米連邦通信委員会(FCC)が地球低軌道衛星について、運用終了後5年以内の軌道離脱を必須とするルールを検討する中、米航空宇宙局(NASA)は、増大するスペースデブリ(宇宙ゴミ)問題とその対応方針を把握するため、3つの研究に資金を提供すると発表した。
低軌道衛星の数が増大するにつれ、スペースデブリは宇宙船、宇宙へのアクセス、国際宇宙ステーション(ISS)に対する深刻な脅威になりつつある。また、SpaceXやAmazon、そしてBoeing、Northrop Grumman、Thales、Lockheed Martin、Airbusなど古株の航空宇宙・防衛関連企業が低軌道に構築している経済圏にも影響を与えつつある。
NASAによれば、スペースデブリは主に宇宙ミッション関連の機材の破片、機能しなくなった宇宙船、放置されたロケットのステージなど、人間によって作られたものだという。NASAは、スペースデブリの脅威を真剣に受け止めていると述べている。
NASA本部の技術・政策・戦略局(OTPS)の責任者Bhavya Lal氏は、「スペースデブリは、われわれの時代における大きな課題の1つだ」と語った。
NASAが資金を提供する研究の目的は、軌道環境の変遷過程を理解し、デブリの発生を抑え、すでに存在するデブリによる影響を軽減するための方針を検討することだ。
「宇宙を利用する能力を維持することは、われわれの経済、国家安全保障、科学技術事業にとって重要だ。軌道環境の変遷過程の理解と、デブリ発生の抑制、既存デブリの影響を軽減するための方針策定に役立つ研究に資金を提供する」(Lal氏)
FCCの委員長は9月9日、低軌道衛星の運用者がミッション完了後に衛星を軌道から離脱させる期限を、従来の25年から5年に短縮する新ルールを提案した。この提案については今後、FCCによる投票が行われる。
NASAの資金を受ける研究提案の1つは、テキサス大学のASTRIAgraphだ。これは、クラウドソーシングによる宇宙交通監視システムで、アクティブな衛星を黄色い点、非アクティブな衛星を青い点、ロケットの機体を紫の点、破片や未分類の物質をピンクの点で追跡する。
ASTRIAgraphは、地球近傍軌道の周辺が非常に混雑していることを示しており、将来的にはさらに混雑するとみられる。SpaceXは、現在2000基超の衛星で構成しているStarlinkを、4万2000基に拡張する計画だ。FCCは、2020年にAmazonが推進するProject Kuiper計画を承認した。この計画は、将来Starlinkのライバルになる3236基の衛星を運用するというものだ。国連の国際電気通信連合(ITU)への提出文書によると、中国は7800基を超える衛星の打ち上げを希望している。
ITUは、衛星の運営者が使用する無線周波数スペクトルを管理しているが、宇宙に打ち上げる衛星の数を管理する国際的な規制当局は存在しない。
米国防総省の宇宙監視ネットワーク(SSN)は、2万7000個のスペースデブリを追跡している。これらは低軌道に存在する直径2インチ(約5cm)以上ものや静止軌道に存在する約1ヤード(約1m)以上のもので、人工物と流星物質を含んでいる。
NASAによると、SSNは地球近傍軌道上に存在する多数のより小さなスペースデブリは追跡していないが、これらも有人宇宙飛行やロボットによるミッションを脅かすのに十分な大きさだという。
NASAはまた、ソフトボールよりも大きなスペースデブリが2万3000個あり、最大時速1万7500mph(2万8163km)で地球を周回していると語る。
衛星破壊実験(ASAT)もスペースデブリの問題の1つだ。中国は2007年、ASATを実施するため古い気象衛星をミサイルで破壊し、3500以上の追跡可能な大きいデブリと、追跡できない無数のデブリを発生させたことで物議を醸した。
米宇宙コマンドによると、ロシアは2021年11月、ミサイルによる衛星破壊実験(DA-ASAT)を実施し、追跡可能なデブリが少なくとも1500個発生した。
なお、専門家らが評価、選択し、NASAが資金を提供する研究は以下の3つだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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