選べるようになったりするだろう。メタバースが注目される一方でライブの良さも見直されており、ますますチャレンジのしがいがあると考えている」と富田氏は語る。

 松竹は本実証実験のシステム開発を担当したカディンチェと共同で、最先端技術を活用した次世代エンターテイメントを開発するMiecle(ミエクル)を2018年に設立している。2022年1月には研究開発拠点となる「代官山メタバーススタジオ」を開設し、ライブとバーチャルの融合に向けて実験的な作品づくりを行っており、そこでの成果を取り入れた歌舞伎がこれからまた披露されるかもしれない。

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