シャープは、2023年3月期第1四半期(2022年4~6月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比8.1%減の5621億円、営業利益は66.7%減の61億円、経常利益は31.9%減の174億円、当期純利益は24.3%増の269億円となった。
シャープ代表取締役副社長 執行役員の沖津雅浩氏は、「中国ロックダウンやウクライナ情勢に加えて、急速に円安が進展するなど、厳しい事業環境となり、売上高、営業利益、経常利益は前年同期を下回った。だが、最終利益は為替差益、SDP(堺ディスプレイプロダクト)の段階取得による差益などにより、前年同期を上回った。通期予想に対しては、ほぼ想定通りに進捗した」と総括した。
第1四半期における中国のロックダウンの影響は営業利益で94億円。また、円安の影響はシャープ全体ではネガティブに働いているという。
セグメント別では、ブランド事業の売上高は前年同期比2.4%減の3208億円、営業利益は52.6%減の89億円。そのうち、スマートライフの売上高が前年同期比0.1%減の1109億円、営業利益は43.5%減の71億円。「白物家電事業は、国内が減収。中国ロックダウンによる生産の影響から、中国に工場があるエアコン、洗濯機の販売が落ち込んで減収。空気清浄機もコロナ禍において需要が一巡した影響を受けた。だが、海外は大きく伸長。アジアでは冷蔵庫や洗濯機が大幅な増収となったほか、欧米を中心に調理機器が非常に好調に推移した。また、海外のエネルギーソリューション事業は伸長したものの、国内での部材隘路(あいろ)の影響があり、エネルギーソリューション全体では減収になった」とした。
さらに、「円安の進行、半導体や原材料などの価格が上昇したことに加え、空気清浄機などでは需要の落ち着きとともに、売れ筋の価格帯が下がったり、収益が高いドラム洗濯乾燥機が中国ロックダウンで商品が集まらなかったりして、商品ミックスが変化して、これも減益の要因になっている」という。
また、「白物家電では、海外で生産し、日本に持ってきている商品が多い。上期から新製品の発売にあわせて、順次値上げをしているほか、下期には空気清浄機、エアコンなどの新製品を投入する予定であり、これらの商品でも売価に反映することになる。1年間でほとんどの商品が新製品に切り替えることになる。また、継続して販売している商品については、通常であれば1年間で実売価格が3~4割下落していくが、値下げ幅を抑えることになるだろう」と述べた。
そのほか、「円安によって、日本に工場を回帰することは考えていない」と発言。「基幹部品のほとんどが海外で生産されており、海外の工場でいかに原価を下げていくかといった取り組みが必要であり、これまで以上に設計が重要になってくる」とした。また、「国内への生産回帰はなくても、中国リスクには対応しなくてはならない。白物家電については2拠点生産体制とし、エアコンや冷蔵庫はインドネシアとタイで生産し、空気清浄機もベトナムとタイで生産する」と述べた。
一方で、「ホットクックをはじめとしてソリューション化が進んでいる商品については、新製品を1年に一度出すのではなく、クラウドに接続して進化させ、ハードウェアそのものは2年、3年続く商品が増えていくと考えている。だが、現時点では、どの商品においてモデルチェンジのサイクルを伸ばすのかといった具体的なことは決めていない」と語った。
8Kエコシステムの売上高は前年同期比1.7%増の1398億円、営業利益は5.5%増の43億円。「テレビ事業は、アジアや米州では伸長したものの、中国ではロックダウンの影響によりテレビ需要が大きく減少。また、日本や欧米でMFP(複合機)が大幅増収となったビジネスソリューション事業が伸長し、スマートオフィス事業やインフォメーションディスプレイ事業も伸長した。MFP事業ではプリントボリュームも回復している」という。
ICTは、売上高が前年同期比12.7%減の700億円、営業利益が前年同期の21億円から、マイナス25億円の赤字に転落した。「部材隘路や市況悪化などにより、通信事業、PC事業ともに減収となった。PC事業では日本がほぼ横ばいとなり、欧州や米国では第1四半期から販売量が低下して減収。カナダやオーストラリアは増収になっている。PCは中国で生産して、日本に輸入しているため、円安の影響も大きい。一方、通信事業では、スマホだけでなく、ルーターの販売などの新たな事業にも取り組み、業績の改善を図っていくことになる」という。
一方、デバイス事業の売上高は前年同期比16.6%減の2580億円、営業利益は前年同期比85.4%減の6億円。そのうち、ディスプレイデバイスは、売上高が前年同期比11.2%減の1894億円、営業利益が80.6%減の6億円。「中国ロックダウンによる生産や顧客需要の影響があったほか、スマホ向けパネルが減少した。また、パネル価格は下落している。だが、車載向けパネルなどは引き続き伸長している」という。
エレクトロニックデバイスは、売上高が前年同期比28.6%減の689億円、営業利益が0.1%減のブレイクイーブンとなった。「中国のロックダウンが顧客需要に影響したことで減収となったが、わずかに黒字を確保した」と述べた。
2022年度(2022年4月~2023年3月)通期業績見通しについては、6月公表値を据え置き、売上高は前年比8.2%増の2兆7000億円、営業利益は23.3%減の650億円、経常利益は45.2%減の630億円、当期純利益は32.4%減の500億円としている。
「第1四半期は、円安の進展や中国ロックダウンがあり、通常ではない状況だった。ロックダウンの影響で生産が止まった分については、7月以降に挽回をしていくことになる」とし、「第2四半期以降も厳しい事業環境が続くが、新たな経営体制のもと、業績予想の達成に向け、米州、欧州、ASEANを中心とした海外事業の強化、新製品や新サービスの開発、新市場の開拓、新規事業の創出といった新規領域の拡大、サプライチェーンの混乱をはじめとしたリスクへの対応に重点的に取り組んでいく。好調な事業はさらに伸ばし、回復が早く、円安の影響を受けない海外事業に力を注ぎ、事業成長と財務体質の改善の両方に取り組む」などとした。
なお、2022年4月に就任したシャープ 社長兼CEOの呉柏勲氏が、「新たなブランドの柱に位置づけたい」と語るデジタルヘルスケアについては、7月に、ヘルスケア事業推進室から名称変更をする形でDigital Healthcare事業推進室を本社に設置。「年末にかけて、どの分野に進むのかについて検討を進めていく。ヘルスケアといっても、対象分野は医療機器ではない。病気の予防や健康増進において貢献できる事業を想定している。ハードウェアだけでなく、ソリューションを含めた形で事業を拡大していく」と述べた。
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