リブランディングにより世の中からの見られ方は変わり、ブランドの世界観も統一できたという。西野氏は、「この姿が定まると、いろんなことにチャレンジしやすくなった」と話し、さまざまな新たな取り組みがスタートしたことを紹介した。
「スマートエイジング」という提供価値から、「1人ひとり異なるビューティーの価値基準に合わせて、どういうふうに美容をお届けできるかを考えた」という。まず着目したのが、つねに手元にあるスマートフォンだ。AIを活用して、その人に合うパーソナルカラー、似合う眉の形などを診断するアプリ内サービスを無料で展開している。「自分らしい美しさ」の発見や「なりたい自分」の実現に向けてテクノロジーを活用し、手軽さや精度が高いといった評価され、アプリ会員登録者数は281万人(2022年2月末現在)を超えた。
また、どんなに良い商品を作っても、ラストワンマイルで提供できなければ意味がない。物流は事業の基盤を支える大切な部分であり、ECをはじめ複数の販売チャネルのあるオルビスでは、顧客体験の源として特に重視している最新テクノロジーの積極活用によって、2020年8月に通販向け出荷ラインに無人搬送ロボットAGVを330台導入した。2020年7月には、オルビスのブランド思想を体現する体験特化型施設「SKINCARE LOUNGE BY ORBIS(スキンケア ラウンジ バイ オルビス)」も東京・表参道にオープンした。並行して、新しい事業開発にもチャレンジしてきたという。
西野氏は、「新規事業を拡張するために、3つの軸をとても大事にしながら進めてきた」と話した。1つめは、「誰がやるか」。2つめは、「なぜやるのか」。3つめは、外部との共創やオープンイノベーションも含め、「どうやるのか」だ。
新規事業は、「過去はどうだった」「検証はしたのか」「リスクはどうだ」と、過去慣性に引っ張られる傾向が強い。このため、1つめの誰がやるかのポイントは、“1番未来を熱く語れる、ビジョンを持っているキーマン”を探すことだったという。
オルビスはそのキーマンを見つけ、まずは社長直下のプロジェクトとして、フットワーク軽く取り組んだ。「10年後のオルビスは、どうあるべきか」を議論し、「パーソナライズスキンケア」という1つの回答を導き出し、それを拡張する形で新規事業開発をミッションとする組織を2021年に組成した。
オルビスは、2021年4月にcocktail graphy(カクテルグラフィー)、2021年9月にINNER COLOR SALADを、新規事業としてリリースしたが、「なぜやるのか」と「どうやるのか」は、いずれの案件でも非常に重要だったという。
cocktail graphyは、気になったときに肌の状態を測定できる手のひらサイズのIoTデバイス「スキンミラー」と、測定結果を正確に把握できるアプリ、そこから届けられる肌の状態にあったスキンケア商品という、3つで構成されるサービスだ。パーソナライズスキンケアという、なぜやるのかを体現するサービスとして、“自宅の洗面所がパーソナルビューティカウンターになる”という世界観を実現した。
どうやるかでは、数あるテクノロジー企業の中から、Ridgelinezとの共創を選んだという。互いに、“人起点”でソリューションを提供することに重きを置くという共通点があったからこそ、ワンチームとして取り組めたという。
IINNER COLOR SALADは、「本来持つ力を信じて引き出す」「何か一緒に作れないか」と共創の探索が始まった新規事業だ。オルビスはもともとサプリメントでインナーケアを目指してきたが、「普段の食生活に、もっと入り込んでいける形」も求めていた。そんな中で、植物の力をテクノロジーで引き出すプランテックスと出会い、女性の健康を応援するCURATIVE KITCHENとも組んで、気分や摂りたい栄養素に合わせて選べるIINNER COLOR SALADを開発した。
西野氏は、「新規事業を量産する秘訣は、社内にキーマンを見つけてスピーディに意思決定していくこと、ありたい姿を常に判断軸にして立ち返りながら進めていくこと、自分たちではできないところに強みを持ち、想いや思想で共鳴できるところとシナジーを生んでいくこと、この3つが大事だと思う」と総括して、講演を締め括った。
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