手頃な価格にもかかわらず、Galaxy A53 5GはGalaxy S21 FE(699.99ドル、約8万6000円)のような上位機種とほとんど見分けがつかない。サムスンの多くの新型モデルと同様に、端末の前面はほぼディスプレイとなっており、自撮り用カメラの小さな穴が1つだけ空いている。外観だけで言えば、Galaxy A53 5Gはサムスンがこの3年間に発売したスマートフォンとほとんど変わらない。
サムスンがGalaxy A53 5Gで目指していることは明らかだ。つまり、手頃な価格の端末にハイエンド機種の機能を搭載することだ。カメラシステムはその一例であり、6400万画素のメインカメラ、1200万画素の超広角カメラ、500万画素のマクロカメラ、500万画素の深度センサーからなる、マルチレンズシステムを採用している。
これまでは最上位機種にしか搭載されていなかった最大120Hzのリフレッシュレートにも対応し、滑らかなスクロールを実現した。これと比較すると、新型iPhone SEは標準的な1200万画素のカメラレンズを1つ搭載しているにすぎない。現在のiPhoneの中で、画面のリフレッシュレートを上げられる機種は「iPhone 13 Pro」(999ドル、日本では12万2800円)と「iPhone 13 Pro Max」(1099ドル、同13万4800円)のみだ。
もっとも、サムスンがGalaxy A53 5Gで一切の妥協をしなかったわけではない。サムスンの上位機種と異なり、Galaxy A53 5Gには望遠レンズがない。これは価格を下げるための妥当なトレードオフだ。
それでもAppleと比べれば、サムスンは格安モデルと上位モデルの差を埋めることに成功しているように見える。筆者はGalaxy A53 5Gを実際に使ったことはないが、先行機種を使ってみて、最新のスマートフォンに1000ドル近くを払うのはもうごめんだと思うようになった。しかし、Galaxy A53 5Gは新型iPhone SEと異なり、上位機種と同じプロセッサーを搭載しているわけではない。
Galaxy A53 5Gが搭載しているチップは、サムスン製の「Exynos 1280」だ。SamMobileによると、このチップはQualcommの「Snapdragon 778G」に似た、ゲーミング性能を持つミドルレンジのプロセッサーだという。2021年に英国で発売されたA52のバリエーション、「Galaxy A52S 5G」にも同じチップが搭載されている。しかしサムスンのExynos 1280は、iPhone 13や「Pixel 6」に搭載されているプロセッサーと同じ、5ナノメートル(nm)の製造プロセスで作られている。一般に、この数字が小さくなるほどトランジスタ数が増え、性能とエネルギー効率が向上する。
手頃な価格のスマートフォンについて、サムスンとAppleは異なるビジョンを持っているが、どちらのアプローチも今のところは成功しているようだ。AppleはiPhoneの機種別売上高を公開していないが、iPhone SEが発売された2020年の第3四半期決算発表で最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏は、同モデルがiPhone全体の成長をけん引していると語った。そしてiPhone SEの小ささが、スマートフォンを長年買い換えていなかった消費者を魅了したと分析した。Counterpoint Researchの調べでは、2020年発売のiPhone SEは、2021年に最も売れたスマートフォンのトップ10にランクインしている。
Galaxy Aシリーズもサムスンでは人気のモデルだ。米CNETが入手したCounterpoint Researchのデータによると、サムスンが2021年に販売したスマートフォンの58%をGalaxy Aシリーズの端末が占めた。サムスンの「Galaxy A12」もiPhone SEと同様に2021年のベストセラーのトップ10に入っている。
Galaxy A53 5Gと新型iPhone SEは単なる安価なスマートフォンではない。この2つの端末は、Appleとサムスンがモバイル端末にとって最も重要だと考えているものを伝えている。サムスンの場合、それは長いバッテリー持続時間、大きな画面、複数のカメラなのだろう。一方、Appleは上位モデルに近いパフォーマンスを実現することに注力している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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