TCLは依然として折りたたみスマートフォンを発売していないが、新しいアイデアは次々と舞い降りてきているようだ。世界最大規模のモバイル機器展示会「Mobile World Congress」の開催に先立ち、TCLは2つの新型折りたたみスマートフォンのコンセプト機をお披露目した。1つは、画面を内側にも外側にも折りたためるモデル、もう1つは、画面を折りたためるだけでなく、大きく拡張することもできるモデルだ。
TCLは、画面を両方向に折りたためるモデルを「360-degree Ultra Flex」(以下Ultra Flex)、画面を折りたためるだけでなく、一部を本体の内部に巻き込んだり、外側に引き出したりできるモデルを「Fold N' Roll」と呼んでいる。どちらもまだ試作品であり、コンセプトの域を出ておらず、このまま製品化されるわけではない。TCLによると、Fold N' Rollは中国でデモをしたことがあるが、Ultra Flexは今回が初公開だという。この2つの試作品が示しているのは、TCLが開発しようとしている折りたたみスマートフォンの方向性だ。Appleとサムスンがほぼ独占しているこの市場で、TCLは自社を差別化できる場所を探っている。
米市場調査会社International Data Corporation(IDC)の報告書によると、折りたたみスマートフォンはまだ初期の段階にあり、2021年のスマートフォン市場全体に占める割合は0.5%にとどまった。しかし、この割合は2025年には1.8%に上昇する見込みだという。同報告書はまた、高価格帯の「Android」スマートフォン市場では、折りたたみスマートフォンが3分の1を占めるようになると予測している。そう考えると、この2年間にサムスン、Microsoft、Motorolaが折りたたみスマートフォンを相次いで発売したことや、Appleが折りたたみ式「iPhone」を開発しているといううわさがあることも驚くに値しない。
2つのコンセプト機のうち、Ultra Flexの方は現在販売中の折りたたみデバイス、例えばサムスンの「Galaxy Z Fold3」やMicrosoftの「Surface Duo 2」とよく似ている。この2つの機種と同様に、Ultra Flexも本を開くように本体を開くことで、内部ディスプレイを拡張できる。さらに外側に向けて折りたたむことも可能だ。外側に折りたためば画面が手前に来るので、片手での操作も可能になる。
Ultra Flexは、デザイン的にはGalaxy Z Fold3とSurface Duo 2を掛け合わせたような印象を受ける。MicrosoftのSurface Duo 2は、2枚の画面が中央のヒンジでつながれているが、TCLのUltra Flexは、1枚の大画面を半分に折りたたむ仕様だ。Surface Duo 2と同様に、後方に折りたためば複数のモードで使用できる。1枚の画面を半分に折りたためるという点では、Ultra FlexはサムスンのGalaxy Z Fold 3と似ているが、サムスンのGalaxy Z Fold3はUltra FlexやSurface Duo 2と異なり、後方に折りたたむことはできない。
Ultra Flexは厚みがあるため、完全に後方に折りたたんだ状態だと、片手ではやや持ちにくい。実際の製品では、画面を完全に開いてタブレットのようにして使うか、本のように角度を付けた状態で使う人が多いだろう。また、この試作機はヒンジの存在が目立つ。触った感じはしっかりとしていて、手前にも後方にも簡単に折りたたむことができた。後方に完全に折り返したときも壊れそうな感覚はなかった。
TCLのUltra Flexは、8インチのAMOLEDスクリーンを採用しており、画面解像度は2480×1860だ。これはGalaxy Z Fold3の内部ディスプレイ(7.6インチ)よりも大きい。しかし、デモ機の使用中は電源を入れられなかったため、実際の使用感は分からない。また、端末のプロセッサーやカメラの解像度といった細かい仕様もまだ公開されていない。しかしスタイルやデザインについて言えば、TCLが折りたたみスマートフォンで目指している方向性は十分に伝わってきた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス