第1回に引き続き、Meta(旧Facebook)のメタバースグループ担当バイスプレジデント、Vishal Shah氏へのインタビュー内容を整理した上でお届けする。
——なぜ、これほど早い段階から議論を始めようとしているのですか。これは私の実感でもありますが、すでに複数の製品が存在する中で、さまざまな(未来の)コンセプトが語られています。
理由は2つあると思います。(今回のFacebook Connectで用いられた)発表の形態は、対面式のConnectでは間違いなく、実現できなかったものです。想像力を働かせ、どんな未来があり得るかを思い描くことは、仮想環境でなければ不可能です。オンライン開催を逆手にとって、未来のイメージを描き出そうと考えたのです。基調講演の内容は、通常のConnectの参加者――つまり、開発者やクリエイター、そしてこの分野の専門家に照準を合わせたものもありましたが、用いられたユースケースやエピソードの多くはごく普通の人々にも分かるものでした。
教育の未来しかり、フィットネスの未来しかり。私の子供たちは、ニューヨークに住むいとことバスケットボールをするというアイデアが気に入ったようです。こういうエピソードは心をうちますね。とても人間的です。これが、コンセプト的な話が多くなった1つの理由です。もう1つの理由は、規範や標準について、またセキュリティやプライバシー、インテグリティの観点から何が許容されるのかについて、自由な議論ができるようにすること、こうした議論をサービスが巨大化する前にしておくことが重要だからです。
この10年、15年間で当社が学んだことを1つ挙げるなら、それはこうした会話は早い段階で行った方がサービスの開発側にとっても良いし、新しいサービスをどう捉えるべきかが分かるという意味では、社会にとっても良いということです。
——Facebookが提供するアプリの多くは、すでに巨大なサービスとなっています。こうしたサービスを、要素の再定義やコントロールの面で、これから始まろうとしているサービスとどう連携させていくのですか。
それは、こうした体験のどの部分をプラットフォーム間で共有するか、次世代にはどちらがネイティブになるのかを、私たちがどう考えるかにかかっています。
先ほども話に出たように、すべてのものがどちらの世界でも完全に同じように動くというわけにはいかないでしょう。一方で、私たちが語っている新しい体験の多くは同期的な性質を持っています。当社の既存のアプリも同期的な体験を提供してはいますが、基本的にはブロードキャスト形式のものが多く、非同期の性質が強くなっています。
今、私たちがリアルタイムで交わしている会話(Zoomチャット)も、基本的にはフレーム内で起きていることです。あなたも(Horizonの)ワークルームを利用したことがあると思いますが、あれは根本的に異なる体験ですね。こうした同期型のリアルタイムの共在体験については、新たなパラダイムを定義する必要があります。
——(基調講演では)ソーシャルメディアで学んだ教訓をメタバースに活かしたいという発言が何度かありました。この点について、もう少し具体的に教えていただけますか。
まず、方法に関しては、かなりはっきりしていると思います。つまり、当社だけではできない、ということです。企業間の協力だけでなく、規制当局や政治家も交えて、オープンな話し合いを重ねる必要があるでしょう。2週間ほど前に開催されたAtlantic Festivalでは、当社の(国際問題担当バイスプレジデントの)Nick Cleggが、当社が外部の広範な関係者を巻き込みながら進めている研究をもとに、(責任あるイノベーションの)原則について語りました。重要なのは、誰がやっているかだけでなく、どのようにやっているか、いつ始めるかです。そして私たちは今、始めようとしています。この原則を確立するために、何年も前から、この分野の規制について話し合ってきました。まだ具体的な規制は登場していません。ですから、なるべく早く実質的な会話を始める必要があります。私の考えでは、こうした会話は論点を整理する役に立つからです。
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