コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は7月14日、中国の重慶市文化市場総合執法総隊が、漫画の海賊版サイト「漫画BANK」など複数の海賊版サイトを運営していた重慶市在住の男性1人に対し、情報ネットワーク伝達権保護条例違反で行政処罰を下したと発表した。
男性には、情報ネットワーク伝達権保護条例違反として、1万6409.52元(約33万円)の犯罪収益没収および、3万元(約60万円)の罰金が課せられる。日本人向けの漫画の海賊版サイトを運営者していた人間に対し、海外で処分が下されるのは今回が初めてになるという。
漫画の海賊版サイトとなる漫画BANKは、日本の漫画作品がストリーミング形式で無料で読めることが問題とされている。ABJの試算では、開設期間中(2019年11月〜2021年10月)の合計アクセス数は9億9370万。タダ読みされた金額は、コミックス販売価格換算で2082億円相当になるという。
KADOKAWA、講談社、集英社、小学館の出版社4社は、漫画BANKが利用していたサーバー会社などに対し、米国裁判所において情報開示命令を取得。「漫画村」事件で協力していた福岡県警察のアドバイスなどを受けつつ、開示された情報を精査、分析し、明らかとなった米国通信社などに対しても情報開示申立を実施したという。
それら複数の情報から運営者が中国の重慶市に居住していることを突き止め、中国に事務所を持つ同機構へ対処を要請したとしている。
漫画BANKや関連サイトは、中国からは画像が確認できないように地域制限(ジオブロック)を施しており、中国国内からはアクセスできない。「侵害実態がない」といった状態だったが、CODAが中国当局に向けて日本における甚大な被害状況とその可罰性、摘発の重要性をまとめた申立書と、各種情報提供に基づいた行政処罰申立てを実施したところ、受理されたという。
中国で行政処罰を下すうえでの重要要件である「中国の公共の利益を侵害する」に該当するかが大きな焦点となっていたが、今回のケースでは受理、そして処分に至ることができ、CODAのこれまでの行政申立ての中でも異例かつ画期的な事例になったと説明している。
現地弁護士事務所の見解によると、個人に対する処罰として罰金3万元は重いものであるという。もっとも、被害額と比して処分が軽いと思われることから、出版社4社と同機構は、この侵害行為の全容解明に向けて情報収集に努めるとともに、出版社が受けた被害の回復手段についても検討していくとしている。
なお、漫画の海賊版サイト全体については、タダ読みされた金額が2021年の1年間で約1兆19億円に上ると試算されていたが、出版社らによる尽力で漫画BANK関連サイトなどの大手サイトが完全に閉鎖。2022年5月現在では、被害は以前に比べると減少している。
しかし、引き続き複数の海賊版サイトがドメインや名前を変えて開設と閉鎖を繰り返しており、日本からのアクセスが集中する状況が何度も確認され、予断を許さない状況にある。
海賊版サイト運営者は、無許諾で漫画をアップロードして膨大なアクセスを稼ぐことで広告収入といった暴利を得ている。そこで、出版社、ABJ、同機構では「STOP!海賊版」などのキャンペーンを実施。違法アップロードを行わないことはもちろん、海賊版サイトにアクセスしないようにも呼び掛けを行っている。
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