世界中の天文学者が今、ある特別な望遠鏡の話が出るたびに緊張の汗を流し、歯を食いしばりながら祈りを捧げている。この他に類を見ない望遠鏡とは、米国時間12月25日に打ち上げられる予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)のことだ。
宇宙の片隅に存在する私たちは、計り知れないほどの規模で広がる星や銀河、ブラックホールの地図を作り上げてきた。だが、宇宙には私たちがまだ目にしたことのない領域が無限に広がっている。そこでおよそ20年前、航空宇宙工学のエンジニアたちが人間の限界を乗り越えようと、きわめて複雑な機器であるJWSTの建造に乗り出した。
「ある人がこう話すのを聞いたことがある。多くの若者がこの計画に取り組んでいるのはいいことだ。なぜなら、彼らはこれ(JWSTの建造)がどれほど大きな困難を伴うものかわかっていないからだとね」と、航空宇宙大手のLockheed Martinで宇宙科学および機器担当ディレクターを務めるAlison Nordt氏は言う。同氏は、JWSTのチームに当初から参加している人物だ。
米航空宇宙局(NASA)が、20年の歳月と100億ドル(約1兆1400万円)を超える費用を費やし、相次ぐ遅れを乗り越え、職人技級のきわめて高度な技術を余すところなく投入して作り上げた、これまでで最も大きく高性能の望遠鏡が、ついに打ち上げの日を迎えようとしている。
今はすべての関係者が、興奮と不安を抱えながらその時を待っている状況だ。
「夜中に何度目を覚ましては、ボルトをとんでもなく狭い穴に入れられるように真っ直ぐで耐久性があるものにしながら、製造可能にする方法を考えただろうか」と、Nordt氏は振り返る。しかもこのボルトは、JWSTが宇宙で経験することになる氷点下の温度でも絶対に割れることがない。JWSTはきわめて精密に作られているのだ。
この最先端の望遠鏡がどれほど精密で細かい作業によって作り上げられたのかを考えれば、一種の芸術作品と言える。「私たちは、単結晶の光学部品を極低温にも耐えられる形で接合する方法を見つけ出したが、誰もそんなことができるとは思っていなかった。こうした例は望遠鏡のいたる所で見られる」と、Nordt氏は語った。
まもなく、精巧なエンジニアリングの結晶と言えるJWSTが宇宙に打ち上げられる。待ちわびたカウントダウンの後、私たちは天文学の未来が始まる日を目にすることになる。
【12月22日午後3時8分更新】当初打ち上げ日を24日としていましたが、その後に延期が発表されたのにともない25日に変更しました。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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