人はなぜメタバースの土地に大金を投じるのか - (page 2)

Daniel Van Boom (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年04月12日 07時30分

広がるメタバース

 メタバースに商機を見出している投資家もいる。

 2021年11月、トロント市にオフィスを構える仮想不動産企業Metaverse Groupが、Decentralandのファッション街区の116区画を250万ドル(約3億1000万円)で購入した。

 Metaverse Groupの50%を所有するTokens.comのCEO、Andrew Kiguel氏はこれを安い買い物だったと考えている。理由はClerkclirk氏と同じだ。メタバースに夢中になる人が増えれば、Decentralandの土地の価値も上がる。ソーシャルメディアと同じく、メタバースには広告の仕組みがあるからだ。

 Decentralandのユーザー数は、2021年初頭にはわずか4万人だったが、現在は80万人に増えている。ユーザー数は、少なくとも当面は増え続けるとKiguel氏は見る。つまりDecentralandの住民は新参も古参も、このデジタル世界で過ごす間はほぼ必ず同氏の会社が一等地に所有するバーチャル不動産の前を通る。ソーシャルメディアプラットフォームと同様に、これは格好の広告スペースとなるはずだ。

 「FacebookやInstagramでは5回程度スクロールすると広告が表示される」と、Kiguel氏はZoomで語った。「これと似たような話だが、違うのはタイミングだ。われわれは広告が掲載される場所を、先回りして買っている」

Decentraland
提供:Decentraland

 Decentraland とTokens.comは3月下旬、ファッションイベント「Metaverse Fashion Week」を開催した。これはニューヨークやロンドンで開催される「ファッションウィーク」を模したイベントで、Dolce and GabannaやHugo Boss、Tommy Hilfigerなどのブランドが参加した。

 Kiguel氏の計画は、仮想資産への投資を収益化する1つの方法を示している。今回のファッションイベントはDecentraland内で開催されたが、Metaverse Groupを含め、使用される区画の所有者には使用料が支払われる。会場の周辺ではアフターパーティーも開催されたため、不動産の所有者は入場料という形でさらなる収入を得ることもできる。デジタル広告枠を売りに出してもいい。現実世界と同じように、広告枠がほしいブランドは入札に参加できる。

 各メタバースはそれぞれの方法で住民を誘い込もうとしている。Decentralandはシミュレーション系の世界だ。ユーザーは自分のアバターを作成し、現実世界を模した世界で他のユーザーと交流する。Sandboxはゲーミフィケーションに力を入れている。ワールド内には「マインクラフト」を思わせる空間が広がり、アイテムを作ったり、家を建てたり、さらにはゲームを作ったりするためのツールも充実している。Decentralandと違うのは、まだ一般には公開されていないことだ。10月にクローズドベータテストが始まり、まもなくオープンベータが公開される。仮想不動産の市場はすでに誰でも利用できるようになっており、先日はヨットのNFTが65万ドル(約8000万円)で落札された。

 DecentralandでもSandboxでも土地の価格は高騰している。仮想の土地は今も未来も、消費者の注意を引くために活用できると考えられているからだ。

 Sandboxの開発元Animoca Brandsの共同創設者Yat Siu氏は、「Sandboxの土地の価値は土地そのものにあるわけではない」と言う。「土地の価値は、そのスペースで最も大きな影響力を持つ人がその土地で活動している、という点にある」

 こうした影響力を持っているのはAdidasやAtariといったブランドであり、Paris HiltonやSnoop Doggといったセレブリティーだ。特にSnoop DoggはSandboxで活発に活動しており、ワールド内に豪邸を構え、パォーマンスやパーティーを開催している。セレブリティーが引っ越してくると近隣の土地の価格が上がるものだ。SandboxでもSnoop Dogg邸の隣の土地が45万8000ドル(約5600万円)で落札された。

Sandbox
提供:Sandbox

錯綜する思惑

 メタバースの熱烈な支持者たちは仮想世界の未来を確信している。しかし現在の取引スピードは、仮想資産に対する関心の持続可能性に疑念を抱かせるものだ。多くの投資家が短期間で売買を繰り返している現状では、仮想世界に長期的にかかわる意思があるのかどうかを見極めることは難しい。

 Clerkclirk氏を例にとろう。同氏がWorldwide Webbの不動産を買ったのは、その背後にいる運営会社が実用に耐える製品をリリースし、仮想世界を舞台にしたゲームを次々に発売する計画を打ち出していたからだ。しかし購入した不動産が値上がりすると、不動産を売却せず持ち続けるという選択を正当化するほどには、将来の計画は魅力的には映らなくなった。

 同氏は3月下旬に3万6000ドル(約440万円)で買った不動産を、2日後に12万6000ドル(約1500万円)で売却した。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]