SNSへの依存に歯止めをかける方法として、よく紹介されるのは「時間を制限する」、「通知をオフにする」といった、アプリ自体へのアクセスを難しくする方法だ。しかし、こうしたアプリが生活の質に与えている影響もよく考える必要がある。
Jenny Odellさんは、これを「距離を取る」という言葉で表現する。著書「何もしない」の中で、Odellさんはスマートフォンや注意を向けることを求めるSNSと良い関係を築く方法を論じている。
「『距離を取る』とは、離れることなく、自分が離れるはずのものについて常に部外者の視点で考える行為だ。それは、敵前逃亡ではなく、むしろ敵を知るということ」であり、SNSからの「週末限定のリトリート」も、完全な撤退も、どちらも効果的ではないとOdellさんは言う。その代わりに、Odellさんが勧めるのは自分の注意を意識して使うこと、自分の注意をコミュニティや物理的な空間でどう活用するかを考えることだ。
多くの若者にとって、こうしたSNSとの関係に向き合うことは、デバイスをいかに制御するかという問題ではない。若者は、自分たちが依存しているテクノロジーやSNSと共存する方法を見つけ出そうとしている。
「SNSで生きるか、現実世界で生きるか、という二択で考える人もいる」とBreezeさんは言う。「しかし、実際にはどちらも現実世界だ。現実でないものは存在しない」
大きな話題を呼んだメタバース(インターネットの次の段階とも言われる没入型の仮想世界)のような新たなテクノロジーは、オンラインとオフラインの境い目をさらに曖昧なものとする可能性がある。両者の融合が進めば、SNSと距離を置くことはさらに難しくなるだろう。
研究で示されているように、SNSに費やす時間が減るほど、人間の幸福度は高まり、健康は増進する傾向がある。しかし、「スクリーンタイムを制限する」といった方法では、若者がSNSを利用する感情的、社会的な理由には対応できない。
SNSは、既存のコミュニティを補完するものとして利用すれば、利益をもたらす存在となり得る。しかし、コミュニティの代用品として使うと問題を生み出す。
延び続けるスクリーンタイムに対処する有効な方法のひとつは、人とつながる機会を積極的に作り、スケジュールを埋めてしまうことだ。例えば友人との約束、地域の非営利団体でのボランティア活動、家族との夕食、画面を見ずに一人で過ごす時間などだ。
Breezeさんは、同じ趣味や人生経験を持つ人々とつながれるオンラインコミュニティを作ること、そして可能な場合は、そのコミュニティをオフラインに移すことを勧める。
Poteryakhinさんは、この1年間に最も手っ取り早くスクリーンタイムを削減できた方法として、「恋人を作る」ことと「フルタイムの仕事に就く」ことを挙げた。休暇から戻り、スマートフォンからInstagramを削除したが、その後Instagramの画面をスクロールしたい衝動に駆られることはないという。
「スマホが退屈になった」とPoteryakhinさんは言う。「今も刺激を求めてメールを探ってしまう時はある。でも、数分もたつと他にすべきこと、例えば無視していた日常のあれこれに意識を向けられるようになった」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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