ワーケーション初心者がおかしがちな「失敗」とは?--旅先で注意したいポイント

鈴木円香(一般社団法人みつめる旅・代表理事)2021年12月25日 08時00分
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 前回は、ワーケーション先に着いてからの過ごし方のコツとして、「余白」を盛り込んだ旅程が大切という話を書きました。今回はそこからさらに踏み込み、私自身の失敗談も踏まえながら、旅先での過ごし方で注意したいポイントについて説明したいと思います。

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 ワーケーション初心者がよくおかしてしまう失敗はやはり、あれもこれもと予定を詰め込みすぎることです。この回で詳しく説明していくように、ワーケーションは「自分の時間」を棚卸しする、またとないチャンスです。

・挑戦したい新鮮な体験がたくさんある。
・やらなきゃいけない仕事もそれなりにある。
・一緒に楽しみたい家族や友人もいる。

 どれも捨てがたいものばかりです。できれば、全部に時間をうまく割り振りたい。その気持ちはとてもよくわかりますが、選ぶしかありません。「全部」は無理なのです。どれに優先的に時間を使いたいかを自分で決めてください。なぜなら、「全部」を取ろうとした途端、お金も時間も投資したせっかくのワーケーションが、ただただ疲れるだけの苦行に変わってしまうからです。まさに、二兎を追うものは一兎をも得ず、です。

限られた時間を「自分は今何に一番使いたいか?」

 何を隠そう、私自身も自分がワーケーションを「する側」として、「全部」を取ろうとして見事に失敗した経験があります。ワーケーション初心者の頃、娘はまだ4歳でした。仕事は普段と同じようにすべての定例ミーティングをそのままGoogleカレンダーに入れ、タスクの作業時間もカレンダーの隙間に確保。ミーティングとミーティングの間に娘を連れて車でビーチに移動して、波打ち際で遊んでからカフェでバタバタと食事を済ませ、また次のミーティングに滑り込み。

 その間、イヤホンやPCの充電が切れないかハラハラしながらコンセントを探し続け、「おなかは空いていないか」「熱中症になりかけていないか」「十分に水分をとっているか」など娘の様子にも神経を使います。夜は夜で、地元の人がバーベキューに誘ってくださるので参加するも、娘はウトウトし始めて結局あまり話せないまま退散……。

 そんなことをしていては、初日からもうヘトヘトです。子どもの機嫌もだんだん悪くなっていき、それを見てさらに自分の気分も落ち込んできます。だからこそ、「限られた時間を、自分は今何に一番使いたいか?」という問いに自分なりに答えを出してから、ワーケーションに行きましょうと強調したいのです。

予定は「たった1つの問い」で決まる

 ワーケーションの場所選びについての記事で書いた通り、ワーケーション先は、自分が心底行きたかった場所のはずですから、体験したいことが盛りだくさん。「場所」を選ぶときと同じように、自分のハートによく耳をすませて、今、どんな体験が一番したいか、その土地で何を一番味わいたいかを聞き出してください。「この場所に行きたい!」と決めたときに、セットで浮かんできた「こう過ごしたい!」というイメージがあるはずです。それも参考にして、自分にとっての最優先事項を見つけ出してみてください。

 たとえば、「とにかく海がきれいな場所で、大学時代以来まったくやっていなかったダイビングに時間をたっぷり使いたい」という方がいたとします。平日も土日もとにかく晴れた日の午後はできるだけ海に潜る時間を確保したい。この想いが、ワーケーション中の「時間」を設計する際の軸になります。

 軸を中心に据えてから、「仕事」や「家族」などの要素を配置していきます。午後はダイビングに充てるとしたら、仕事は午前中や日が沈んでからの時間帯に集中的に片付ける必要が出てきます。そうすると、仕事に割ける時間は1日平均してせいぜい5〜6時間ほど。ここに欲張って、「家族との時間」や「地域との交流」まで入れ込んでしまうと、過去の私と同じ轍てつを踏むことになります。

 最終的には「今回はダイビングと仕事だけに集中するために、家族の都合を調整して一人旅にしよう」という結論になるかもしれません。他の人と一緒にやらなくてはいけないミーティングや商談などの予定は平日の午前中に集中させ、午後はフリータイム、日没から就寝までのどこかの時間帯でメールチェックや一人で完結する作業を済ませる。こういうふうに時間の使い方をデザインしていくのです。

優秀なビジネスパーソンほど「選ぶこと」が苦手

 「時間」の使い方を考える際に、仕事も遊びも家族も全部詰め込みたくなってしまいますよね?という話をしましたが、都市部でバリバリ仕事をしているビジネスパーソンほど、「選ぶこと」が苦手な印象です。どうしても「あれもこれも」「どっちも」「全部!」と欲張ってしまいがち。

 でも、それは考えてみれば仕方のないことなのです。なぜなら、これまでの人生では「選ぶこと」よりも「選ばないこと」の方を求められてきたからです。社会的にも「どっちかを選ぶこと」よりも「どっちも手に入れること」がよしとされていて、そういうメッセージがたくさん発信されています。

 「キャリアもプライベートも」「仕事も育児も」「キャリアアップ(出世)も家庭も」「やりがいも収入も」「安定も楽しさも」……などなど、就職、結婚、転職、出産、出世とあらゆる人生のターニングポイントで私たちにかかる「どっちも手に入れること」のプレッシャーは、かつてなく強まっているように思えます。ゆえに、私たちは「選ぶこと」が苦手になってしまっているのです。

 でも、人生を本当に意味のあるものにしようとすれば、どこかの時点で「本当に欲しいものだけ」に絞って、そこに時間、お金、エネルギーなどのリソースを集中させ、他のオプションは捨てる勇気を持つ必要があります。

 「どっちか」よりも「どっちも」をよしとする価値観は、私たちの無意識に長年刷り込まれてきたので、いきなり切り替えるのは難しいと思います。ですから、まずはワーケーション中だけでも、勇気を出して本当に欲しいものだけを選び取り、他のオプションは捨てる練習をしてみてください。一度やってみると、「捨てる」は「怖いこと」ではなく、「楽しいこと」だと実感していただけるはずです。

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(書籍「どこでもオフィスの時代」に関する情報はこちら

鈴木円香(すずき・まどか)

一般社団法人みつめる旅・代表理事

1983年兵庫県生まれ。2006年京都大学総合人間学部卒、朝日新聞出版、ダイヤモンド社で書籍の編集を経て、2016年に独立。旅行で訪れた五島に魅せられ、2018年に五島の写真家と共にフォトガイドブックを出版、2019年にはBusiness Insider Japan主催のリモートワーク実証実験、五島市主催のワーケーション・チャレンジの企画・運営を務め、今年2020年には第2回五島市主催ワーケーション・チャレンジ「島ぐらしワーケーションin GOTO」も手がける。

「観光閑散期に平均6泊の長期滞在」「申込者の約4割が組織の意思決定層」「宣伝広告費ゼロで1.9倍の集客」などの成果が、ワーケーション領域で注目される。その他、廃校を活用したクリエイターインレジデンスの企画も設計、五島と都市部の豊かな関係人口を創出するべく東京と五島を行き来しながら活動中。本業では、ニュースメディア「ウートピ」編集長、SHELLYがMCを務めるAbemaTV「Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース〜」レギュラーコメンテーターなども務める。

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