政界に進出する「Qアノン」--陰謀論に惑わされないために - (page 2)

Oscar Gonzalez (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2022年06月13日 07時30分

Trump氏がTwitterに復帰?

 4月、Teslaの最高経営責任者(CEO)であるElon Musk氏はTwitterを440億ドルで買収することに合意した。現在、この買収計画は保留状態にあるが、Musk氏は過去に、もしTwitterを買収するならTrump氏のアカウント凍結を解除すると述べていた。Twitterは2021年1月6日の米議事堂襲撃事件の数日後にTrump前大統領のアカウントを凍結している。

 Musk氏によるTwitter買収のニュースは、GabやTelegramといったQAnon信者御用達のソーシャルメディアでは熱狂的に歓迎された。

 QAnonの信者によれば、Qは2017年にTrump氏がTwitterに復帰する可能性を予言しており、Trump氏による「秘密結社」の一掃が完了しようとしている兆候だと指摘した。しかし、QAnonが主張しているあらゆる陰謀論と同様に、これも完全な誤りだ。

 仮にアカウント凍結が解除されたとしても、Trump氏がTwitterでの活動を再開するかどうかは分からない。Trump氏は、他のサイトに情報を投稿する前に、まずは自身のソーシャルメディアプラットフォーム「Truth Social」に投稿する義務があると言われているからだ。

最高裁判所の公聴会

 米上院は4月、Ketanji Brown Jackson判事を53対47の賛成多数で最高裁判所判事に承認した。同氏は、任期が満了する6月に退任するStephen Breyer最高裁判事の後任となる。

 Jackson氏の指名承認公聴会は政治的に荒れるだろうと見られていた。一部の共和党上院議員はJackson氏の過去の司法判断に疑問を呈し、QAnonとの関係を匂わせた。

 ミズーリ州選出のJosh Hawley上院議員(共和党)は、Jackson氏が子供を狙った性犯罪の裁判で甘い判決を下していると訴えたが、この主張は誤解を招くものだと見なされた。他の共和党上院議員、例えばサウスカロライナ州のLindsey Graham氏、アーカンソー州のTom Cotton氏、テキサス州のTed Cruz氏も、Jackson氏は小児性愛者に寛大だと断言した。しかし実際には、この種の裁判で同氏が下した判断は他の判事と大差なかった

 QAnonの信者は、TelegramやTruth Socialといったソーシャルメディアプラットフォーム上で、Jackson氏を批判する共和党上院議員への支持を表明したり、同氏を非難するメッセージを投稿したりしている。Q信者の目には、共和党の上院議員たちの行動は「民主党は小児性愛者の秘密結社の一部であり、子供の性犯罪に目をつぶっている」という陰謀論を支持するものだと映ったのである。

トラック運転手によるワクチン抗議デモ

 カナダでは2022年始め、ワクチン接種の義務化をめぐり、反ワクチン派が首都オタワを占拠する騒ぎが起きた。デモ参加者の秘密兵器となったのはトラックだ。トラックの隊列で道を塞ぐ抗議デモは何週間も続いた。カナダのJustin Trudeau首相は非常事態宣言を発動し、デモ参加者たちを強制的に排除した。

 3月には米国でも、政府のコロナ対策への不満を募らせたトラック運転手たちが、それぞれのトラックでワシントンDCに集結する抗議デモが起きた。ただ、同時期にロシアによるウクライナ侵攻が始まったことなどから、この抗議デモはあまり注目されず、支持も伸びなかった。

 この2つの抗議デモにはQAnonの信者が関わっていた。Qのコミュニティーで飛び交っている新型コロナワクチンに関する誤情報は、他の右翼団体にも広がりつつある。米国とカナダでは、トラック等の車両にQAnonのロゴやスローガンが貼られた。

Disneyへの攻撃

 フロリダ州では3月、「教育における親の権利」法案(反対派によれば「ゲイと言うな法案」)が成立し、州法化された。Disneyでは、会社がこの法案の成立を阻むアクションを起こさなかったことに従業員が反発し、抗議活動を展開した。これを受けて、Disneyは同法の廃止に取り組む姿勢を打ち出した。

 このDisneyの行動は、フロリダ州の知事をはじめ、共和党の議員たちの怒りを買った。フロリダ州議会は4月、Disneyが享受してきた税務上の優遇措置を解除する法案を可決する。さらにDisneyはQAnon信者の格好の標的となった。

 フロリダ州オーランドでは、4月から「Disney World」の入り口で抗議デモが起きた。デモ参加者たちは、Disney Worldをもじった「Ped World(小児性愛者の世界)」、「OK, Boomer」という流行語をもじった「OK, Groomer(黙れ、小児性愛者ども)」と書かれたプラカードを掲げ、大声でDisney批判を繰り広げている。

 QAnonの信者は、こうした抗議活動を支持するだけでなく、Disneyとその最高経営責任者(CEO)Bob Chapek氏に関する誤情報も流し始めた。抗議デモがDisneyにもたらした損失は大げさに伝えられ、Chapek氏が人身売買や児童ポルノで逮捕されたといううわさがまことしやかに語られた。しかしChapek氏と同氏の逮捕に関する主張はでっちあげ以外の何物でもない

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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