「いま佐久市が面白い」ーーそんな話を聞き、東京駅から約90分で行ける長野県佐久市のコワーキングスペース「ワークテラス佐久」にお邪魔し、ワーケーションを体験してきたのでその模様をお届けする(とはいえ、実際は読書していただけだったが)。
そもそものきっかけは、メタバースだった。友人の紹介で、ワークテラス佐久を拠点に活動する地域団体「SAKU SAKU SAKK」のまちづくりコーディネーターの柳澤拓道氏と知り合い、Facebook(現:Meta)のVR会議ツール「Horizon Workrooms」で2021年9月に開催された「SAKK Coworking in VR - 日本初のVRコワーキングスペース」というイベントに参加。佐久市の魅力を聞き、「行ってみたい」と興味を持ったところが始まりだ。
佐久市は、⻑野県東部に位置する人口約10万人の高原都市。豊富な水源、全国トップクラスの晴天率や、熱帯夜に苦しまされることのない高原ならではの自然環境に恵まれ、「日本三大ケーキのまち」「地域医療のまち」「佐久鯉の名産地」としても知られるそうだ。
東京から北陸新幹線に乗れば、PCを開いて仕事をしようと思った矢先に着いてしまうような地の利に加え、働き方の変革にともなう複業推進や、コロナ禍によるテレワーク推奨の流れも受けて、移住者や多拠点居住者も増えているとのこと。
同市役所主導で、コミュニケーションツール「Slack」を使った移住促進のオンラインサロン「リモート市役所」を開設し、住民や移住希望者たちが情報交換をするなどの先進的な取り組みも生まれている。
今回は「ワンタイム利用」という形で、ワークテラス佐久を利用した。3時間までは500円で、それ以上はどれだけ滞在しても1000円だ。この日は朝10時過ぎから夕方まで丸々過ごしたので、とてもお得に使うことができた。
外の景色を楽しめる、窓際の広々としたテーブル席を利用。ゲスト用Wi-Fiが飛び、コンセントもついているので、スマートフォンなどの電子機器も充電しながらしっかり使える。会議室や、さまざまな人とわいわい交流したい人向けの「コワーキングエリア」、静かに集中して作業をしたい人向けの「集中エリア」、子どもと一緒に過ごせる「子ども連れスペース」などもあった。
ポットのお湯は自由に使うことができ、地元の紅茶輸入販売店がブレンドしたティーバッグも買える。紅茶を楽しみながら豊かな心持ちで作業に向き合える点も快適だ。
月額の会員制度もあり、ワークテラス佐久では会員同士の交流もサポート。入口付近には、それぞれの会員が自己紹介する紙が貼られていて、館内にいる時にその紙を近くに描かれた館内の案内図に貼ることで、「いま柳澤さんはオープンラウンジにいるんだな」などが分かる。仲の良い会員ができたら、「ちょっとあいさつしてから、作業しようか」という形で交流が生まれる。
ちなみにこの日も、柳澤さんと地元の食材を使ったおいしい洋食屋でランチをした後、ワークテラス佐久に戻ると、柳澤さんのVRイベントで知り合った移住者の起業家の方とばったり遭遇。
「やっと会えたね」と立ち話がてら、「今後、メタバースビジネスが広がることを考えると、3Dデザインが学べる子ども向けイベントなどを佐久で開くのはどうだろう」などと会話が弾んだ。こうした気軽な意見交換ができることが佐久の魅力だな、と再確認できた。
東京に戻る前には、ラーメン好きの柳澤さんのオススメで、信州味噌の発祥とされる地元の安養寺味噌を使ったラーメンを出すお店で夕飯。今回、地元の温泉を楽しむ時間がなかった点が心残りだったが、それでも心も体も満ち足りて、帰京することができた。
ワーケーションの魅力は何かと考えると、地元の温泉や文化、おいしい食べ物を楽しみながら作業ができることで、幸福度を高めながら仕事に向き合える、という点があるだろう。
それに加えて佐久市では、東京に近い地の利の良さもあって、移住者や多拠点居住者も含めた多様な人材との交流が望める。新たなビジネスの種が芽吹く空気感が醸成されつつあるように感じた。メタバースのような最近のバズワードに関するアンテナの感度の良さも、今後のビジネスや地域の活性化を考える上で、重要なポイントだろう。
SAKU SAKU SAKKでは随時イベントを開いて、Facebookページなどで告知している。面白そうなイベントがあれば参加し、佐久の人たちとの交流を深めたいと思う。
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