アドビは10月18日、19~20日にオンラインとリアル会場のハイブリッドイベントとして実施する「Adobe MAX 2022」で披露するさまざまな技術革新を発表した。
19日にはAdobe MAX 2022で配信した日本向けキーノートや一部セッションなどを「Adobe MAX Japan 2022」として東京のリアル会場で開催し、アドビ 常務執行役員 兼 CMO 里村明洋氏がキーノートに登壇。写真編集管理ソフトウェア「Adobe Photoshop Lightroom」の機能強化、3Dモデリングツール「Adobe Substance 3D Modeler」の提供開始など、日本市場向けにイベントの概要などを伝えた。
3Dデザインを作成、探求、提供するためのアプリ、コンテンツやサービスなどを構成する「Adobe Substance 3D Collection」では、「Adobe Creative Cloud」との統合を強化。Substance 3Dのマテリアルがそのまま「Adobe Photoshop/Illustrator」で活用できるようになった。
アセットをデジタル化して3D用に加工する「Adobe Substance 3D Sampler」の最新バージョンでは、AIとフォトグラメトリ(写真測量)技術を使用して一連の写真から簡単に3Dモデルを作成するフォトグラメトリツール「3D Capture」(ベータ版)を追加。一連の写真をアプリにドラッグ&ドロップするだけでSubstance 3D Samplerが被写体を背景から抽出する。テクスチャ付き3Dモデルの生成が可能だ。
4月28日にベータ版としてリリースした、アイデアを3Dで表現したいアーティストやプロダクトデザイナー向けのVR・デスクトップ併用型のモデリングツールとなるSubstance 3D Modelerは、正式版をリリース。デスクトップPC上の制作環境とVRヘッドセットとコントローラーによる制作環境とのシームレスな切り替えに対応するとともに、ジェスチャー操作による3Dアセット制作ワークフローを提供する。
Substance 3D Modelerで作成した作品は、「Adobe Substance 3D Painter」に書き出してのマテリアルやテクスチャの追加、「Adobe Substance 3D Stager」でのレンダリングなどに対応するとしている。
また、Creative CloudとSubstance 3D Collectionを組み合わせれば、これまでよりもずっと手軽に3D制作を始められるという。例えば、Photoshop/Illustratorには、最初からさまざまなAdobe Substanceマテリアルが含まれており、Substance 3D Collectionをクリエイティブワークフローに追加することで、「Adobe Substance 3D Assets」を経由して1000以上の追加の3Dマテリアルとモデルにアクセス可能だ。
そのほか、従来型のスタジオ撮影やロケに伴う二酸化炭素排出や資源消費の抑制につながる新ツールとして、「Adobe Substance 3D Sustainability Calculator」もリリースした。
Appleとの取り組みでは、「M1/M2」シリーズを含む「Appleシリコン」へ正式に対応した。Substance 3D Collection利用時のスピードと安定性が向上する。
「iOS」デバイスでは、ARコンテンツを制作できる「Adobe Aero」ベースのエクスペリエンスが「App Clip」に対応。視聴者がアプリをダウンロードしなくてもARエクスペリエンスが高速に表示できるようになった。App Clipへの対応で、Adobe AeroはアーティストがiPhone上でARコンテンツを最も高速に作成、提供できる手段のひとつになると説明している。
Metaとの取り組みでは、Substance 3D Modelerと近日提供予定の共同作業用レビューアプリを、「Quest」プラットフォームに直接統合する計画を発表。「Meta Quest VR」ヘッドセットのユーザーであれば、誰でも没入型3Dコンテンツを制作、共有、体験することが可能になるという。今後数年にわたり、新しいVR環境対応のドキュメント生産性ワークフローなど、より多くのSubstance 3DテクノロジーをMeta Questユーザーに提供していく予定だ。
里村氏は、今回のアドビの3D向けアップデートについて、「例えば今、(平面で)イラストを書いたりデザインしたりしている人が3Dのデザインもとなった時、すごい簡単にできるようになった」という。メタバースの盛り上がりなどに伴う立体的なコンテンツの増加に合わせ、3Dモデルの生成のしやすさ、Photoshop/Illustratorとの連携のしやすさなどで対応した形だ。
また、正式版をリリースした3D Modelerについて、「VRでより細かく、使いやすいところにこだわれるようになった。プロの方々の細かい成形にも対応できる」とつけ加える。よりこだわれる環境と、3Dに挑戦しやすい環境を整えることで、メタバースをはじめとする市場の盛り上がりに貢献すると語った。
19日には、アドビが主導するコンテンツ認証イニシアチブ(Content Authenticity Initiative:CAI)における、ニコンとのパートナーシップについても発表。ミラーレスカメラ「ニコン Z 9」に「来歴記録機能」を搭載し、機能を盛り込んだモデルを参考展示した。
いつどこでどのように撮影されたかを含む、画像の来歴情報を撮影時に写真へと付与可能で、デジタル作品の信頼性の確立が期待できる。デジタルコンテンツのライフサイクルの過程で混入する可能性のある「誤った情報」や「虚偽の情報」の拡散防止につながるという。ただし、開発中の機能であり、発売中のニコン Z 9への搭載予定はないとしている。
Adobe MAX Japan 2022ではそのほか、HIKAKIN氏、はじめしゃちょー氏といったクリエイターのマネジメントなどを事業とするUUUM(ウーム)との連携の強化や、レアル マドリード ファンデーション フットボールスクール ジャパンと実施するサッカー動画編集コンテストの実施といった日本向けの展開も発表した。また、Adobe MAX 2022のオンラインセッションとして配信したチームラボ、篠原ともえ氏のセッションなども実施した。
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