お手頃価格でおしゃれなドレスを--結婚式ゲスト向けのレンタル事業を展開するアンドユー松田氏 - (page 3)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2022年01月04日 09時00分

前例のない20代若手の社内起業で直面した課題

——話題を社内起業に戻すと、会社を設立して新規事業を立ち上げていくところで、苦労したことはありますか。

 苦労ばかりです(笑)。まず審査時のプレゼンで、相手の役員全員が男性だったのが難しいところでした。結婚式に参列する女性ならではの悩みやパーティードレスの現状などは、なかなか男性には理解しにくいものですので、どのようなプレゼンをすべきか悩みました。

 男性にも理解してもらいやすいプレゼン内容にするため、かわいい衣装がどうとか、トレンドがどうとかといった感覚に近いことではなく、数字的にどうなのか、世間的にどれくらい認知されているのかなど、客観的な根拠を並べるようにしましたね。

役員向けプレゼンの様子
役員向けプレゼンの様子

 おそらくはそういったところを評価していただけて受賞できたと思うんですが、正直なところ、私自身、以前から起業家になりたいと思っていたわけではなかったので、その後は本当に手探り状態で進めていくことになりました。大賞が出たのが初めてでしたし、ノバレーゼの子会社はいくつかあるものの、私のように新卒5年目のまだまだ若手が1子会社の代表になるような前例もありませんでしたから。

 もちろん立ち上げ準備も私1人です。受賞の連絡をいただいたのが2018年10月で、いきなり「来年頭から社長業、頑張れよ」と言われたので、準備期間はたったの3カ月。その間に広報の業務を全て引き継いで、会社の立ち上げに向けて登記などの下準備もやらなければいけませんでした。過去に私みたいな前例があれば、誰かにいろいろ教えていただけたのかなとも思うんですが。

——広報を担当している方が全く別の業務内容で起業するというのは、他でもあまり聞かないですよね。

 だから本当に戸惑いしかありませんでしたね(笑)。最初はわりと甘い考えでいました。子会社として立ち上げるのではなく、ノバレーゼの1事業部として立ち上げさせてもらえるんじゃないか、みたいに。そうじゃなくて「子会社だよ」と言われたときは、震えが止まりませんでした。

 自分の心を落ち着かせるのがまず大変でしたし、何をやるにしても右往左往するばかりでしたので、そこからたくさん勉強して……もちろんまだまだ勉強している最中ではありますが、いろいろな知識を得なければいけませんでした。

——ノバレーゼという会社の風土として、社員の自主性を重んじているところもあるのでしょうか。

 何かを任せると最初に言ったら、あとはもう完全に任せる、という風土が根付いていますね。任せてもらえる環境であるのは本当にありがたいんですが、私としては最初はやっぱり戸惑いが大きかった。立ち上げ前は担当役員がついてくれていたんですが、ローンチの時期はこれぐらいでどうでしょう、という相談をしても、「自分がいいと思う時期でいいんじゃない」と言われたり(笑)。

 いただいた資本金をいかにやりくりするか、どういうサービスをどういう方向性で展開して、どういうブランディングをしていくか、というところも全て任されていて、すごく自由な、ありがたい環境で運営させていただいてます。

理想も最悪もない--「その間の結果になればいい」と考えて

——ノバレーゼから起業したからこそ良かったと感じることや、ノバレーゼのグループであることの強みみたいなものはありますか。

 実のところ、起業した今もノバレーゼグループから離れたいとは私自身1ミリも思っていないんですよね。というのも、グループとして結婚式というものの価値を高めていくことが最終目的で、私自身がグループの一員として同じ目標に向かって歩んでいけることがすごくうれしいと感じるからです。

 まだまだアンドユーは小さいので、こんなことを言うのはおこがましいのですが、お互いがお互いを補いながら新郎新婦様に向けたサービスと、参列者の方に向けたサービスの両方で、双方にとってプラスになるような環境を一緒に作っていけるのが、グループでやっていて良かったなと思えるところです。

