ブルーイノベーションは6月21日、世界初となる屋内3Dマッピング用LiDARセンサーを搭載した衝突耐性ドローン「ELIOS 3」の販売を発表した。
同製品の発表およびデモンストレーションは、幕張メッセで開催された「Japan Drone 2022」で実施された。また、同社がサポートしてトヨタ自動車が開発した、モビリティ連携システムである「物流用のドローンポート」の試作機も披露された。
ブルーイノベーションはスイスのFlyability 社が開発した「ELIOS」シリーズの独占販売契約を2018年より締結し、日本国内で点検ソリューションを提供してきた。屋内施設でのドローン点検導入実績は2022年3月末時点で200カ所を超えるという。また「Blue Earth Platform」という、ドローンやローバーなどの多様なロボットの遠隔管理システムも開発している。
ELIOSシリーズは、2011年3月11日に起きた東日本大震災で損壊した原発の建屋内を、人間に代わってロボットで点検するために開発されたドローンだ。球体状のガードを備えているため、煙突などの人が立ち入れない目視外の狭小空間の点検に適しており、現在は世界中で10万回以上の飛行実績、1500台以上の導入実績を持つ。
日本は、その中でも導入が進んでいる先進国で、石油化学プラント、製鉄所、火力・水力発電所などのボイラー、煙突、タンク内部、上下水道施設、地下ピット、バラストタンクといった、非GNSS 環境下の屋内空間で活用されているという。
新機種「ELIOS 3」の最大の特徴は、屋内3Dマッピング用LiDARセンサーと、飛行空間をリアルタイムに3Dモデル化するSLAMエンジン「FlyAwareTM」を搭載したことだ。前方には、4Kカメラ、サーマルカメラ、距離センサーを搭載。1万6000ルーメンの防塵LEDライトは、前機種の1.6倍の明るさを実現したという。
これによって、屋内空間でもリアルタイムに周辺環境をマッピングして、自機位置を把握しながら飛行できるようになった。測量レベルでの点群データ作成も可能とのことで、目視外での手動操縦を余儀なくされるパイロットの強い味方になりそうだ。作業後には、ELIOS 3専用解析ソフト「Inspector 4.0」で、高解像度な3Dモデルレポートを作成、表示できるため、3Dデータを利活用した施設管理や予兆保全にも役立つという。
ブルーイノベーション代表取締役社長CEOの熊田貴之氏は、「従来は、屋外においては詳細な点群データは存在したが、屋内空間でこれほどまで詳細な空間情報、モデリングを実現したのは、世界で初めてではないかと考えている」と語った。(追記)世界初という発言については「屋内点検用として、屋内3Dマッピング用のLiDARセンサーを搭載し、SLAMエンジンとの組み合わせでリアルタイムに3Dデータを作成する「屋内点検用球体の衝突耐性ドローン」は、発表時点でELIOS3以外にはリリースされていないと認識していると説明した。
「ELIOS 3」お披露目の様子
デモンストレーションは、ステージ前方上部に設置した狭い管状の空間で行われ、大勢の人が集まっていた。パイロットがELIOS 3をマニュアル操縦すると、飛行中のドローンがリアルタイムで周辺環境を認識して点群データを構築。ステージの大画面モニターには、パイロットが見ている操作画面が映し出され、観客はリアルタイム3Dマッピングの様子にくぎ付けだった。
「ELIOS 3」リアルタイム3Dマッピングのデモンストレーション
操縦画面には、機体前方がどちらを向いているのか(黄色の矢印)や、フライトした軌跡(紫の線)も表示されていた。機体の位置や飛行経路を直感的に確認しながら操縦できる点は、複雑な空間や暗い空間での目視外マニュアル操縦という、高い操縦スキルを要する点検作業において大きな補助になると感じた。
なお、LiDARを搭載しているポートの隣にはもう1つ空きのポートがあり、カメラやセン サーなどを追加で搭載するといった拡張性も備えている。
本展示では、同社がサポートしてトヨタ自動車が開発した、モビリティ連携システム「物流用のドローンポート」の試作機も披露された。トヨタ自動車は、次世代モビリティをそれぞれ連携させながら、新しい価値を出すこと目指しており、本試作機は物流におけるラストワンマイル配送をイメージしたという。
ドローン本体の自動飛行技術は開発が進んでいるが、荷物をドローンに積み込む、充電するといった作業はまだまだ自動化できていない分野だ。また、着陸精度は高まっているものの、着陸エリアの風況などの影響を受けて、ミリメートル単位での制御は難しいのが実情だ。そこで本試作機は、機体の若干のズレを矯正して所定の位置へと物理的に動かす機能も持つ。今後は、ドローンのみならず地上を走行するロボットなどとも連携して、利用シーンの拡大を図るという。
【編集部注】当初、記事タイトルや本文内にて「世界初のドローン」と記載しておりましたが、正しくは「世界初の衝突耐性ドローン」となります。訂正してお詫びいたします。
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