KDDIら3事業者、全国13地域・52機の「ドローン同時飛行管制」成功--三重県志摩市のデモもお披露目

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と、KDDI、パーソルプロセス&テクノロジーは、11月24日に記者説明会を開催。10月27日に全国13地域で、総接続機体数52機のドローンを同時飛行させ、飛行管制を行う実証を実施したと報告した。

当日は3事業者に加えて、経済産業省 製造産業局産業機械課次世代空モビリティ政策室 川上悟史氏も登壇した
当日は3事業者に加えて、経済産業省 製造産業局産業機械課次世代空モビリティ政策室 川上悟史氏も登壇した

 NEDOは、2021年6月の航空法改正を受けて2022年12月までの施行を目指して議論が加速している新制度設計と、管制を行う運航管理システムを連携させるための各省庁などとの調整を行なった。KDDIは、プロジェクトの全体推進および運行管理機能の研究開発などを担い、パーソルプロセス&テクノロジーは、各地域での実証の推進などを担当した。

 
 
 
 

 実証では、東京都港区虎ノ門にあるKDDIオフィス内にドローン運航管理室を設置して、全国13地域で飛行するドローン同士やヘリコプターとの衝突を回避する管理業務を行なったという。そして記者説明会では、本運航管理システムを実際に使って、三重県志摩市での実証現場の機体と接続した飛行管制のデモンストレーションをお披露目した。

ドローンも「コネクテッド」が鍵

 いま日本では、法制度などを国土交通省、技術開発を経済産業省がリードしながら、「空の産業革命に向けたロードマップ」に沿って、ドローン活用に向けた環境整備が進められている。今回お披露目された運航管理システムは、UTMSという項目で開発の達成目標時期が明示されている。

 
 

 技術開発におけるポイントは5つ。運航管理システム、衝突回避技術、機体を遠隔から識別できるリモートIDといわれる技術、機体の性能を評価する基準の開発、そしてこれらをガラパゴス化しないための国際標準化だ。これまで5年計画ということで進められており、今回報告された実証はその集大成の1つだという。

 
 

 このようななかKDDIは、さまざまな目的を持った多数のドローンが同時に、レベル4といわれる有人地帯で目視外の自動・自律飛行ができるようになって初めて、多くの領域の社会課題を解決できるという点に着眼。現状では、ドローンは省人化ツールとして期待されながらも、運用する人を手配するため省人化につながっていないという課題がある。また、有人地帯での自動飛行を許可しなければ、物流や警備などの新規事業は拡大が見込めないため、レベル4実現は不可欠である。

 こうした現状を打破するためには、ドローンをネットワークに接続する「コネクテッド」が鍵となり、ドローン同士あるいは有人機との接近検知を行い、運航管理システムで可視化することが必須だという。

 
 

多様な機体の接続と衝突回避を実現

 本運行管理システムを活用した実証がユニークなのは、全国13カ所で飛行するドローンの運航状況を一元管理した点や、総接続機体数52機という数だけではない。複数の民間事業者が独自に開発する運航管理システムとの連携や、平野部、山間部、離島部というさまざまなエリア・目的で飛行する多様な機体を接続したというバリエーションの豊富さも注目だという。

 
 

 「レベル4」ということが話題になりがちだが、地域や用途によっては、レベル2や3に該当する飛行を行うケースについても、当然ながら継続運用が想定される。全国規模ですべてのドローンの運航状況を一元管理する必要があるかどうかは別の議論としても、市や県、あるいは県境の複数の自治体といったレベルでは、多様な飛行形態のさまざまなメーカー・形状の機体を一元管理する必要が出てくるという。本実証は、そうした近い将来を見据えて行われたようだ。LTE通信の使用、ドローンだけではなくヘリコプターとも運航管理システムを接続、衝突リスク時のアラート機能を実現したという。

 記者説明会では、実証当日に使用した運航管理システムのデモンストレーションが実施された。三重県志摩市で実証実験中のドローン2機(DJI製とプロドローン製)と、ヘリコプターとの衝突回避オペレーションの様子が披露された。

 
 

 左側の画面が、運航管理者が見るための運航管理システム。右側の画面が、ドローンを現地で飛行させる操縦者向けのアプリケーションだ。運航管理システム活用は、大きくは2つある。飛行経路を登録するさい、他の機体とのコンフリクションがあれば事前にアラートが上がるという機能と、事前に登録した飛行経路に沿って自動航行中にほかの機体が近接したときに、衝突回避リスクのアラートが上がるという機能だ。

 デモでは、ヘリコプターが近接したときに、都内にいる運航管理者が志摩市のパイロットにオンライン通話で警告し、パイロットが機体を一時停止させ、安全確認が取れた段階で飛行を再開する様子が披露された。操縦者向けのアプリケーション側にも、同時にアラート上がる仕組みが構築されており、画面には近接してきた機体の緯度経度と高度などの情報が表示された。ちなみに、ヘリコプター側にアラートは上がらない仕組みだという。


 相手機体の位置情報が表示されるだけだと、操縦者が自分の機体と近接機体のそれぞれの位置情報を確認して、回避策を自分で考えて操作する必要があるため煩雑に感じられるが、現場からの推奨回避ルートの表示を求めるニーズなどを吸い上げて、作り込みを進める予定だ。

 今後は、運航管理システムのさらなる機能開発や、他事業者の参入も視野に入れたサービス性向上にも力を入れていく方針だという。1人あたり何機までの同時運航管理を許可するかなど、新制度との接続も重要になる。また、地域実証の事務局運営を担ったパーソルプロセス&テクノロジーは、2022年1月度に「ビジネスモデル確立に向けたガイドライン」を作成、展開する予定とのことで、レベル4の実現に向けていよいよビジネスサイドの動きが加速してきそうだ。

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