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子どものゲームやSNS依存を防ぐために--保護者が覚えておきたい「ネット制限機能」設定のコツ

 2019年にWHOによってゲーム依存は病理と認定された。近年は、未成年のネット依存やゲーム依存が問題視されている。運営会社も、次々とネット利用制限機能やペアレンタルコントロール機能を出している。iOS端末にはスクリーンタイム機能、Android端末にはデジタルウェルビーイング機能、SNSなどの各サービスにも利用制限機能やペアレンタルコントロール機能が搭載されている。もはや常識とも言える利用制限機能、ペアレンタルコントロール機能をご紹介していきたい。

ゲームやSNSは繰り返し、長時間の利用を収益に

 ゲーム依存は、ただゲームを利用していてなるわけではない。成績不振や人間関係のトラブルなどから逃避的にゲームを利用するようになり、ハマっていくことが多い傾向にあるのだ。現実世界は努力すれば報われるとは限らないが、ゲームはやればやるほど強くなり、受け身でも楽しめる。ゲーム内に人間関係等ができることで長時間利用につながり、不登校などにつながったりするというわけだ。

 ゲームやSNSなどのサービスは、そもそも繰り返し、長い時間利用したくなるように作られている。運営会社は民間企業であり、それが収益に直接つながるためだ。たとえば新着通知、フレンド関係、ログインボーナス、期間限定のコラボガチャ、新しいイベントなどによってユーザーは繰り返し、長時間利用するようになる。

 大人でもそのようなものに振り回される人は多いことを考えると、子どもがハマってしまうのはある意味当然と考えるべきだ。生活や健康などに支障がない範囲でコントロールして利用できるようになるまで、保護者が利用を見守るべきだろう。特に使い始めのときには制限機能を活用したり、声掛けをしたりすることなども効果が高いので、ぜひ取り入れてみてほしい。

制限機能、ペアレンタルコントロール機能活用を

 代表的な利用制限機能、ペアレンタルコントロール機能をご紹介していこう。保護者が一方的に入れるのではなく、まず子どもと話し合い、利用時間の長さなどを決めてから、利用し始めのときに設定するのがおすすめだ。利用状況や発達段階などに合わせて、話し合いながら随時見直すようにするといいだろう。

 iOS端末の「スクリーンタイム」機能では、利用時間の長さや終わりの時間などが設定できる。課金制限やアプリのダウンロード制限、通知制限などが可能だ。

 通知があると見てしまうという人は多いので、「集中モード」で「おやすみモード」のオンとオフの切り替えや、仕事や睡眠等の集中モードプロフィールを設定し、相手への状況共有などもできる。要らないアプリはホーム画面から隠すこともできるので、誘惑が抑えられるだろう。

 Android端末では、「デジタルウェルビーイング」機能が使える。アプリごとの利用時間制限などができ、時間になったら通知が表示され、アイコンがグレーアウトする。電話やメールの受信をミュートにした上で、画面上に不要な情報を表示しないモードもある。

 Instagramでも、「FamilyCenter」を通じてペアレンタルコントロール機能を提供している。Instagramは10代の子どものメンタルに悪影響を与えると言われている。偏った投稿を見続けることで、過剰なダイエットや拒食症などになる若者もいる。そこでこの機能を使えば、子どもがInstagramを利用した時間の長さを確認し、利用時間の制限も可能だ。

 警察庁発表によると、Instagram経由で成人と未成年が知り合い、性被害等につながる例が増えている。その場合もこの機能を使えば、子どものアカウントのフォロー、フォロワー関係を把握し、変化があった場合は通知を受け取れる。同時に、子どもが他のアカウントを通報した場合に通知を受け取ることも可能なので、見守りに活用するといいだろう。

 TikTokもInstagramと同様に10代のメンタルへの悪影響が指摘されたことがあるが、やはりペアレンタルコントロール機能が利用できる。不適切なコンテンツの視聴制限、ダイレクトメッセージの制限、アカウントや投稿動画の公開範囲制限、1日あたりの利用時間制限などが可能となっている。

 10代に人気の「フォートナイト」を運営するエピックゲームスでも、ペアレンタルコントロール機能が用意されている。ゲーム内でやり取りができるソーシャル機能の制限、課金制限、プレイ時間の報告機能などがあるため、子どもと話し合って設定するといいだろう。オンラインゲームでも長時間利用だけでなく、知り合った相手に誘拐される事例や高額課金トラブルなどが起きているので、このような機能をうまく取り入れると安心だ。

 ほかにもさまざまなアプリなどで、未成年向けの制限機能が用意されている。子どもに利用させる前に、そのアプリでのリスクを調べ、子どもと約束を決めてから利用させるようにしよう。同時に、子どもに利用させるアプリではどのような制限機能が用意されているのかについて調べ、設定してから利用させるのが大切だ。

 ネット制限は世界中で強まっている。たとえばフランスでは、法律で幼稚園や小中学校などでのスマホの使用が禁止されているなど、制限しようとする動きはさまざまな国で生まれている。

 中国では、週末や祝日などに限定して、未成年者へのネットゲームサービスの提供を1日1時間までとしている。ただし一部では、ゲームのアカウントをレンタル、販売しており、アカウントのレンタルや購入をすれば無制限でオンラインゲームがプレイできるなどの抜け穴もあるという。

 どのような制限も完璧ではないが、少なくとも決めたことは行動指針にはなるし、リスクを意識する効果にもつながる。ぜひこの機会に、親子でリスクや適切な使い方について話し合ってみてほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

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