会社員が「ワーケーション」する際に気をつけること--有給にするかテレワークか

鈴木円香(一般社団法人みつめる旅・代表理事)2022年01月15日 08時00分
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 新型コロナウイルスの蔓延にともないテレワーク人口が増えたことで、コロナ前よりは会社員であってもはるかにワーケーションを実践しやすくなりました。それでも依然として、会社の制度としてワーケーションを導入していたり、ワークスタイルの一つとして認めている企業は少数派です。

 今回は、会社員がワーケーションを実践する際に頭に入れておきたいことをまとめました。まだ同僚の中でもワーケーションに挑戦した人がいない、そもそも「ワーケーション」という言葉が社内で通じるかどうかも自信がないという読者の方もいらっしゃるかもしれません。

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 しかし、一部の企業はコロナ前からワーケーションが社員に与えるポジティブな効果に着目して制度として取り入れています。まだまだこれから普及していく新しいワークスタイルですが、読者の皆さんが先陣をきってチャレンジしてくださることで、日本の職場にも定着していけば嬉しい限りです。

有給を取っていくか、テレワークとして行くか

 まず、会社員がワーケーションをする場合、会社にどう報告するかは、大きく分けて次の2通りがあります。

(1)有給を取得して「休暇」として出かける
(2)テレワーク申請をして「業務」として出かける

 (1)は、会社員であれば誰しもが有給取得が認められているので、まずはこれを活用してワーケーションに挑戦してみるのもアリです。実際、「金曜日と月曜日」または「木曜日と金曜日」に有給を取得し、土日とつなげて3泊4日をワーケーションのために確保するという方は多い印象です。この場合、休暇中にプライベートで旅行をするのと同じですから、会社に対して「ワーケーションに行きます」と報告する義務はありません。

 ただし、会社によって休暇中に社用のPCなど仕事道具をオフィス外に持っていくことや、公共スペースで使用することを禁じている場合もありますので、人事部やIT部門に確認するようにしましょう。

 続いて(2)の場合、テレワークが認めらているかどうかは会社によって異なるので、まずは自分が勤務する会社が社内制度としてテレワークを実施しているか、実施している場合、自分が制度の対象かをまずは確認してください。会社によっては「緊急時に2時間以内にオフィスに行けること」などをテレワークの条件にしている場合もありますので、旅先がその範囲内にあるかも要確認です。

 「テレワークは制度としてあるが、社内に浸透していなくていきなり申請しづらい……」という場合は、まず直属の上司に「ワーケーションをしてみたい」と相談してみましょう。

 (1)の場合も(2)の場合も、働き方として社内に広めるため、出かける前は「今度ワーケーションをやってみます」と周囲に話してみたり、帰ってからは実践してみた感想などを積極的に発信してみたりすることをオススメします。

会社の制度としては、出張よりもテレワークに近い

 会社員の方から寄せられる質問として多いのが、仕事で遠くへ出かけていく「出張」や、オフィス以外の場所で仕事をする「テレワーク」とどう違うのか?という質問です。

 会社の制度としては、ワーケーションは「出張」よりも、むしろ「テレワーク(リモートワーク)」と同じ扱いにしている企業が多いです。仕事をしている場所と時間をあらかじめ会社に申請し、その部分のみを「就労時間」と見なします。

 その際、労災の適用範囲については個別に判断することになりますが、「就労時間」は原則対象となります。「就労時間」以外の部分、つまりVACATIONの部分は「余暇」と見なされるので、労災などの対象には原則なりません。具体的には、会社にテレワークの申請をせずに内緒でワーケーションをしていた場合、または「就労時間」外に旅先でサーフィンや釣りをしていて事故に遭った場合などは、原則労災などの対象外です。

 その意味では、自宅を出てから帰るまでの全行程が業務と見なされ、労災などの対象となる出張とは異なります。また旅費も出張とは異なり現時点では全額自己負担としている企業がほとんどです。

 また、一部の企業で制度化されている「出張+休暇」の「ブレジャー」では、3日間の出張に2日間の休暇をつけて4泊5日である地域に出かけるような利用の仕方を想定しています。この場合、前半の3日間を就業日、後半の2日間が休暇となりますが、筆者が取材したある企業では3日目の業務終了時間までを「就労時間」として会社が把握し、それ以降の時間との境で手当などの支給の是非を決めています。

ワーケーションを社内制度化している企業

 ワーケーションを会社の制度として取り入れている企業は、日本国内にもいくつかありますが、特にJAL(日本航空)の例がよく知られています。

 JALでは、2017年からワーケーション制度を導入しています。休暇に一部業務を認める制度で、例えば旅行や帰省で出かけている数日のうち半日だけを業務に充てたい場合、場所と時間を申請すれば、通常のテレワーク(リモートワーク)の枠内で自由に仕事ができるというものです。

 2017年の導入初年度は11人が利用しただけでしたが、その後利用する社員はどんどん増え、2020年度にはテレワーク可能な社員2000人のうち約530人(合計で918人日)がワーケーションをしました。さらに2019年からは、出張時に休暇がつけられる「ブリージャー制度」も導入。たとえば、月火水と出張ならそこに木金を有給休暇としてくっつけるなどして、まるまる1週間出張先に滞在し休暇も楽しめるようにする制度です。こちらの制度も2019年度だけで168件の利用がありました。

 実際にワーケーションを制度として会社で導入するまでには、「休暇中まで働かせるのか」といった声も届くなど、ちょっとしたハードルもあったそうですが、実際にスタートしてみると、意外にも決裁権のある40代以上の社員が真っ先に実践し始めました。

 「管理職になってからは、なかなか長期休暇が取れずにいたけれど、久しぶりに家族と海外に行けた」「インプットをする旅は、思えば学生の頃以来だったけれど、新鮮な刺激を受けると仕事にもプラスになる」などのメリットを実感した決裁権のある社員が、「これはいい!」とワーケーションのリピーターになったことで、20代、30代の若手社員にもスムーズに浸透していったそうです。

 ワーケーションは、日本の企業の働き方を時代にあったものに変えていくための、最初の小さなムーブメントだと思います。「うちの会社では無理……」と最初から諦めてしまわずに、有給制度やテレワーク制度など既存の制度を上手に使って、社員の方一人ひとりがまずは小さくでも実践してみることがとても大切です。

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鈴木円香(すずき・まどか)

一般社団法人みつめる旅・代表理事

1983年兵庫県生まれ。2006年京都大学総合人間学部卒、朝日新聞出版、ダイヤモンド社で書籍の編集を経て、2016年に独立。旅行で訪れた五島に魅せられ、2018年に五島の写真家と共にフォトガイドブックを出版、2019年にはBusiness Insider Japan主催のリモートワーク実証実験、五島市主催のワーケーション・チャレンジの企画・運営を務め、今年2020年には第2回五島市主催ワーケーション・チャレンジ「島ぐらしワーケーションin GOTO」も手がける。

「観光閑散期に平均6泊の長期滞在」「申込者の約4割が組織の意思決定層」「宣伝広告費ゼロで1.9倍の集客」などの成果が、ワーケーション領域で注目される。その他、廃校を活用したクリエイターインレジデンスの企画も設計、五島と都市部の豊かな関係人口を創出するべく東京と五島を行き来しながら活動中。本業では、ニュースメディア「ウートピ」編集長、SHELLYがMCを務めるAbemaTV「Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース〜」レギュラーコメンテーターなども務める。

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