JR東日本は10月13日、上野駅で開催する文化創造イベント「超駅博 上野」の一環として、「AR車両フォトスポット」を公開した。
超駅博 上野は、10月14日~30日に上野駅内外で開催するイベント。駅を単なる通過する場所ではなく、「つながる」場としてのプラットフォームへ転換する「Beyond Stations 構想」の一環として、文化や歴史、まちとつながる場の提供を掲げている。今回は新潟・佐渡を対象地域とし、新潟県内の観光スポットや文化を紹介する展示を用意している。
今回のイベントで開催するAR車両フォトスポットは、同社が実証実験として展開するもの。かつて上野駅を発着した車両を3Dモデルで再現し、ARであたかも実物の車両が目の前にいるかのように楽しめるという内容だ。
ARの題材として選ばれたのは、かつて東北本線や高崎線などで活躍し、JR東日本では2022年3月に引退した電車「115系」と、ブルートレインをけん引していた電気機関車「EF64形」。いずれも新潟に縁がある車両で、かつては上野駅にも乗り入れていたことがある。
AR体験には、スマートフォンを使用。会場エリアで、端末にインストールしたKDDIのアプリ「XR CHANNEL」を起動すると、画面内に車両が現れる。ライトが点灯したり、実際の車両の音が聞こえたりという仕掛けもある。また、115系については、実物では難しい、車両を下からのぞき込むような表示も可能だ。
今回のAR体験に関わったのが、ソニーネットワークコミュニケーションズの子会社であるSoVeCだ。大量の写真を合成することで3DCGを生成する「フォトグラメトリ技術」を活用した。素材の写真は、新潟県内の車両基地で実車の車内外を撮影。車外は汚れや補修跡をそのまま再現しているほか、車内も金属や布の質感を再現しているという。さらに、駅構内の3Dデータも構築し、車両の3Dモデルが実際の線路上に寸分違わず存在する様子を再現。同社代表取締役の上川衛氏は、「線路の位置や駅の照明を反映し、あたかも車両が実際にここにいるような感覚を味わえる」と話す。
JR東日本 イノベーション戦略本部 デジタルビジネスユニットのユニットリーダーを務める佐藤勲氏は、「鉄道駅において、この規模でAR技術を活用した催しは、恐らく世界初ではないか」と説明。今回の車両選定については、「本物は老朽化で廃車が進んでいるが、ARによって本物を忠実に再現することで、バーチャル空間で未来永劫保存できる」とし、今後もバーチャル空間における鉄道車両の保存に取り組みたいと話した。
AR車両フォトスポットの体験には、JR東日本グループの通販サイトでモデルとなった車両のグッズセットの購入が必要。クリアファイルとコースターのセットとなり、販売価格(税込)は2000円。
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