Tabist、宿泊業界激動の2年を乗り越え新社名で再始動--田野崎CEOが話す宿泊DX

加納恵 (編集部)2022年07月05日 08時30分

 OYO Japanから社名を変更したTabist(タビスト)が、宿泊施設のDXを積極的に推進している。狙うのは中小規模の宿泊施設における省人化、効率化そしてプロモーションだ。withコロナ時代に向けいよいよ動き出す宿泊業界をTabistはどうサポートし、変えていくのか。Tabist 代表取締役社長兼CEOの田野崎亮太氏に聞いた。

Tabist 代表取締役社長兼CEOの田野崎亮太氏
Tabist 代表取締役社長兼CEOの田野崎亮太氏

 Tabistは、OYO hotels Japanとして2019年3月にスタートした。2020年8月には不動産事業を行っていたOYO LifeとOYO hotelsを統合し、「OYO Japan合同会社」として運営を開始。その後、不動産事業をKC Technologiesに継承。OYO JapanはTabistへと名称変更し、2022年4月に新たなスタートを切った。

 田野崎氏は「まずやっていかなければいけないのは、地域の魅力をきちんと伝えること。ホテルや旅館の料理やサービスはもちろん、その地域ならではの自然や風景、そこでしか楽しめないアクティビティなど、それらをきちんと届けることが大事」と発信力を重視する。

 「宿泊施設のウェブサイトや旅雑誌など、魅力を伝えるメディアはたくさんあるが、それぞれの情報が点在している状態。加えて、今のミレニアル世代はインスタグラムやTikTokなどから情報を収集していて、ビジュアルや動画との接点が多い。発信と受信でメディアにギャップが生じてしまっているのが現状」と分析する。

 中小の宿泊施設ではウェブサイトによる情報発信はしているが、SNSになるとFacebook止まりの施設が多いとのこと。「ユーザーはスマートフォンで情報を探しているのに、宿泊施設側はPCで情報を作っている。しかし縦型のコンテンツやショートムービーでコンテンツを作ってくださいとお願いしても、すぐには難しい。その部分を私たちがサポートしていきたい」とサポート体制を構築する。

 サポートを担うのはTabistのブランド&マーケティングチームだ。チーム内はブランド&PR、デジタルマーケティング、ビジュアルクリエイティブと3つに分けられ「いずれもスペシャリストの集まり。各部門の専任スタッフは6〜7名とそれほど大きな規模ではないが、それらのスタッフが外部の専門パートナーとともに、取り組んでいる状況」と少数精鋭で推進する。

 ソフトバンクグループというメリットも活用する。「ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資している縦型動画のリーディングカンパニー『Firework(ファイヤーワーク)』のツールを使い、縦型動画の編集、掲載を効率的にできる仕組みを整える」と外部とも連携しながら、簡単に情報発信できる仕組みの整備を進める。

 各宿泊施設のコンテンツ発信力を高める一方で、「もう1つの重要なチーム」と位置づけるのがオペレーションチームだ。「オペレーションチームは現在235ある加盟店のオーナーとお話ししながら、どういうコンテンツを使えば読まれるか、お客様を誘引できるかを、宿泊施設のみなさまと考え伴走していくチーム。Tabistでは、固定フィーをいただいておらず、加盟店に送客し、売上が上がってはじめて収入が得られる仕組み。完全に運命共同体で運営しているので、オペレーションチームの役割はとても大切」と重きを置く。

オフラインとオンラインをつなげられることが強み

 Tabistが目指すのは、宿泊施設における表も裏も一貫してサポートすることだ。「OTA(Online Travel Agent)や集客のサポートなど表側をサポートする仕組みはたくさんあるが、魅力を打ち出すためのコンテンツを作ったり、どうやってお客様に届けるかといった裏側のサービスを手がけているところは本当に少ない。両面を提供することはとてもチャレンジングで難しいが、だからこそやりがいある。それが実現できれば、かなり強いブランドになると思う」と将来像を描く。

