「NFT.NYC」現地レポート--NFT×コミュニティビジネスの可能性を感じた3日間

天羽健介(コインチェック)2022年07月27日 09時00分

 現地時間2022年6月20日から23日の3日間、ニューヨークでNFTを主テーマにおいた世界最大級のイベント「NFT.NYC」が開かれ、コインチェックからもNFTの解説記事などを手がけている「Coincheck NFT(β版)」のチームが現地でイベントに参加した。

 プログラムからいくつかをピックアップしながら、NFTの界隈で起こっていること、これから起こりそうなことなどを本レポートでお伝えする。

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 NFTの活用の幅が広がるなか、特に注目が集まっていたのがNFT×コミュニティビジネスの可能性だ。今回のイベントの会期中も、NFTホルダーのみが参加できるクローズドなイベントやパーティが大いに盛り上がっていた。

「NFT.NYC」とは

 NFT.NYCは、世界中のNFTのリーダー、インフルエンサー、開発者、ファンをつなぐイベントで、NFTに関わる人や情報が集まり、NFTの現在の利用用途を超えた活用を促進すべく、議論が進んだ。

 会期中はタイムズスクエア近くの劇場で講演やミートアップ、周辺のクラブスペースやギャラリーで、さまざまなパーティやイベントが行われた。今回のテーマは「The Diversity of NFTs」。テーマにある通り、NFTはさまざまな領域、ビジネスドメインとのコラボの可能性があり、まさにNFTの未来は多様性に富んだものであることを体感できた。

ブロードウェイを走るBAYC(Bored Ape Yacht Club)のラッピングバス
ブロードウェイを走るBAYC(Bored Ape Yacht Club)のラッピングバス

コンテンツのラインナップ

 プログラムには、スポーツ、ブランドの活用事例、音楽、アート、ブロックチェーン、映画、ファッション、ゲーム、 DAO、法務と財務、ソーシャル、サステナビリティ、開発、投資、チケット活用、新しい活用方法など、さまざまな講演やミートアップが並んだ。

 なかでも2022年はNFTを媒介としたコミュニティ作りに焦点をあてたプログラムが多く、この分野、領域で新しい波が来ているように感じた。

会場のエントランスホールの壁面にはトピック一覧や登壇者のアイコンが映っていた
会場のエントランスホールの壁面にはトピック一覧や登壇者のアイコンが映っていた

Onboarding The World to NFTs--Web3のキーワードはコントロールとオーナーシップ

 初日の午前中に行なわれた「Onboarding The World to NFTs」では、MoonPayのCo-Founder & CEO Ivan Soto-Wright氏が登壇し、Web3のキーワードや新たにローンチした「HyperMint」についてのプレゼンを行った。

 Web3のキーワードはコントロールとオーナーシップであり、その対象はデータ、資産および通貨であるとした上でMoonPayはインフラ構築に注力する会社であると述べ、これからは決済サービスのインフラ会社だけでなく、Web3インフラ会社としてサービスを提供するビジョンを示した。

 また、新たにローンチしたサービス「HyperMint」は、ユーティリティNFTを大規模に作成、管理、ミント(Mint:NFTを新たに作成、発行すること)できる新しいセルフサービスプラットフォームであると紹介した。

The Future of NFTs on Layer 2--レイヤー2の未来を議論

 「The Future of NFTs on Layer 2」のパネルトークでは、Offchain LabのCo-FounderのEd Felten氏とSteven Goldfeder氏、Parallel FinanceのWalid Al Habboul氏、JupiterのKevin Leffew氏が登壇し、NFTのレイヤー2の未来について議論した。

 トランザクションの問題を解決できれば、ガス代を抑えながらも複雑なアプリケーションを作ることができ、ユーザーとアプリケーションの増加にも貢献できるというアイデアについての議論が進んだ。

 レイヤー1をベースにしたレイヤー2は低コスト、高セキュリティを推進し、より良いユーザーエクスペリエンスをクリエイターとユーザーに提供でき、今までよりはるかに多くの革新を行える世界を実現できると述べた。

