文科省に聞く「GIGAスクール構想」提唱から2年の手応え--4年計画をわずか1年に前倒し - (page 3)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2021年11月18日 09時00分
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子どもたちの「資質能力」をいかに育てるか

——先ほどかなりのスピードでデジタル端末の導入を進めたというお話がありましたが、導入端末の種類はどのような内訳になっていますか。

 いろいろな会社の端末を使っていますが、主にはChrome OS、Windows、iPadOSの3種類で、おおよそ4:3:3という割合です。半導体不足などによる端末の在庫状況が影響していたところもあったかもしれませんが、自治体がそれぞれ選んだ結果、最終的にこういう割合になった、ということになります。

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——端末が故障したり、劣化したりした場合の交換やメンテナンスはどのように対応されているのでしょうか。

 端末自体は学校の備品になりますが、故障などがあったときは今のところは予備機を使って対応することが多いようです。リース契約の場合ではその契約のなかで交換・修理などの対応をする形になりますね。別途お金がかかる場合もあると思いますが、ほとんどは各々の自治体で対応されています。

——ネットワーク通信の快適さは地域によって変わってくると思います。そのあたりはいかがですか。

 ネットワークはたしかに重要です。GIGAスクール構想の予算で、1300億円以上を補助し、学校内のネットワーク環境整備を推進してきました。通信ネットワークの整備はすでに98%まできていて、大規模工事は終わっていますので、以前と比較すれば圧倒的にほとんどの学校で高速通信に対応できる状況になっています。ただ、小中高段階で1200万人以上の子どもがいるわけで、特に多くの子どもが在籍する学校ですと大企業のオフィスのようなものになりますので、同時に使って快適なネットワーク環境を準備するのがいかに困難かということはネットワークにお詳しい方ならよくお分かりだと思います。

 また、学校ですと、時間帯によっては一般企業よりもずっと多い通信が発生することもあります。朝の授業が始まる前のタイミングで一時的にダウンロードが集中することもあります。さらに、40人程度のクラスが1学年あたり5クラスあったりします。それだけ同時に使う人がいるわけですよね。当然ながらネットワークの負荷は高いですし、学校の通信ネットワークの工事をしても速くならないというケースも実際に出てきています。しかし、ボトルネックが何なのか特定するのが難しいのです。

 通信契約そのものを変えなければ実速度が上がらないパターンもあるでしょうが、学校内の設備の一部や機器の設定に問題がある場合もあります。たとえばネットワークの一部に古い機器を使っていてそこで詰まっているとか、無線LANのアクセスポイントの電波出力を本来100出る性能があるのに電波の干渉を防ぐために10に抑えているとか。

 ネットワークが遅くても、どこにボトルネックがあるか把握してない自治体も多い。そこまで手が回らないからなのですが、こうしたネットワークの問題は教育委員会を中心にまず取り組まなければなりません。これまでもGIGAスクールサポーターの文科省の予算でアセスメントも使用可能であり活用を促してきましたが、さらなる取り組みも考えています。

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——GIGAスクール構想が始まったからこそ実現した動きや成果など、言えるところはありそうでしょうか。

 こういったデジタル端末を使った教育は、教師の年齢が高いほどスムーズではないイメージがあると思いますが、必ずしもそうではないです。むしろ、ベテランの教師のほうが子どもの教育や学習にとって有効な場面で質の向上に資するように活用するといったことはよく見られます。

 地方の退職した元校長先生が、教育委員会に嘱託で入られて、平日は地域の各校ごとにオンライン研修したり、休日は他県まで出向いて研修したり、というようなことをされている例や、事務職員やPTAの方たちに、ICTやGIGAスクール構想にどう取り組んでいるかのインタビュー動画をYouTubeに掲載したりして、全体を盛り上げようと奮闘している例もありました。そういう取り組みはまだまだあるはずです。GIGAスクール構想を本当に成功させるためには、1人の10歩ではなく、10人の半歩が大事であり、そんな風に周りのみんなをどれだけ巻き込んでいけるかがすごく大事だと思います。

