「iPhone」の進化の鍵を握る2つの技術--LiDARとAI - (page 2)

Lisa Eadicicco (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年07月07日 07時30分

LiDARの改善と進化するAIによる空間認識の向上

 未来に起こり得るiPhoneの変化をピンポイントで言い当てるよりも、経験に基づいて今後の方向性を予測するほうが簡単だろう。しかし、アナリストたちは現在のiPhoneにまかれている種をもとに、Appleの計画を予想しようとしている。

 AppleがARの可能性を追求する上で、LiDARは今後も重要な役割を果たすだろう。Appleは2020年に発売したiPhone 12 ProでLiDARを初めて搭載した。目的は、ARアプリのパフォーマンスを高め、カメラの新機能や、前述した「人の検出」のようなアクセシビリティ機能を実現することだった。この技術は、光が物体に反射して戻ってくるまでの時間を測定することで、物体との距離を測定する。

 しかし、現在のiPhoneに搭載されているLiDARセンサーは、Appleが思い描いているARを実現できるほどの性能を有していないのではないか、とMunster氏は言う。

 AR、自律走行車、VRなどを調査している企業で働くMunster氏は、「具体的に言えば、必要なのは現実世界の正確なマッピングだ」と言う。「これが可能になるまで、真のARは実現しない」

iPhoneの「人の検出」機能
提供:James Martin/CNET

 LiDARはiPhoneの深度予測能力を高めたが、こうしたデータを活かせるかどうかはプロセッサー次第だ。AppleはiPhoneなどの製品がユーザーやその周辺環境を正しく把握できるように、ここ数年シリコンバレーの流行語となっている「人工知能(AI)」に入れ込んでいる。

 このAppleの方向性をはっきりと見て取ることができるのが、先ほども例に挙げたApple Watchだ。Apple Watchは睡眠トラッキングや、手洗いタイマー、手洗いリマインダーといった機能を、AIや各種センサーから収集したデータをもとに実現している

 Counterpoint ResearchのシニアアナリストHanish Bhatia氏は、AIの進化によって未来のiPhoneはユーザーの操作を熟知し、自分を使っているのが持ち主なのか、またはその家族なのかを見極められるようになると予測する。

 「スマートフォンを持つ時の角度、タップする時の力の入れ具合――実はスマートフォンの使い方にはいろいろなタイプがあり、人によって大きく違う」と、Bhatia氏は言う。

 もちろん、この例はBhatia氏の想像であって、Appleの実際の計画に基づくものではない。しかしAIの進歩やLiDAR、超広帯域無線(UWB)といった技術によってiPhoneが空間をより正確に認識できるようになれば、こうしたシナリオも決して夢物語ではない。

ディスプレイや充電技術にも変化の波が

 Appleのスマートフォン計画に関する大きな疑問と言えば、折りたたみ式のiPhoneが登場するかどうかだろう。モバイル分野におけるAppleの最大のライバル、サムスンはすでに数世代にわたって柔軟なデザインのスマートフォンを販売している。Motorola、華為技術(ファーウェイ)、Microsoftもこの路線を踏襲し、Googleも折りたためる「Pixel」を開発中といううわさだ。International Data Corporation(IDC)の調べでは、折りたたみスマートフォンは2021年、前年比264.3%増の出荷台数を記録した。

 しかしMunster氏やMaynard氏などの専門家は、Appleがこの流れに続く可能性に懐疑的だ。Appleは確かにフレキシブルディスプレイを備えたモバイルデバイスの特許を出願したが、こうした出願は必ずしも実際の開発計画を示しているわけではない。折りたたみスマートフォンの売上は伸びてはいるが、一般的なスマートフォンの出荷台数と比べれば見劣りする(IDCの試算では、2021年の折りたたみスマートフォンの出荷台数は710万台だったのに対し、スマートフォン全体の出荷台数は同年第4四半期だけで3億6240万台に上った)。そもそも、スマートフォンを折りたためることが新しい体験や意味のある変化につながっているのかという疑問もある。

 それに本当のガラスを使用したディスプレイを折りたためるようにするには、まだ乗り越えなければならない壁があるとMunster氏は指摘する。サムスンの「Galaxy Z Flip」はガラス製の画面を採用しているが、ガラスを「特殊な素材」と組み合わせることで「安定した硬度を実現している」という。

 「私の予測に欠けているのは、これを(Appleが)どう実現するかという情報だ」とMunster氏は語る。

Galaxy Z Flip 3
SamsungのGalaxy Z Flip 3は半分に折りたためる
提供:Sarah Tew/CNET

 iPhoneの充電機能も進化の時期を迎えていると言えそうだ。USB Type-C(USB-C)、Lightning、MagSafe−−率直に言って、Apple製品の充電方式は複雑だ。欧州連合(EU)や米国の上院議員からの圧力を受けて、iPhoneはUSB-C方式への移行を迫られる可能性があるとMaynard氏はみる。

 もっと劇的な変化が起きる可能性もある。iPhoneがポートを完全に廃止するといううわさは何年も前から流れているが、Maynard氏もその可能性を否定しない。

 Maynard氏は、Appleが2016年にiPhoneのヘッドフォンジャックを廃止すると決定したことを例に挙げ、こう続けた。「もし完全なポートレス化を実現する企業があるとすれば、それはAppleだろう」

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]