「Apple Watch Ultra」レビュー【後編】--アップルはダイビング業界に変革をもたらすか - (page 2)

Oceanic+アプリは無料版と有料版がラインアップ

 なお、今後リリースが予定されているダイビングコンピュータ機能を持つOceanic+アプリは、Huish OutdoorsとAppleが共同開発したものだ。Huish Outdoorsはダイブコンピュータでも定評のあるSUUNTOをグループに持つ。

 Oceanic+アプリは無料版と有料版の2つで構成される。料金表によると、天候予測やコミュニティ機能が有料版で、無料版でも基本的なダイブコンピュータとしての機能は備えているようだ。日本における価格は未定だが、1日から設定できるサブスクリプション、4.99ドル/日、9.99ドル/月、79.99ドル/年、129ドル/年(ファミリーシェア)の料金体系が発表されている。

 なお、現在分かっているところでは、速度の警告や安全停止といったアラートは、振動だけで知らせるという。ウェットスーツの上からでも分かる振動というが、音が鳴らないのは少し気にかかるところだ。

Oceanic+アプリはまもなくリリース予定という
Oceanic+アプリはまもなくリリース予定という

Apple Watch Ultraならではの「SOS」機能

 Apple Watch Ultraは、GPSモデルのみの設定がなく、標準で携帯電話通信機能が搭載されている。iPhoneを契約している通信会社で、Apple Watch用のモバイルデータ通信プランに契約すると、iPhoneが手元になくても電話をかけたりメッセージを送ったり、緊急電話を発信したりできる。緊急電話は「警察(110番)」「海上保安庁(118番)」「火事、救急車、救助(119版)」の画面をタップするだけでつながり、位置情報も共有されるという。

Apple Watch用のモバイルデータ通信プランに契約すると、iPhoneが手元になくても電話をかけたりメッセージを送ったり、緊急電話を発信したりできる
Apple Watch用のモバイルデータ通信プランに契約すると、iPhoneが手元になくても電話をかけたりメッセージを送ったり、緊急電話を発信したりできる

 Apple Watch Ultraの発表があった週末、千葉県の館山市で海上にダイバーが取り残され、海上保安部の巡視艇に救助されたという報道があった。10人のボートダイビングで、離れた場所に浮上していた男性に気付かず帰港し、ツアー解散時まで気がつかなかったという。浮力を確保はできていても、いつ来るかわからない救助を広い海の上で待つことを想像すると、いたたまれない気持ちになる。

 海でどこまで通信ができるのか、という懸念点はあるものの、Apple Watch Ultraがあればもしかすると自力で救助を呼べるかもしれない。さらに陸では86デシベルのサイレンを鳴らすこともできるので、居場所を知らせるのにも役立つ。万が一の状況に置かれたときの安心材料になるのは、Apple Watch Ultraならではといえそうだ。

サイドボタンやアクションボタンの長押しで、サイレンやSOSを呼び出せる
サイドボタンやアクションボタンの長押しで、サイレンやSOSを呼び出せる

アップルはダイビング業界に変革をもたらすか

 ダイブコンピュータは、ダイビングを楽しむダイバーにとって減圧症から身を守るための必須アイテムといっていい。しかしながら、ダイブコンピュータは安いものでも2~3万円する。電池交換が不要なソーラー対応やスマートフォンとリンクできる機能を備えると、6万円~10万円前後はかかるため、Cカード(ライセンス)をとったばかりの人には購入のハードルが高かったものの一つだ。

 ウェットスーツやほかの機材と同様に、レンタルできるところもあるが、やはり使い慣れたものが安心できる。

 これまでの定評あるスマートウォッチの機能を兼ね備え、さらにダイビングでも使用できるとなれば、Apple Watch Ultraの12万4800円(税込)という価格も決して高くはないと思えてくる。

 しかしながらもちろん懸念点もある。その一つはどの程度長く使い続けられるのかということ。「耐水性能は永続的に維持されるものではなく、時間の経過とともに低下する可能性がある」と記されている。

 筆者のダイブコンピュータは使用して6年以上たつが、いまだ現役の最新モデルのひとつにラインアップされる。そうした中でApple Watch Ultraは、彗星のごとく登場した革新的な存在のようにも見える。

 Apple Watch Ultraのライバルはいないのか。これまでダイビング機材メーカーによるダイブコンピュータの機能しかないものが多かったが、実は少しずつスマートウォッチを備えた選択肢が増えてきているのだ。

 たとえば4月に発売された最新モデル「Descent G1 Dual Power」(ガーミン)は、ソーラー充電とバッテリー充電の両対応で、ダイビングモードで約25時間稼働。ソーラー充電機能によりスマートウォッチモードで約124日間の稼働が可能としている。

Descent G1 Dual Power(左)とApple Watch Ultra(右)
Descent G1 Dual Power(左)とApple Watch Ultra(右)

 いくつかの選択肢が出始めた中で登場した、抜群の知名度と人気を誇るアップルが手がけるApple Watch Ultraは、ダイバーに新たな気づきと選択肢を与えてくれたように思う。

 スマートウォッチとしての機能を兼ね備えた製品は、これまでこれからダイブコンピュータの購入を考えていた人の敷居を下げ、またこれからダイビングを始めたいと思っていた人を後押しするきっかけになるかもしれない。また、Oceanic+アプリがリリースされたら改めてレポートしたい。

この日に見た、イシダイに狙われている伊勢エビ。そんなシーンを間近で見られるのはダイバーならでは(撮影場所:赤沢ビーチ)
この日に見た、イシダイに狙われている伊勢エビ。そんなシーンを間近で見られるのはダイバーならでは(撮影場所:赤沢ビーチ)

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