ソーシャルメディアで見た動画を再シェアすると元の文脈が失われるため、ジョークと意図的な改ざんを見分けることが難しくなる場合がある。特にTikTokでは、ユーザーが他のユーザーが作った楽曲や動画をリミックスしやすくなっているため、この傾向が顕著に見られる。
8月、あるTikTokユーザーが他のユーザーが投稿した加工動画を紹介した。この動画はワイオミング州選出の共和党議員Liz Cheney氏が、民主党のHillary Clinton氏の対立候補として、2024年の大統領選挙への立候補を表明しているかのように加工したものだった。この動画を紹介した投稿には、「なんてこった!」というコメントが付けられていた。
このフェイク動画では、偽物のCheney氏が実際にはありえないような発言をしている。「Hillaryと私には1つ、共通点がある。2人ともDonald Trumpよりタマが大きいし、手もずっと大きい」。実際、Cheney氏は大統領選への出馬を検討していると述べたことがあり、Trump氏を批判する発言もしてきた。しかし、出馬を正式に表明したことはなく、加工された動画に見られるような下品な言葉遣いをしたこともない。
このフェイク動画については、大げさな物言いからジョークだと察することができるかもしれない。しかし、8月の投稿に寄せられたコメントを見る限り、この動画が本物なのかジョークなのか判断しかねているように見える人もいた。
この加工動画を誰が最初に投稿したのかが分かっていれば、他のユーザーは文脈を多少なりとも理解し、それがジョークだと判断できるかもしれない。
ユーザーにできることの1つがこれだ。TikTokの投稿の下部には音符の形をしたアイコンがある。このアイコンをタップすると、再利用された音声・楽曲を作った人物のアカウントが表示される。このケースでは、Cheney氏のフェイク動画から、明らかにジョークだと思われる動画を大量に投稿しているアカウントにたどりつくことができた。
Mahadevan氏は、動画をシェアした人物のプロフィールを見ることも勧めている。その人物の投稿は信頼できるかを判断する材料になるからだ。
研究により、人間は文字や音声のみの投稿よりも動画で共有された誤情報を信じやすいことが分かっている。
ペンシルベニア州立大学教授で、同校のメディア効果研究所(Media Effects Research Laboratory)の共同所長を務めるS. Shyam Sundar氏は、人間は自分の目で見たものを信頼できると思い込む傾向があるので、映像のフェイクニュースを信じやすいと指摘する。
AIを使って政治家などにおかしなことを言わせるディープフェイク動画にだまされる人は多い。しかし、そこまでの技術がなくても音声は比較的簡単に加工できる。例えば再生速度を遅くするだけで、ろれつが回っていないように見せかけることは可能だ。ロシアがウクライナに侵攻した際は、無関係の動画に銃声や爆発音を付け加えて、あたかも侵攻時の様子を撮影したかのように見せかける動画が出回った。
Sundar氏は、TikTokの動画やツイートなど、ソーシャルメディアの投稿は素早くスクロールしながら閲覧される点に注目する。「現代の人々が情報に接する環境を考えると、一旦立ち止まって、目にした情報が真実かどうかを調べてみようと思い至る可能性は非常に低い」
動画では、画像の改ざんにも注意する必要がある。
グリーンスクリーンを使うことで、自分の背景に任意の画像をはめこんだショート動画を簡単に作成できる。TikTokでは、写真をアップロードしてスライドショーを作成することも可能だ。しかし、こうした画像は偽造することができる。
ペンシルベニア州に住む15歳のファクトチェッカー、Isaac Harteさんは上院の議席をめぐる民主党候補John Fetterman氏と共和党候補Mehmet Oz氏の戦いを注視していた。Harteさんは、MediaWiseが運営するティーンファクトチェッカーネットワークの一員だ。
この上院選では、フェイク画像がソーシャルメディアで拡散された。画像には、Oz氏と支持者たちが選挙応援用の看板を持っている様子が映っている。その看板には「OZ」の代わりに、縦読みで「NO」と書かれていた。これはデジタル処理で看板を回転させたフェイク画像だった。
このフェイク画像はFacebook、Instagram、Twitterなどのソーシャルメディアでも拡散され、TikTokでも見つかった。あるTikTok動画には、このフェイク画像と一緒に、マンガ風に加工された「NO」の文字と、男性が首を横に振っているアニメーションが付けられていた。
写真のファクトチェックなど無理だと思うかもしれないが、Harteさんは簡単だと言う。調べたい写真を「Google画像検索」で検索すれば、その画像がどこから来たものなのかが分かるからだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
パナソニックのBioSHADOWが誘う
心地良い室内空間のつくりかた
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス