ノースウェスタン大学の研究者らは5月、カニの形をした非常に愛らしい小型ロボットのプロトタイプを発表した。このロボットは走ったり、ジャンプしたりできる。そして、「robot」の「o」の字の中に収まるほど小さい。
また、記録破りでもある。研究者チームによると、これまでに製作されたリモコン操作式ロボットとして最小という。
だが、この這い回るミニロボットはかわいいだけではない。狭くて手の届かないような場所にも入り込めるので、小型電子機器の製造サポートなどに本格的に採用できそうだ。さらに、体長1mm未満という小ささで、しかも操作はワイヤレスで電気も必要ないため、いつの日か人間の体内を歩き回り、6本足の器用な医療助手として働くことさえできるだろう。
ノースウェスタン大学材料科学工学科のJohn A. Rogers教授は発表の中で、「マイクロロボットは、産業分野では小さな構造物や機械の修理、組み立てのためのエージェントとして、あるいは、医療分野では動脈塞栓除去や内出血の止血、がん腫瘍除去などの外科手術を低侵襲に行うための助手として活躍できるだろう」と述べた。同氏はScience Roboticsに掲載された論文の共同著者だ。
論文によると、Rogers教授のチームは動脈探索ロボットの形状をカニ型にするというアイデアに縛られてはいない。同じようなリモコン式ロボットで、コオロギ、カブトムシ、シャクトリムシの形をしたものも製作した。次世代の小さなロボット労働者がどんな形になるのかは、時が経ってみないと分からない。
「これらの組み立て技術と材料コンセプトであれば、どんなサイズや3次元形状の歩行ロボットでも製作できる。だが、学生たちは小さなカニの横歩きにインスピレーションの面白さを感じた。これはクリエイティブな気まぐれだった」(Rogers氏)
だが、こうしたクリエイティブな発想が、動物をモチーフにした電動デバイスの成功の鍵だったことは確かだ。基本的にこのロボットは、「形状記憶合金」と呼ばれる、2つの異なる状態を示すことができる弾性体でできている。加熱すると、合金はチームが事前に記憶させた形状に変化する。これが、「形状記憶」だ。そして、冷却すると元の変形した形状に戻る。
特殊なレーザー光線を使うことで、カニ型ロボットの目的の部品の形状記憶合金の温度を非常に正確に制御できる。この方法で、その部品の形状を、記憶したものから元の形状へ、また記憶した形状へ、と繰り返し変化させることができる。これにより、ロボットは例えば右から左に横歩きできる。
「ロボットの構造は非常に小さいため、冷却速度も非常に速い。実際、ロボットのサイズを小さくすれば、ロボットの動作はさらに速くなる」(Rogers氏)
以下の動画で実際の動きを見ることができる。
形状記憶合金製のこうしたロボットの製造は、かわいい小さなカニ型ロボットが小型電子機器の中でせっせと働くという思いつきと同様に気まぐれなものだった。
ノースウェスタン大学の機械工学教授で、この論文の共著者であるYonggang Huang氏は次のように述べた。「われわれの技術は制御されたさまざまな動作様式を可能にする。ロボットの平均速度は、1秒で自分の体長の半分の距離を歩く速さだ。このサイズの地上型ロボットで実現するのは非常に困難なことだ」
Rogers氏とHuang氏は、8年前に構築した技術をベースにしたポップアップブック型のメカニズムを採用した。カニ型ロボットは、まず平面状に構築され、伸縮性のある基板に接着される。次に、この基板が収縮することで、貼り付けられたカニが内側に引っ張られ、最終的に立体になる。ロボット開発は、なんともクールだ。
「ロボット工学は刺激的な研究分野だ。超小型ロボットの開発は、学術的調査にとっても楽しいトピックだ」(Rogers氏)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果