NTT西日本の森林正彰新社長は6月29日、就任後初となる記者会見に臨んだ。今後の経営方針を電信電話になぞらえた「伝新人輪(でんしんじんわ)」の4つの漢字で紹介し、2022年度の事業目標として3年連続の増収増益を目指すと述べた。
森林氏は1962年生まれの60歳。1984年に日本電信電話公社に入社し、マルチメディアサービス部、国際事業部などを経て2009年に出向先のNTT EUROPEの代表取締役社長に就任した。その後も海外を中心にさまざまな役職に付き、2019年にロンドンを拠点とするNTTリミテッドの副社長を務め、6月17日にNTT西日本社長に就任した。
伝新人輪の「伝」は伝統を守ることを意味するとのこと。基本とする電話と光サービスと高品質で安定した情報通信インフラとサービスをこれからも引き続き提供し、災害対策にも力を入れていくことを強調した。社内のDX(デジタルトランスフォーメーションで効率化を推進し、お客様の利便性の向上にもつなげる。
「新」は新たな挑戦を意味し、グローバルで活躍してきた視点を活かしていくとした。例として電子書籍配信サイト「コミックシーモア」を運営する「ソルマーレ」のグローバル展開に着手し、今年度中に何かしらの動きを発表するという。
また、睡眠をテーマにしたパラマウントベッドとの合弁会社である「NTT PARAVITA」など新ビジネスの創出にも力を入れる。今年3月に大阪京橋で開始したオープンイノベーション施設「QUINT BRIDGE」)を西日本発のビジネス共創拠点とし、ローカル5GやNTTが奨めるIOWN構想といった革新的技術の活用により共創から実装につなげ、25年開催の大阪万博ではユースケースの発表を目指す。
「人」は人を大切にし、社員、お客様、地域コミュニティといったあらゆるつながりを大事にする意味があるという。高度なスキルを持つ人材育成やリスキング、ダイバーシティな採用を行い、人知を結集することで社会課題を解決し、ウェルビーイング重視した健全でやりがいある会社にする。30府県の支店と地域自治体が連携して課題解決に取り組む「地域のビタミン活動」はすでに36プロジェクトが実施されており、そこで得られた結果を地域以外にも展開していくとしている。
「輪」は人をはじめ、地域、大学、企業のオープンなつながりを広げ、共創ラボの「リンクスパーク」などを通じてパートナーとDXを推進することで新たなビジネスの連鎖を生み出す。例として、IT活用で大学をより便利にする「エルID(仮称)」を利用するIDの発行を現在の約550万から全国の学生を対象に3000万に増やし、NTT東日本やDNPと設立した「NTT EDX」と連携するなど、いろいろなサービスを提供する教育ICTプラットフォームを構築する。
海外経験が長い森林社長は「今回のポジションは想像していなかったが、NTT西日本が目指す今後の展開にグローバルな視点が強く求められていることがわかり、これまで経験してきた経験が生かせる場になると感じた」と言う。
北海道出身で北九州に勤務経験はあるが、関西に住むのは初めてで、今期中に30ある支店を全て周り、地域課題にも目を向けていくとしている。「地域が持つポテンシャルを発揮するためにグローバルパートナーを紹介して後押ししたり、企業の大小を問わずお手伝いできる。NTT発の技術をソリューションとして提供することでブランド力を上げたい」とも述べた。
注目するテクノロジーは「ここはIOWNと言うべき」としつつも、「クラウドの世界に長く携わってきたのでネットワークの使い方として集中と分散をデザインすることにインフラ屋としても興味があり、注目している」と述べた。世界第3位を占めるデータセンターの立ち上げにも多く関わっていることから、エネルギー問題にも関心が高い。「データセンターはNTT西日本でも開発を進めていく可能性があり、そこではカーボンニュートラルを加速すべきだと考えている」と話す。
売り上げに関してはNTT東日本と同様、今後は電話回線の収益が下がるのは避けられないことから新分野で50%を占めるようにしていくという。25日にグループで発表されたリモートワーク対応も順次対応を進める。森林氏自身はコロナ下のロンドンで日英間のリモートワークを経験してきたことから、帰国後も積極的にリモートワークを行っており、自らモデルになっていくと話す。一方で休日は趣味のゴルフや旅行で家にいることが少ないとも話した。
座右の銘は「ポジティブ・シンキング」。「どん底にいると感じた時でも前を向いて考えを切り替えることが大事」だとし、周囲にもそうした考え方をするよう奨めていると話す。
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