NFTは分極化しつつある。NFTを裏付ける技術(デジタルグッズの所有権を証明するトークン)を信じる人々がいる一方、多くの人々はNFTはでっちあげだと見ている。後者はNFTにいかなる価値も認めがたいとしている一方、前者は関連技術の不完全さについてしばしば守勢に立たされている。
そして間違いなく、NFTには多くの問題がある。
まず、一般人は手を出しにくい。 ソフトウェア開発者が仮想通貨とNFT取り引きで成功する傾向があるのには理由がある。ブロックチェーンウォレットなど、取り引きに必要なデジタルツールのセットアップは一般人には難しいのだ。売買するだけでも危険なことがある。うっかり間違ったウォレットアドレスに送金したら、そのデジタル資産は永遠に失われる。
手数料の問題もある。例えば、NFTの取り引きに興味を持ち、1000ドル(約11万3000円)までなら無駄にしてもいいと思っているとしよう。販売する新しいNFTを作成するには、通常120ドルから400ドル(約1万3000~4万5000円)必要だ。それほど悪くない。ただし、ここにはまだ取引手数料が含まれていない。ほとんどのNFTは、非効率性で悪名高いイーサリアムブロックチェーン上に構築される。アルトコインのトレーディングやNFTの購入でイーサリアムを使う人が増えると、それにつれて手数料が上がる。運が良ければ1回のトランザクション当たり約100ドル(約1万1300円)で済むが、たいていはその2倍か3倍掛かる。突然1000ドルにまで急騰することもある。
これはNFTにとって特に厄介な問題だ。NFTは「ガス戦争」(イーサリアムの手数料は「ガス代」と呼ばれており、ガス戦争はその急騰を指す)を引き起こすことで悪名高い。Shiba Inuコインであれば1兆枚流通しているので、10万人が一度に購入することも可能だ。だが、1つのNFTを1万人が購入しようとすれば、購入を急ぐ一部のユーザーが互いに高値をつけるので、手数料が大幅に上昇する。手数料が高いのは、ほんの1、2分のことだが、その間に多くのダメージが発生する可能性がある。手数料が1万ドル以上になることも珍しくない。トランザクションに失敗して1000ドル失うこともよくある。
イーサリアムの非効率性は、大量のエネルギーを消費しているというNFTへのもう1つの強力な批判も勢いづかせている。これはセマンティックな問題であることに注意してほしい。NFTはイーサリアムほどには環境に悪くはない。「Solana」のような他のブロックチェーンネットワークの消費エネルギーは少ない。イーサリアムの開発者は、マイニングの消費エネルギーを現在の1%にまで削減するアップデートを2022年に実施しようとしている。イーサリアムの現在の消費エネルギー量を正確に言うことはできないが、大量であることは分かっている(ビットコインは、もてはやされてはいるものの、イーサリアムよりもさらに効率が悪く、それが原因でブロックチェーン上でほとんど何も構築されていない)。
そして最後に、NFTを取り引きする人のほとんどが利益目的だという事実がある。いたるところに詐欺があり、価格は激しく変動する。NFTを作成し、売買する人々のほとんどは、そのテクノロジーを理解しておらず、関心もない。技術的な飛躍があっても、激しい価格変動に紛れてしまう可能性がある。
Gedevani氏は「これはバブルと呼べる。市場に参入する投機家の数がクリエイターの数を上回っているからだ」と語った。
だが、バブルがはじけた後、何か良いものが残る可能性はある。ペット用品オンライン販売のPets.comのケースを思い出してみよう。このサービスは2000年2月に企業価値2億9000万ドルと評価されたのをピークに、悪名高いドットコムバブル崩壊で同年11月に倒産した。この顛末はバブルの投機的取引への注意喚起事例として語り継がれている。だが、Pets.comへの投資という行為は正当化されることになった。Pets.com自体は誤った方向に進んだが、同社を含むeコマースのトレンド全体は正当なものだった。ピクセルアートに数百万ドルの値が付くことは一時的なことかもしれないが、NFTの本質であるデジタル所有権の証明という概念は今後も続いていくかもしれない。
NFTの行く末は誰にも分からない。分かると主張する人は、あなたに何かを売りつけようとしている人だと思っていい。分かっているのは、NFTを購入する人の数が確実に増えていくということだけだ。
NFTの最大のマーケットプレイスOpenSeaでは、毎月およそ25万人がNFTを売買しているとみられている。間もなくCoinBaseも独自のNFTマーケットプレイスを立ち上げる予定で、既に200万人がウェイティングリストに登録済みだ。Robinhoodも同様の計画だ。
さらに重要なのは、仮想通貨以外で既に収益を上げている大手企業が参入しようとしていることだ。「Pokemon Go」のNianticはプレイヤーがビットコインを稼げるゲームを発表したばかりだ。TwitterとMeta(旧Facebook)は自社のプラットフォームにNFTを統合する計画で、Epic Gamesも同様の計画があるとしている。ゲーム「フォートナイト」でスキンを購入する代わりに、スキンのNFTを購入する世界を想像してほしい。その世界では、スキンのNFTを他のゲームの衣装や武器と交換したり、販売したりできるのだ(Epicはそのような機能を「フォートナイト」に統合しないとしているが、競合がそうすることを阻止はできないだろう)。
Richerdさんは、NFT市場にもうすぐ多数の人々が参入することで、オーディエンスも多様になり、デジタル製品の多様性が広がると考えている。一般の人はプロフィール画像に(20万ドルよりずっと安い)200ドル(約2万2000円)支払いたいとは思わないだろうが、「フォートナイト」のスキンやMetaのメタバースのアイテムが10ドル(約1100円)なら喜んで買うだろう。世界は変化するだろうが、Richerdさんは保有するCryptoPunk #6046はまだしばらく安泰だと確信している。
「すべてのNFTが崩壊するとしても、CryptoPunkは最後まで残るだろう」と同氏は語った。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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