米国の大手スポットコンサルが「ビザスク」の傘下に入った理由--日米2トップインタビュー

 その道のプロに1時間単位で相談できるスポットコンサル事業を展開するビザスク。「世界で1番のナレッジプラットフォーム構築」を掲げる同社が、2021年の米国大手Coleman Research Group(以下Coleman)買収を経て、2022年はグローバルへの本格展開を加速する見込みだ。

 Colemanの買収額は約112億円。「小が大を買った」と話題になったが、この買収によりアドバイザー数は40万人超、世界7拠点(米国3拠点、欧州1拠点、アジア3拠点)、350人体制へと急拡大を遂げた。

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ビザスク代表取締役CEOの端羽英子氏(右)と、ColemanのCEOとビザスクの取締役を兼任するケビン・コールマン氏(左)

 ビザスク代表取締役CEOの端羽英子氏と、2021年11月からColemanのCEOとビザスクの取締役を兼任するケビン・コールマン氏に、両社統合の目的や狙い、スポットコンサル市場の日米の違い、統合で大切にしたいカルチャー、今後の連携やグローバル展開などについて聞いた。

日本とグローバルの同時展開は「私たちの使命」

——まず端羽さんにお伺いしたいのですが、Colemanを子会社化した経緯や狙いを改めて聞かせてください。

端羽氏 : もともと、ナレッジプラットフォームのビジネスをすると決めたタイミングで、いずれはグローバルにいくと決めていました。当たり前ですが、ビジネス上の大事な意思決定をする時に必要な知見は、日本の中のだけ、日本語だけというわけではありませんから。

 実際、シンガポールにオフィスを開いてみると、海外のニーズがかなり高いことが分かりました。それで割と早いうちから、海外M&Aはしたいと考えていて、2020年にマザーズに上場してからは、具体的に準備を進めてきました。

——海外のニーズとは、どういうものが多かったですか?

端羽氏 : たとえば、素材や部品をお持ちの方が顧客の話を聞きたいという場合は、当然、潜在顧客はグローバルにいます。あるいは、日本で新しいビジネスを立ち上げるときに先行事例をリサーチする場合には、米国で流行っているサービスをヒアリングしたいというニーズになります。海外のニーズにも、いろいろな案件がありますね。

——これからグローバルを見据えるなか、足元の日本における最新の動向はいかがですか?

端羽氏 : 日本のマーケットは、事業法人さん向けのサービスが育ってきたなと思っています。具体的には、インタビューを代行するサービスや、インタビュー前のリサーチまで代行して、よりインタビューを身近に使っていただけるような商材を増やすことができました。

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 まだまだ日本のマーケットはすごく小さく伸びしろがあるのですが、一方で、もしも私たちが日本のことだけに注力していたら、日本の企業の成長が遅れてしまう。だから、私たちは使命として、日本のマーケットの拡大とグローバルへの展開、両方一緒に追いかけていかないといけないと思っているんです。幸い、日本のチームも170名になり、同時進行できる環境も整っています。

「ポジティブなシナジー」を創出したい

——続いて、ケビンさんにお伺いします。ビザスクはColemanより規模が小さいにも関わらず、なぜ傘下に入ったのでしょうか。

ケビン氏 : まず、端羽さんと初めてお会いしたとき、私たちが共通のビジョンを持っていると気づきました。それは、両社がともにグローバルなエキスパートを抱えており、日米でそれぞれ優位なポジションを確立しているので、両社が力を合わせてデータベースをさらに強化していくことで、ポジティブなシナジーを創出することができるというビジョンです。

——ちなみに初対面はいつ頃で、どんなことを話したのでしょう。

ケビン氏 : 初めてビザスクとコンタクトを取ったのは2年以上前です。瓜生さん(ビザスク取締役COOの瓜生英敏氏)とColemanの社外取締役が対面で会ったことがあります。

 端羽さんとの初対面はオンラインで2021年でした。その時、端羽さんから「一緒に仕事をしていくことに、どうして関心があるのか」というプレゼンテーションをしていただきました。その話を聞いて、「お互いにメリットになる」と、とてもエキサイティングに感じたことをよく覚えています。実際に今年フェイストゥフェイスで対面できたのは、瓜生さんとは8月のM&A発表後、端羽さんは11月のクロージング後になります。

端羽氏 : そうですね。オンラインでの初対面で、一生懸命プレゼンした記憶があります。

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ケビン氏 : 日本は世界3位の経済大国なので、日米で組むことはとてもプラスになりますし、実際、Colemanのクライアントには、日本のエキスパートとも話したいという方々がいらっしゃいました。2021年3月頃から本格的な協議に入り、それからずっと一緒に働いていますが、運営などはとてもうまくいっていると思います。

