日清食品ホールディングス(日清食品HD)は3月31日、「食べられる培養肉」の作製に日本で初めて成功したと発表した。
「培養肉」とは、畜肉の細胞を体外で組織培養することによって得られた肉のこと。家畜を飼育するのと比べて地球環境に与える負荷が低いほか、畜産のように広い土地を必要とせず、さらには厳密な衛生管理が可能になるなど、さまざまな利点があることから、食肉の新たな選択肢のひとつとして期待されている。
同社は、2017年度から東京大学 大学院情報理工学系研究科 竹内昌治教授の研究グループと、「培養ステーキ肉」の実用化を目指した研究を実施。2019年には、世界で初めて牛肉由来の筋細胞を用いたサイコロステーキ状(1cm×0.8cm×0.7cm)の大型立体筋組織の作製に成功した。
現在は、肉本来の味や食感を持つ「培養ステーキ肉」の実現に向け、立体筋組織のさらなるサイズアップや、おいしさと低コストを両立する大量生産技術の確立を目指して研究を進めている。具体的には、2025年3月までに、厚さ2cm×幅7cm×奥行7cmの大型立体筋組織の作製を目指すという。
同社によると、世界的な人口増加やライフスタイルの変化により、地球規模で食肉消費量の増加が見込まれているという。一方で、畜肉の生産が地球環境に与える負荷や、家畜を育てるための飼料や土地の不足も大きな問題となっており、さまざまな利点をもつ培養肉が注目されている。
なお、食べられる培養肉には、「食用可能な素材のみを使用すること」と「研究過程において食べられる制度を整えること」という2つの大きな課題がある。
これまでの培養肉は、牛肉由来の筋細胞と食用ではない研究用素材で作製されていたというが、同社と竹内昌治教授の研究グループは、独自に開発した「食用血清」と「食用血漿ゲル」を使用。これにより、食用可能な素材のみで培養肉の作製を実現した。
なお、食用血清は、細胞を育てるために必要な栄養成分である培養液の素材として使用。食用血漿ゲルについては、立体筋組織(培養ステーキ肉)を作製するために必要な細胞の足場材料となる素材になるという。
この成果をもとに、同社が「食の安全」に関する知見を生かして構築した培養肉を食べるまでのプロセスについても、東京大学の倫理審査専門委員会から承認されている。
同社では、「素材」と「制度」という2つの課題をクリアしたことで、産学連携の培養肉研究において日本で初めて「食べられる培養肉」を作製。従来の機器を使った分析に加え、人による官能評価が可能になったことで、味、香り、食感などの"おいしさに関する研究開発が大きく進展し、肉本来の味や食感を持つ培養ステーキ肉の実用化に一歩近づいたとしている。
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