 そのために力を入れているのがアプリ( iOSAndroid )だ。6月に提供を開始したアプリは、都道府県別の検索や、画像付きの宿泊先一覧から候補先を選択できるなど、シンプルかつスムーズな予約体験を提供。「今は旅先の検索に力を入れているが、将来的にはアプリからチェックイン、アウトができたり、部屋の鍵になったりすることを考えている。さらに、アプリを開くと、お客様が行きたい場所や宿泊施設を提案してくれるようなサービスにしていきたい」とアプリ起点での旅の提案を目指す。

アプリ
アプリ

 さらに「お客様が体験した地域やルートなどを、ほかのお客様に共有できるようにしたい。人気のある観光地であればおすすめのアクティビティやルートの情報は多いが、少し王道から外れてしまうと情報は少なくなってしまう。そうした部分をアプリで補っていけると思うし、アプリ内で旅の体験ができるようにしていきたい」とコミュニケーションツールとしての役割も期待する。

 新たな未来を描くTabistだが、組織変更や2020年春から続くコロナ禍、社名変更と、設立から今までは平穏とは言い難い状況が続いた。「途中離脱された加盟店ももちろんいる。それでも残ってくれている加盟店の方には本当に感謝しているし、業績が厳しい中でもがんばってくれた社員がいたからこそ、ここまでやってこられた。こうした人たちを支えているのは、DXを通じて地域を変えていくという壮大な想い。それを信じて、やってきたが、ようやく稼働率も上がってきた」と実績も出始めた。

 「私たちの強みはオフラインとオンラインをつなげられること。宿泊施設の名物や施設周辺の観光情報といったオフラインの情報を吸い上げ、それをアプリなど使い、お客様に広くみてもらえるようにする」とし、広く発信できるよう現在の課題は「ブランドの認知度をもっと上げること」と位置づける。

 Tabistでは、集客、売上の最大化、生産性向上、オペレーション代行の4つ価値を宿泊施設に対し提供する。「この4つは私たちの一丁目一番地。一方で、宿泊客であるエンドユーザーにも寄り添っていきたい。宿泊施設とお客様、2人の顧客が満足するようなソリューションを見つけて提供していきたいと考えている。どちらかだけを向いているのではだめ」と、両方の顧客と向き合う。

 これを実現するために注力するのはエンジニアの採用だ。「ラッキーなことに優秀なエンジニアを採用できているので、スピード力をもって開発にあたれているが、それでも追いつかない部分がある。採用を今以上に強化していきたい。プロダクトが悪いとお客様は絶対についてこない。ここが私たちの肝なので、一番投資している」と今後を見据える。

 加えて、地域を巻き込んだプロジェクトもすすめる。「加盟店を通じて地域全体を盛り上げるような取り組みを進めていきたい。地域には、少し見方を変えるだけで宿泊施設として新しい可能性を見いだせる部分がたくさんある。先日、新潟県妙高市にある妙高高原に行ってきたが、夏前の空気が大変気持ちよく、近くでとれた山菜など食事も格別だった。しかし春から夏にかけては人が少なく、スキーシーズンに比べて需要の落差が激しい。ここでワーケーションをしたら最高だろうとワーケーションプランを宿泊施設の方と一緒につくることにした」と具体例を挙げる。

 「宿泊施設の方にワーケーションプランを、と言っても、旅館は基本的に座敷だし、デスクもない環境で、すぐに取り組むには難しい。そこで、私たちも一緒にインターネット環境を整え、デスクをそろえるお手伝いをする。それが私たちがいる意味だと思う」と新たなプランにも積極的に乗り出す。

 サービス開始から激動の2年を乗り越え、新ブランドを冠し、新たなスタートを切ったTabist。「私たちの仕事は、営業スタッフと宿泊施設の方の『点』のつながりから始まり、それが面になって広がることで、事業になる。宿泊施設の方が同業者に声をかけてくれて加盟してくださった方もいる。そうした点をこれからも大事にしながら、事業を展開していきたい」とした。

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