——お二人にお伺いしますが、お互いに話してみた印象はいかがでしたか。

端羽氏 : 私はケビンのことを、業界のことをすごくよく知っている先輩で、かつロジカルな経営をされているという点で、尊敬できると強く思いました。そして同時に、事業運営で大事にしていることが、すごく似ていると思ったのです。

 いい意味で、コストセンシティブ。そして、合理的な判断をするけど、人を大事にしよう、技術に投資しようという価値観も似ています。両社の統合をアナウンスするメッセージを策定するときも、お互いに人が重要だと考えているからこそ、時間をかけて、一言一句に気を遣いながら、一緒に考えることができましたね。

ケビン氏 : 同感です。付け加えると、コミュニケーションを大事にするところも、共通しています。私も彼女も、起業家精神あふれる人間ですが、クイックに意思決定していく中でも、ともに協調しコラボレーションしていくことを重要視しています。そして、グローバルにビジネスを展開していく上では、このような姿勢は非常に重要です。

日米の「トップコラボ」が新たなビジネスを生む

——日米におけるスポットコンサル市場の違いについて教えていただけますか。

端羽氏 : 日本と米国の最大の違いは、日本では事業会社のユーザーが多いのに対して、米国では機関投資家のマーケットが大きいという点です。そして、これは買収を決めた理由でもありますが、米国のマーケットにおいて、Colemanはしっかりと差別化して競合優位性を築いています。

 ですので、サービスの使われ方は、社外の知見を1時間のインタビューで得る、と似ていますが、案件の内容は異なります。日本ではユーザーインタビュー、米国では業界のトレンドリサーチが多いです。また、米国の方が競合は多いだろうと思っているのですが、これはケビンの意見も聞いてみたいですね。

ケビン氏 : そうですね。私たちがこのビジネスを始めたのは2003年頃で、最初からクライアントは機関投資家でした。同じビジネスを手がける企業も年々増加しているので、端羽さんご推察通り、米国の方が競争は激しいと言えるでしょう。ただ、私たちは18年の経験を強みの1つにして、米国で優位なポジションにあります。

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 機関投資家の方々は、さまざまなリサーチを彼ら自身で行いますが、専門家から実際に話を聞くことも非常に重要になってきており、それを活用して投資の意思決定、判断をしています。私たちは18年の経験のなかで、彼らが何を知りたいのか、彼らの興味関心について圧倒的によく理解できていて、それが競合差別化につながっているのです。

 また、サービスを提供するためのシステム構築において、テクノロジーの活用に注力してきた点も、差別化ポイントになっています。私たちは、このプラットフォームをさらに強化し、アジアなどの地域にもサービスを拡大していきたいと考えています。

——ケビンさんは、米国にも多くの同業他社がいるなかで、なぜあえて日本のビザスクを選んだのですか。

ケビン氏 : それは、さらなる差別化を図るためです。ビザスクは、日本でNo.1のエキスパートネットワークサービスなので、Colemanの既存クライアントがより多くのエキスパートにアクセスできるようになりますし、私たちColemanにとっても新規クライアントを獲得するチャンスになると考えました。

——買収後、両社のビジネス連携は、具体的にどのように進んでいますか。

端羽氏 : まずは双方のデータベースを、一緒に使い始めています。そして、最初の1カ月ですでに、お互いに紹介した案件がマッチングしたりもしています。

ケビン氏 : Colemanの中で日本に関わるプロジェクトが思ったよりも多かったのは、前向きな驚きでしたね。日本企業からのサーベイのリクエストに対しても、見積りやオプションを提示するなど、ビザスクとのコラボレーションによってチャンスが広がっていることを感じています。また、シンガポールのチームからも、Colemanのデータベースが使えるようになってよかったと喜ばれています。

端羽氏 : 一方で、進め方においては、当然、米国のマーケットを知っているのは現地なわけなので、お互いに合意した職務権限表にもとづいて、お互いのマーケットについては任せたよ、という方針です。あと、すごく大事なのは、ケビンがビザスクの取締役でもあるので、日本で起きていることもちゃんと知っておいてもらえることで、うまくコラボレーションできていることです。

ケビン氏 : そうですね。両社のビジネス連携をうまく進めるため、日常的なコミュニケーションも非常に大事にしてきました。ZoomやTeamsなどのオンラインのツールを使って、常にお互いの取り組みを情報共有するようにして、何らかの意思決定するときには、文化的な違いを尊重した形で行っています。

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