パネルの合間では、各社が工夫を凝らした出展ブースをのぞくことができた
パネルの合間では、各社が工夫を凝らした出展ブースをのぞくことができた

 NFT界隈の著名人のパネルはもちろん、テック系の内容のパネルも充実していた。ここからは2022年のトレンド、次なる大きな流れであるユーティリティ、コミュニティに関するパネルを2つほど紹介する。

The Rise of NFT Utility in Building Digital Communities--NFTはインターネットでいう90年代

 「The Rise of NFT Utility in Building Digital Communities」では、Kreechures LLCファウンダーのDaniel Charpentier氏、Two Bit CircusチェアマンのBrent Bushnell氏、RaribleのAlex Salnikov氏らが登壇した。

 彼らは、音楽や映画のサブスクリプションサービスで人々がオンラインで過ごす時間が増え、その事によって何かを「保有」する感覚は薄れていると語った上で、NFTはそれをオンライン上で「これは自分のものだ」とする事を可能にする技術であると話す。今日のNFTはインターネットでいう90年代のようで、まだまだ発展途上であると考察した。

 また、オフラインでのコミュニティーの力が弱くなる一方で、NFTは人、物、金が集まる強固なコミュニティを形成することに成功しているとも話した。

NFT Brand Partnerships in 2022 and Beyond--NFTは「ツール」

 「NFT Brand Partnerships in 2022 and Beyond」では、Polygon StudiosのKelly DiGregorio氏、MoonsuitファウンダーJon Nelson氏、RadioShzckのAbel Czupor氏、ディベロッパーであり投資家であるJeff Krantz氏が登壇した。

 いくつかのブランド(企業)がNFTを活用しようとしているが、今は各社が実験段階という観点からスタートしているという。NFTはツールであり、顧客獲得、リテンション、LTV向上のそれぞれに対してNFTがどう貢献するかという視点で考えるべきであると示した。

 昨今、いかに顧客に関心を持ってもらうかがブランドの重要課題であり、NFTはそのためのCRMツールとして捉えることもできる。NFTというツールを使ってブランドが顧客へのインセンティブとして利用することも可能だ。これからNFTを用いて顧客との関係性を構築していく上ではコミュニティマネジメントの役割が重要になる。

 しかし現状のNFTは、多くのユーザーにとってまだ複雑で難しいものである印象が拭えず、克服のためにはNFTに触れる顧客体験がスムーズなものになるようなサポートが必要であるとした。またそもそもNFTを活用する場合、ブランドの顧客属性をよく見る必要があるとも述べた。

The Growth of OpenSea--NFTのエコシステムとは

「The Growth of OpenSea」では、OpenSeaのCo-Founder & CTO Alex Atallah氏とNFT.NYCプロデューサーのJodee Rich氏が登壇し、NFTのエコシステムについてディスカッションした。

 NFTはエコシステムドリブンな市場であり、さまざまなチェーンが存在している中、チェーンごとにユニークなユーザー行動が発生していると述べ、面白いユースケースの一例としてticketingを事例に挙げて説明した。

 ブロードウェイで新しいショーを始める際に、従来のチケットでなくNFTを発行することにより、最初の2000人のホルダーがそのNFTをコレクタブルなものとして購入、所有し、そのNFTがプライベートDiscordに参加する権利や役者に会えるアクセス権を与えるものになるようなことも考えられると説明した。

会期中にはさまざまなイベントやパーティも

 ここからはNFT.NYCのイベント会期中、NYで大小、昼夜問わず開催された趣味思考を凝らしたイベントやパーティから、いくつかをピックアップして紹介する。

 2022年のNFT.NYCでは、BAYCをはじめとするコミュニティやそのユーティリティを肌で体感すべく、現地に向かった。実際に先行する米国市場の現場感を感じ、いろいろな方との意見交換ができ、沢山の刺激をもらえた。