 それと、中山間地域や離島など、今までICT化が遅れていた地域でも、GIGAスクール構想によって一気に進むだろうとも思っています。教育分野だけでなく地域振興もそうですし、その他の分野にもどんどん波及していくような話になるのではないでしょうか。これからのDXの時代を考えても、そこに対して非常に大きな役割を果たしていくことになると考えています。

——教師の業務効率や子どもたちの成績に影響があった、というようなところまではまだ明らかになっていませんか。

 そうですね、まだ成績への影響は明らかにはなっていません。ただ、そのあたりは難しい問題で、学力というものを狭く捉えないように留意する必要があります。われわれは「資質・能力」と呼んでいますが、それを広くとって考える必要があるだろうと思っています。

 今の学習指導要領は資質・能力を3つの柱、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」です。今の学習指導要領はこの3本柱で整理しています。旧来型のある事実を知っているかという狭い意味での学力、「知識」だけにとどまらず、これからはそれら3つの柱をバランスよく育成することが大事になっていくと考えています。

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 自分で学習の仕方を調整できれば、オンラインでも自分で必要な教材を探して取り組んだり、自分が今何を理解していて何を理解していないか、というところもわかったりする。加えて、知識や技能を活用していくための思考力・判断力・表現力等も大事で、ここをいかにバランス良く育てていくかという観点で考える必要があります。

 各教科等の資質・能力ももちろん大事ですが、今回の学習指導要領においては、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力のように、教科等横断的な視点での資質・能力を非常に重要視しています。これらをGIGAスクール構想でいかに育てていくか。「計算問題の回答時間が何秒から何秒に短縮し、その正答率が向上しました。」等の話のみに絞って目標にしてしまうと、どうしてもそこに全体が引っ張られてしまい、元々狙っていたところと違ってくることになると思います。広い視点に立って資質・能力を育成できるよう、そのためにICTを活用していけるような目標を検討していきたいと思います。

 今回の学習指導要領は2030年の社会を見据えて作られたものです。社会の変化を前向きに受け止め、人間ならではの感性を働かせて人生や生活をより豊かにする、ということを重視しています。多様な人々と協働しながらさまざまな社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り開き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められている。そのために必要な資質・能力の育成をしていく。だからこそ、より広い視点に立って教育というものを考えていくことが大事だと思うのです。

——デジタル端末をどんどん使っている学校もあれば、そうではない学校もあるようです。そうしたギャップを埋めることはできるでしょうか。

 まさにそこがGIGA StuDX推進チームがターゲットにしているところです。たしかに今の時点では対応には差というか、ばらつきがあります。ただ、できているところが先に進んでいるだけであって、他ができなくなっているわけではありません。自走できるところはどんどんやっていただければいい。一生懸命押し上げていって、まだできていないところが追いつくことを大事にしています。

 同じ学校でもクラスによって活用度合いに差があったりしますが、結局のところ、校長先生が1つの鍵になることは間違いありません。校長先生が教師に対してエンカレッジしていくと全体的に使いやすくなっていくと思いますし、ある学校の例では、教員間でオンラインの掲示板などを使ってデジタル端末の活用に関するQ&Aや有効事例の共有などを進めているところもあります。

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 1人の職人芸の世界にするのではなく、みんなで共有して改善していくことが大事です。それでみなさんのレベルが上がっていけば、きっとICTでできることがもっと広がっていくと思います。私はデジタル庁の参事官の併任もかかっていますので、他の省庁の人たちと日々議論していますが、縦割りの感じはかなりなくなってきていると感じます。デジタル化は合理的に物事を考えるきっかけになります。

 私は文部科学省職員として教育現場のご苦労がわかる立場でなければならないし、それをサポートする立場であり続けなければならないとも考えていますが、できるだけスモールステップで成功事例を積み重ねていってみなさんに示して、教育現場と一緒に前に進めていきたい。その意味でGIGA StuDX推進チームの活動は、これからも大事にしていきたいと思っています。

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