政界に進出する「Qアノン」--陰謀論に惑わされないために

Oscar Gonzalez (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2022年06月13日 07時30分

 米国のDonald Trump前大統領をめぐって広まった極右系陰謀論「QAnon」は、Trump氏がホワイトハウスを去った後も消えることはなかった。米国人が気づいているかどうかにかかわらず、この突飛な陰謀論を信じる人は今も相当数存在し、米国の政治論議の一部となっている。

トラック運転手によるワクチン抗議デモ
QAnonは、トラック運転手によるワクチン抗議デモにも関わっていた
提供:Getty Images

 QAnonは2017年10月にインターネットの匿名掲示板に投稿された一連のメッセージから始まった。QAnonの信者たちは、ハリウッドや民主党には悪魔を崇拝する小児性愛者の秘密結社が存在し、Trump氏はこうした悪と秘密裏に戦っているのだと主張する。宗教、文化、公共政策の関係を研究する超党派の非営利組織、公共宗教研究所(PRRI)が2月に発表した調査によれば、米国人の約16%がQAnonの中心となる陰謀論を信じているという。

 「QAnonは、世界を救うための軍事諜報活動を秘密裏に率いているTrump氏というストーリーを中心に据えた運動から、Trump氏どころか、この4年間に登場したどんなシンボルも必要としない運動へと進化した」と指摘するのは、陰謀論の研究者で、QAnonの歴史をまとめた「The Storm Is Upon Us」の著者、Mike Rothschild氏だ。

 陰謀論は危険であり、時に命さえ脅かす。例えば、新型コロナウイルスのワクチンに関する誤った情報は、このウイルスによる死者の増加に一役買った。QAnonが唱える陰謀論は、すでに何度も反証されているにもかかわらず、Trump氏の周辺を超えて、広く政界全体に広がり続けており、2022年もすでに抗議デモ、最高裁の公聴会、法律の成立に影響を及ぼしている。

 「小児性愛者の秘密結社が治療法や技術の普及を妨げている、老いぼれたJoe Bidenが大統領になれたのは大規模な汚職と不正行為のおかげだ、コロナウイルスはでっちあげだ――こういった神話が保守本流の政治と文化のあらゆる側面に影響を及ぼしている」とRothschild氏は言う。

 米国では2022年11月に予定された中間選挙に向けて、選挙活動やソーシャルメディアのフィードに陰謀論があふれるようになるだろう。その影響を認識できれば、誤った情報に気づき、その影響を回避しやすくなるはずだ。

 最近の話題の中からQAnonの陰謀論が直接的、間接的に関わっているものを紹介する。

中間選挙

 2020年の議会選挙では、QAnon支持を表明する候補者が100人近く出馬した。このうち、コロラド州ではLauren Boebert議員(共和党)、ジョージア州ではMarjorie Taylor Greene議員(共和党)らが当選を果たした。

 Grid Newsによると、2022年はすでに28州で78人のQAnon信者が立候補しているという。その中でも特に注目されるのが、「Q」本人だとうわさされているRon Watkins氏だ。

 同氏は、匿名掲示板「8chan」の元管理人であり、ドキュメンタリーシリーズ「Qアノンの正体(Q: Into the Storm)」では、Qによる投稿の多くに関わっていると指摘された人物だ。アリゾナ州第2区に出馬している。

 2020年の大統領選挙では、不正な投票が行われたと繰り返し主張し、共和党内で注目されるようになった(この主張はのちに反証されている)。2022年11月の中間選挙に向け、アリゾナ州では8月2日に同氏を含む、複数の立候補者の中から共和党の候補者を決める予備選挙が行われる。

 ペンシルバニア州知事選挙でも、過去にQAnon支持を表明していたDoug Mastriano氏が出馬し、5月に共和党の指名を獲得した。同氏は2018年にQAnonのハッシュタグやスローガンを含むメッセージを複数回ツイートしている。2022年11月の本選挙では共和党候補として、民主党のJosh Shapiro候補と対決する予定だ。

 Media Mattersによると、Juan O. Savin(ジェームズ・ボンドのコードネーム「007」の響きを模した偽名)を名乗るQAnonのインフルエンサーが、サウスカロライナ州、コロラド州、ネバダ州の州務長官のポストにQ信者を送り込もうとしているという。米国では2020年の大統領選挙と、不正選挙に関する虚偽の主張が引き起こした混乱を機に、州務長官の仕事の重要性にスポットライトが当たるようになった。多くの州では、選挙不正に関する判断には州務長官が関わるからだ。

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