ゲームの世界観を再現--The Sandboxが開いたスペシャルなパーティ

 NYの街中、Gotham Hallで開かれたパーティ会場内の装飾は、ゲームの世界観を再現した心踊るものに仕上がっていた。

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 スティーヴ・アオキさんなどのトップDJも登場し、会場は盛り上がった

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Moonbirdsホルダー向けイベント--NFT保有者のみが参加可能

 MoonbirdsはNFT NYCの期間中、スペシャルゲストとしてマジシャンのDavid Blaineさんと、サイケデリックミュージックプロジェクトであるTame Impala氏を迎えて、保有者のみが参加できるイベントを開催した。

パーティには長蛇の列ができ、列の隣には巨大なMoonbirdsが!
パーティには長蛇の列ができ、列の隣には巨大なMoonbirdsが!
音楽、料理、マジックを楽しみながら、ホルダー同士の活発なコミュニケーションが行なわれた
音楽、料理、マジックを楽しみながら、ホルダー同士の活発なコミュニケーションが行なわれた

BAYCが開催した「ApeFest 2022 in NYC」--トップアーティストが登場、レアアイテムの販売も

 会場入口に現れた巨大なオブジェには、「BAYC(Bored Ape Yacht Club)」プロジェクトの顔であるBored Apeが横たわっていた。

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 NYのベイエリアPier 17で開催された野外フェスティバルでは、エミネムさんやスヌープドッグさんなどのトップアーティストが登場し盛り上がっていた。

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 屋内のスペースではアパレルグッズの販売が行われ、ホルダーのみがゲットできるレアアイテムが購入できた。

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NFT.NYC周辺のイベントに参加した所感

 イベントに参加した率直な感想として「コミュニティは熱狂的だがユーティリティに関しては黎明期」という印象を受けた。開催されたイベントは従来のクラブイベントと類似したものが多く、想像を大きく超えるものはあまりなかった。今後、NFTのユーティリティは多様化していくが、最先端のNFTコミュニティの今を体験することができたのは大きな収穫だった。

 BAYCのApe festにおいても、入口はNFT認証だが入ってしまえば通常のフェス。しかし熱狂的に盛り上がっているのはなぜか。

 それは、IPの世界観やブランド、ストーリーの作り込みを見せ方も含めて徹底しているからだ。発行体のYuga labsの創業者がエンジニアではなく文学オタク2人によって創られている事も大きな要因だろう。NFTブームが先行して見えにくくなっているが、改めてNFTは手段でしかなく、「最上位に位置付けられるIPやそのコンテンツは、NFTが無くても魅力的か」を初心に戻って問い直すことが重要であると感じた。また、この中で大切なことはプロジェクトのストーリーや思想に共感、魅了されるかどうかもとても大切だろう。

 コインチェックもデジタル経済圏のゲートウェイとして、NFTを軸にしてコミュニティーを育て、そこで経済活動が生まれるという座組みを日本のマーケットに適した形で展開していきたいと考えている。われわれが「The Sandbox」上で展開している「Oasis TOKYO」や「Decentraland」上で展開している「Oasis KYOTO」も、どうすれば参加者にとっての癒し(オアシス)のコミュニティになれるかを追求し、「それぞれが居心地の良い場所」であるために多様性のあるコミュニティを作っていきたい。

天羽健介

コインチェック株式会社
常務執行役員 NFT・メタバース・IEO・Web3等新規事業担当

大学卒業後、商社を経て2007年株式会社リクルート入社。複数の新規事業開発を経験後、2018年コインチェック株式会社入社。主に新規事業開発や暗号資産の新規取扱、業界団体などとの渉外を担当する部門を統括。2020年より執行役員として日本の暗号資産交換業者初のNFTマーケットプレイスや日本初のIEOなどの新規事業を創出し、2022年6月に同社の常務執行役員に就任。2021年日本最大級のNFTマーケットプレイス「miime」を運営するコインチェックテクノロジーズ株式会社の代表取締役に就任。日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)NFT部会長。著書に『NFTの教科書』(朝日新聞出版)。

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