全国の主要量販店などの販売データを集計しているBCNは、コロナ禍でのデジタル家電やPCの市場動向について分析。この2年間で、最も販売台数が伸びたのはPCカメラで、2019年比で4.7倍となり、有機ELテレビも1.9倍に拡大したことがわかった。その一方で、最も市場が縮小したのが携帯オーディオであり、0.48倍と半減しており、デジカメやデジタルビデオカメラ、カメラケース・バッグなどもほぼ半減となった。
BCN総研 チーフエグゼクティブアナリストの道越一郎氏は、「外出をしなくなり、自粛生活が長期化したり、イベント開催が中止になったりといった要因が、それぞれのカテゴリーの動向に影響している。コロナ禍で最も伸びたのがPCカメラ、最も縮小したカテゴリーの1つがデジタルカメラ。どちらもカメラであったが、ネットワークに接続して使うカメラと、スタンドアロンで利用するカメラで明暗が分かれたのは、今の時代を象徴するものだといえる」とコメント。さらに、「コロナ禍特需は、ほぼ終わったと見ている。勢いは急速に鈍化している。また、コロナ禍では、需要の先食いも発生しており、この年末商戦は厳しい状況になっている。部材不足も懸念要因の1つになっている」と総括した。
今回の調査では、変則的ではあるが、2018年11月~2019年10月を2019年としてコロナ前の基準とする一方、2019年11月~2020年10月を2020年とし「コロナ1年目」と定義。2020年11月~2021年10月を2021年とし「コロナ2年目」と位置づけた。調査対象は69カテゴリーに及んでいる。
「コロナ1年目、2年目も、販売数が前年実績を上回ったのは、有機ELテレビ、スタイラスペン、LEDスタンドライト、LED電球・蛍光灯の4カテゴリーだけ。有機ELテレビはプレミアム需要の受け皿として堅調に推移している」と分析した。
また、2020年が伸び、2021年も伸張しているものの、伸び率が前年よりも鈍化しているカテゴリーは14にのぼった。ここには2年間で最も成長したPCカメラも含まれる。PCカメラは、1年目に3倍以上に一気に増加したものの、2年目には36%増に留まったという。そのほか、ゲームコントローラやキーボード、液晶ディスプレイなどがこの領域に入っている。
1年目には拡大したものの、2年目には前年割れとなったものが14カテゴリー。映像関連、グラフィックボード、10キーボードのほか、タブレットやノートPCも含まれる。
一方で、2年連続して前年比減少となったのは、モバイル機器ケーブル、三脚・一脚、インクジェットプリンタ、HDDケース、DVDプレーヤー、デスクトップPC、携帯オーディオの7カテゴリーだ。「最も落ち幅が大きい携帯オーディオは、コロナ禍の影響というよりも、用途がスマホに取って代わられていること、ストリーミングで聴くという動きが広がっていることの方が大きい。携帯オーディオそのものが、役目を終えたカテゴリーだといえる」とした。
2021年11月の最新データをもとに、主要カテゴリーの動向についても説明した。
薄型テレビでは、有機ELテレビの比率が拡大したことで平均単価は9万400円と上昇しているが、販売台数は7.2%減、販売金額は8.8%減といずれもマイナスとなった。「メーカーシェアでは、シャープとTVS REGZAが首位を争う一方で、東京オリンピック終了後、オリンピックスポンサー契約をしているパナソニックのシェアが落ちた。2021年11月は、シャープとTVS REGZA、ソニーに続き、4位は奪還したものの、5位のハイセンスとは僅差である」という。
デジカメでは、販売金額は前年同月比8.6%減とマイナス成長ではあるものの、単価上昇に伴い、5カ月ぶりに一桁割れのところまで回復した。だが、販売台数は回復基調にあるものの、19.4%減と依然として大きな落ち込みとなっている。
「レンズ交換型カメラでは、ソニーの『ZV-E10』が、価格が安いということもあり売れたが、品不足の影響が出て、追加受注を止めていることが影響。ソニーは一時トップシェアを取ったものの、キヤノンに逆転された。その一方で、ニコンの『Z9』が発売前の予約が入り、単価の急上昇に貢献している。待っている人が多く、初速が期待できる製品である。ミラーレス一眼デジカメの交換レンズが好調であり、11月は台数で22.4%増、金額で35.7%増となっている。カメラ本体の回復に先駆けており、今後も回復していくだろう」とした。
PCは、8カ月連続で台数、金額ともに、前年同月比2桁減の状況が続いている。11月の販売台数は前年同月比21.1%減、販売金額では12.4%減となっている。
「2019年9月の消費増税特需、2019年12月のWindows 7のEOS特需、2020年3月以降のテレワーク特需があったが、2021年4月以降、厳しい状況が続いている」(BCN アナリストの森英二氏)とする。
だが、平均単価は着実に上昇しており、「デスクトップPCではエントリーモデルのCPUが上昇したり、HDDからSSDへの置き換えが見られていること。ノートPCへの高性能CPUの搭載、SSDの大容量化がみられ、これが平均単価の上昇につながっている。タブレットでもSSDの大容量化が単価上昇に影響している」という。
メーカーシェアでは、デスクトップPC、ノートPCともに、NECパーソナルコンピュータと富士通クライアントコンピューティングが首位争いをしており、低価格路線のASUSが、11月から盛り返しはじめているという。
PCパーツでは、グラフィックボードが11月の実績で95.0%増と大きく伸張。ビットコインのマイニング需要にも支えられたという。だが、2020年10月以降、品不足の影響もあり、価格高騰が始まり、平均単価は一時2.5倍にまで上昇したという。
メモリは、大容量化の進展とともに、GBあたりの単価が減少。11月は468.5円になっているという。内蔵SSDもGB単価がこの3年で4割近く下落。これを背景にして大容量化が進んでいるという。
また、スマホは、2020年4月を境に、販売台数が回復傾向に転じ、2021年に入ってからは前年実績を上回る月が増加。11月も販売指数では好調だった。メーカーシェアでは、iPhoneを擁するアップルが64.3%と圧倒的なシェアを獲得。SIMフリー端末の販売台数も36.3%を占めた。
今回、新たにホームルーターの動向についても説明。市場規模がこの1年で1.5倍に増加していることを示しながら、「9月にNTTドコモが5Gホームルーターを投入したことで一気に伸びた。本体が品切れ状況になるほどの高い販売実績になっている」とした。
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