——今取り組んでいる社外活動や、日常で何か心がけているようなことはありますか。

 最近は本当に仕事しかしていません(笑)。ただ、この立場になって大事だなと感じるのは、自身のメンタルをいかに自分自身で安定させられるかですね。丸一日お休みを取れる日は少ないんですが、リフレッシュタイムはきちんと設けるようにしています。夫とのプライベートの時間を大切にするのはもちろんのこと、趣味のゴルフにもよく行っていますね。

 ノバレーゼで1社員として仕事していたときは、チームで動いていたので自分が苦しいときは助けを求めることができましたし、誰かに甘えられる環境だったと思います。でもいったん起業して代表という立場になると、私の場合は本当に1人なので、何かあっても自分でどうにかする以外ありません。変に弱音も吐けませんし、頑張らなきゃという思いが一層強くなる気がします。

 周囲から期待をかけられているような感じが余計にそうさせるのかもしれませんが、とにかく頑張らなきゃという思いが強いので、私生活ではその分リフレッシュしなければいけないなと思いますね。

——一番やりがいを感じる瞬間と、反対に一番つらいと思う瞬間があれば教えてください。

 やりがいを感じる瞬間は、やっぱりドレスの返却時にお客様からのメッセージが入っているときですね。本当にこのサービスをやっていて良かったなと思いますし、ありがたい瞬間でもあります。

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 いろんな業務がある中でも一番好きなのがその開封作業で、多いと1日100個くらいの返却があってすごく大変ではあるんですけど、楽しい。メッセージが入っていなくても、役割を終えたドレスが返ってくるのを見ると感慨深いというか、「お疲れさま」と言いたくなります。私がこのサービスを立ち上げたことで、いままで結婚式でちょっと苦労していたお客様も、少しは楽になったかな、なんて想像を働かせたりもしますね。

 つらいのは、私1人で全てを完結することになるので、私にない知識をもとにアウトプットすることはできない、ということですね。メンバーが何人かいれば、話し合いのなかからいろいろな案が出てきたり、思いもしなかった方向性のアイデアが出てきたり、さまざまな発見があると思うんですが、1人だとそういうことができない。そこにきつさを感じることはあるかもしれません。

——松田さんが考える、イントレプレナーに必要なこととは何でしょうか。

 ちょっと幼稚な表現かもしれませんが、「現状に甘んじない」ことかなと思います。私自身、ノバレーゼでやっていた広報という仕事が好きでしたし、新しいことに踏み込もうとしなければずっとその広報という場所で、楽しんで仕事をしていたと思います。そういう楽しい現状を変えたくない方も多いと思うんですよね。

 でも、何か新しいことを創造する、社内で事業を立ち上げる、といったときに一番大事なのは、現状に甘んじない気持ちではないかなと。私にもそういう気持ちがなかったらこのサービスは生まれていなかったと思います。改善したいなと日々の仕事のなかで思っているところがあっても、実際に動き出す方は少ないとは思うのですが、チャレンジする気持ちを少しでも持っていて、そういう環境がもしあるのなら、やらない手はありませんよね。

 私がよく使っているメンタルテクニックが、最も理想的な状況と最悪の結果を想像して、でも理想的な状況になることはないにしても、最悪の結果になることもまずない、その間くらいになればいいや、と思うようにしている、というのがあります。そんな心づもりで一歩踏み出してみればいいのかな、なんて思いますね。

——ありがとうございました。それでは最後に、松田さんが尊敬する他社のイントレプレナーをご紹介いただけますでしょうか。

 広告代理店でのご経験ののち“出向起業”としてフェムテックサービスを立ち上げられたTRULYの二宮未摩子さんをおつなぎします。女性ならではの悩みに寄り添うサービスを展開しておられ、当社の課題解決とも通ずる部分が多く同時期の創業ということもあり注目させていただいているサービスです。二宮さんはご経歴の幅も広く女性起業家としても尊敬しているひとりです。

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