若者に話を聞くと、コミュニケーションが大きく変化していることに気付かされることが多い。利用しているサービスも利用の仕方も異なっているのだ。今回は、若者におけるコミュニケーションの変化について解説したい。
知り合ったばかりの大人同士、小中学生同士が連絡先として交換するのはLINEが多いのではないか。しかし、大学生は「知り合ってすぐにLINE交換を求められたら引く」という。
「LINEはそんなに見ない」は、多くの学生が言う言葉だ。利用率は100%近いし、家族との連絡用などに利用はするが、利用頻度はそれほど高くない。「あくまでプライベートな連絡ツールだし、知り合ったばかりの人とは基本交換しない」
大学生は入学前にTwitterで大学垢を作り、「#春から○○大」で同級生とつながる。親しくないうちはTwitterでやり取りする。
プロフィールのリンクはInstagramのアカウントであり、「親しくなったらInstagramで」などと書いてあることが多い。しかもほとんどは鍵がかかっている。メインのコミュニケーションツールはInstagramであり、日常のことはストーリーズに投稿し、個別のやり取りはダイレクトメッセージ(DM)だ。LINEの出番はほとんどないのだ。
「親しくてもLINEを知らないこともあるし、少なくともいきなりLINE交換はない。バイト先の店長とか年上の人はいきなりLINE交換を求めてくるから、正直イヤ。シフトの連絡とかで必要だから交換するけど、本当は交換したくないし引いている」
若者のコミュニケーションの特徴の一つは、「つながりっぱなし」だ。リアルタイムでのやり取りを好み、プライベート意識も大人世代とは異なっている。
その1つが「Zenly」だ。Zenlyでは友だちとしてつながった相手同士、居場所やその場所にいる時間の長さ、移動速度などがわかるようになっている。そのため、見るだけで大体の相手の状態がわかるのだ。「ずっと自宅にいるから暇そう」「この時間にまだ学校だから部活中かな」「バイト先だから忙しそう」など、相手の状態を察して連絡するかどうか決めるというわけだ。
大人世代はいくら親しくても現在地や自宅の正確な場所を共有したいとは思わないが、若者は「便利だから、効率的だから」という理由で共有する。プライベート意識も大人世代とは異なっているのだ。
「インスタでいつも誰がログイン中か確認している。ログイン中の相手にはすぐにDMとか送っちゃう」とある学生はいう。Instagramでログイン中かどうか確認できることをご存知だろうか。InstagramのDM画面とストーリーズ閲覧者画面では、オンライン状況が確認でき、アイコンに緑の丸がついていたり、「オンライン中」などと表示されたりしていることがある。ログイン中の相手であればすぐにリアクションが期待できるというわけだ。
「家にいる間中、『Discord』で友だちとつながりっぱなし、話しっぱなしだったりしますよ」という学生もいる。Discordは最近特に人気が高く、コミュニケーションしやすいと利用する学生が増えている。
電話が苦手で、バイト先にかかってきた電話に出たり、自分から電話をかけたりすることも得意ではない。はじめからSNSやスマホで直接相手と連絡がとれる環境が当たり前の中で暮らしてきたため、誰が出るかわからない電話が「怖い」のだ。
欠席や遅刻などの連絡は、メールやSNSではなく電話でするのがマナーと考える大人は多い。一方若者は、相手の反応を敏感に察するため、反応によって傷つくことも避けたいと考えている。そのような嫌な連絡こそむしろSNSでしたいと考えるため、大人世代とすれ違うというわけだ。
自分の都合が良いときに相手をすればいいSNSとは違い、電話は突然相手の時間を奪うものであり、効率も悪い。世代的には、効率重視であらゆることにコスパを求める傾向も強いため、その意味でも嫌われがちだ。動画などでも長いと待てないし、わかりやすくテロップでポイントだけ知りたい。面白い要点だけ“切り抜き動画”や“ファスト映画”で楽しみたいという傾向も強いのだ。
SNSネイティブ世代のため、大人世代と比べてオンラインとオフラインの差がほとんどないことも特徴的だ。ネットでの知人友人が多く、「ネットのみの友だちもリアルの友だちも同じ」と考えがちだ。一緒にいる友だちに目の前でSNSの返信をされても気にしないことが多いのだ。
ネットがメインコミュニケーションツールなので、ネット用語が当たり前となっており、最近の流行語ランキング上位にもネットで流行ったり、YouTuberがきっかけで流行ったりした言葉が多く入るようになっている。
経済的に停滞している時代に育ち、効率性を求め、儲け話や投資に興味がある若者たち。しかし一方で、好きなものには惜しみなく使い、推しを持って日常を楽しむ力がある。
時代とともにコミュニケーションも変化している。一番敏感に察知して変化しているのは若者たちだ。若者たちの変化から学ぶことも多いのではないだろうか。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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